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第99号(2024年3月号)
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特集:マーケターの「これから」を話そう

多くの企業は顧客心理が見えていない。その責任はマーケティング部門にある

 コロナ禍を経て社会環境が大きく変化する中、多くの経営者が顧客の動態を捉え切れないまま、有効ではない打ち手に投資をし続けてしまっている。このように問題提起するのは、『たった一人の分析から事業は成長する 実践顧客起点マーケティング』(翔泳社)の著者、西口一希氏だ。さらにその原因を「社内で最も深く顧客を理解しているべきマーケティング部門・マーケターが、顧客から目を離しているため」と指摘する。事業成長のために、今マーケターはどんな役割を果たすべきなのだろうか。

※本記事は、2021年12月25日刊行の定期誌『MarkeZine』72号に掲載したものです。

顧客心理がブラックボックス化している

M-Force 共同創業者 取締役/Strategy Partners 代表取締役
西口 一希(にしぐち・かずき)氏

 P&Gマーケティング本部にてブランドマネージャー、マーケティングディレクターを歴任。ロート製薬執行役員マーケティング本部長。ロクシタンジャポン代表取締役社長、社外取締役。スマートニュースに日本と米国のマーケティング担当執行役員として参画。2019年8月に、企業評価金額が10億ドル(約1,000億円)を超える国内3社目のユニコーン企業までの急成長に貢献。著書に『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社)、『アフターコロナのマーケティング戦略 最重要ポイント40』(ダイヤモンド社・共著)、『マンガでわかる新しいマーケティング 一人の顧客分析からアイデアをつくる方法』(池田書店)。

――定期誌『MarkeZine』72号では、特集テーマを「マーケターの『これから』を話そう」としました。コロナ禍にともなう社会変化、DXの機運の高まりは、マーケターの仕事にも大きな影響を及ぼしていると思います。マーケターは組織の中でどんな役割を果たしていけばよいのか、多くの仕事がある中で何に力を注いでいくべきなのか、改めて整理したいと考えました。

 マーケターやマーケティング部門は今、お客様を本当に見ていない。これが大きな課題だと思います。具体的には、(1)顧客の行動は見ているが顧客心理を見ていない、(2)マーケットを構成している顧客の動態を見失っている、(3)顧客と自社商品と利益の関係を見ていない。この状態でマーケティング施策をいろいろと実行しても、費用が積み上がり利益につながらない、ということが起こります。

――「お客様第一」「お客様を理解しよう」といった言葉はよく耳にしますし、活用できるデータやテクノロジーも増えています。それにも関わらず「お客様を見ていない」とは、どういうことなのでしょうか。

 M-Forceが考案した「顧客起点の経営改革」フレームワーク(図表1)を用いて説明します。

図表1 「顧客起点の経営改革」フレームワーク(一部加筆)(タップで画像拡大)
図表1 「顧客起点の経営改革」フレームワーク(一部加筆)(タップで画像拡大)

 これは企業が経営活動を行い、その結果が数字に表れるまでのフローを分解したものです。左端は経営対象を表していて、新規顧客獲得や既存顧客育成などのマーケティング投資もここに含まれます。顧客への働きかけの結果、顧客の心理が変化し、それが行動に表れ、結果として売上などの数字に反映されます。

 ここで多くのマーケターは、経営対象と、その結果顧客行動が変わったかどうか、売上が変わったかどうかしか見ていません。経営と顧客行動をつないでいる「顧客心理」がブラックボックス化しているのです。人間の行動は、何の理由もなく変わることはありません。突然お客様のサイトの滞在時間が長くなったり、突然会員登録をしてくれたりすることはありませんよね。そのように、顧客の行動が変わるのは、何らかの心理的な変化があったから、認知している何かが変わったからです。

 A/Bテストも、この顧客心理を無視して使われていることが少なくありません。AとBを比べて、Aのほうがよいという結果が出たら、そこで考えるのをやめてしまう。なぜAがよくてBが駄目だったのか、背景にある顧客心理への理解を深めることをせずに、「次はこういうことをやろう」という方向にどんどん自動化・効率化という名の思考停止をしてしまう。Aがよい理由がわかっていなければ、施策に再現性を持たせることもできません。当たるかどうかわからない施策をいろいろと実行すると、マーケティング費用は積み上がっていきます。そうではなく、マーケターは顧客行動と顧客心理の関係性を理解した上で、どういう顧客心理に対して、何を提案すれば顧客の行動を変えられるのかということを、考えなければいけないのです。

――デジタルマーケティングの発展で、顧客の「行動」は測定・可視化できる部分が増えてきました。でも、それだけを見て顧客をわかったつもりになってしまい、行動を左右している心理的な変化に目が向いていない、という問題があったのかもしれません。

 おっしゃるとおりですね。デジタル時代になってデータベースが拡充されると、顧客理解が簡単になるなどと言われたりするのですが、それはまったく間違っていて、わかった気になっている人が増えただけです。顧客の行動データがよくても悪くても、経営陣も、その理由を顧客心理の変化に求めることは多くありません。非効率な投資は縮小して、効率の上がる投資をしましょう、くらいです。すべてHOWの話です。顧客心理を探るためには、N1インタビューをしたり、顧客の購買場面を実際に観察したりして、顧客の視点に立つことが絶対に必要です。本社ビルで顧客の行動データを眺めていても、わかりません。仮説は作れるかもしれませんが、顧客に会って話を聞かなければ、仮説を作る力もどんどん衰えてくる。「顧客を理解しましょう」「顧客が大事」と言いながら、本当に、たとえば毎週お客様に会って話を聞いている人がどれだけいるでしょうか。

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マーケットは顧客の“動態”で構成されている

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この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/12/24 06:15 https://markezine.jp/article/detail/37974

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