※本記事は、2021年12月25日刊行の定期誌『MarkeZine』72号に掲載したものです。
オフラインのオンライン化、動画の短尺化、推し活がトレンドに
株式会社電通 電通メディアイノベーションラボ 主任研究員 天野 彬氏
1986年生まれ。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了(M.A.)。2012年、電通入社。SNSの動向や若者文化に関する研究・コンサルティングを専門とする。最新刊に、『ビジネスはスマホの中にある―ショートムービー時代のSNSマーケティング―(仮題)』(2022年、世界文化社)。その他、著作やメディア出演など多数。
――2021年のSNSコミュニケーションにおけるトレンドはなんだったと思いますか。
2021年は2020年から続くコロナ禍の影響を引き続き受けたという印象です。一つには、ユーザーの各種サービスの利用率・利用時間の増加というトレンド。もう一つに、ライブ配信やECなど現実のオフライン空間でできないことの代替策としてSNSが活躍したという印象があります。
たとえば、アパレルでは店員さんがSNSのライブ配信を活用して商品紹介やリモート接客を試みたり、LINEでOnetoOneコミュニケーションを行ったり、YouTubeでチャンネルを開設して動画を投稿したりする動きが目立ちました。ここでは、SNSが現実の場のサブ的な補完ではなく、むしろそこでは実現しにくい価値を成就させていると見ることもできるでしょう。
SNSはやはり個のメディアだと言えます。店員さんそのもののファンになる人も多く、その結果「この店員さんがおすすめするから買う」といった動きも起きました。
インフルエンサーを活用した施策も引き続き重要ですし、企業自らが発信する――さらに言えば、「中の人」(従業員)そのものがインフルエンサーになる動きにも注目したいと思います。
――2020年にも行われていたことが、より加速したということですね。
そうですね。さらに、動画の短尺化というのも2021年の大きなトレンドだと思います。TikTokはその代表格ですが、最近ではInstagramのリール、YouTubeのShortsなども台頭してきました。
――動画の短尺化がトレンドになっているのは確かにそうですね。その他に2021年のトレンドだと感じたものはありますか。
SNSがもたらした生活者側の変化という意味では、ファンが自分の一押しを応援する「推し」でしょうか。一人ひとりの応援が波状的に連鎖し、「推す」こと自体がつながりの契機になりました。元々アイドルや漫画といったエンタテインメントコンテンツやスポーツ業界の間で使われていましたが、2021年の「ユーキャン新語・流行語大賞」にて「推し活」がノミネートされるほどに一般化しました。生活者がSNSを通じてポジティブなつながりを生んでいる現象として理解したいと思います。