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生活者データバンク

コロナ禍から学ぶ生活者行動パターン

コロナ禍の消費財購買類型

 ここからは分析を通じて得られた類型のうち、図表3に示した以下の4類型に着目して紹介しよう。なお、図表3の縦軸は新型コロナウイルスの影響度(実際の販売金額−予測された販売金額)の類型ごとの平均値である。

図表3 類型別の感染拡大の影響度時系列データ(タップで画像拡大)
図表3 類型別の感染拡大の影響度時系列データ(タップで画像拡大)
©2021 SHOEISHA Co., Ltd./INTAGE inc. (MarkeZine vol.72)

 なお、2020年2月末は臨時休校要請など一連の新型コロナウイルスによる影響に初めて生活者が直面したタイミングであり、3月末は外出自粛要請や緊急事態宣言が検討され始めた時期にあたる。

類型A)【パニック型】

 2020年2月末に急激に販売金額が増加。その後は感染拡大前と同水準に落ち着く。

類型B)【内食需要型】

 類型Aと同タイミングで急増し、落ち着く。加えて、20年3月末から販売金額が増加する。

類型C)【巣ごもり快適化型】

 2020年2月末の変化は少ないが、3月末から販売金額が増加。

類型D)【コロナ禍順応型】

 2020年2月末以降、販売金額が落ちるが、その後感染拡大前の水準を回復していく。

 類型Aに該当する商品カテゴリーは、トイレットペーパー、ティッシュペーパーなどの「紙類」や米や育児ミルクなどの「備蓄性の高い食品」である。感染拡大当初は、国・自治体による臨時休校要請や店頭での商品欠品がニュース・SNSで多く見受けられるなど、いわば「パニック」のような状態であり、食事・生活の維持に直結するこれらの商品が求められたと考えられる。

 一方で、商品供給は安定的であり、その後、急激な販売の増加が生起することはなかった。非常事態が起こったときに顕著に発生しうるパターンと言えるだろう。

 類型B、Cは感染拡大初期の販売増加の水準に違いはあるが、ともに2020年3月23日週から販売増加し5月末には通常の販売水準に戻っていく。このタイミングは初の外出自粛要請、緊急事態宣言から解除に至る期間に相当する。

 類型Bにはしょうゆ、マヨネーズ、サラダ油などの「調味料」、冷凍調理品やアルミホイル・食品包装用ラップなどが含まれており、ステイホームにともなう内食需要が高まった影響が見て取れる。急激なライフスタイルの変化に快適に適応していくための購買行動と言えるだろう。

 また、類型Cはコーヒー、紅茶やスナック、ワイン、ウィスキーなどが含まれる。生活維持や内食需要への対応から、徐々にステイホームの生活を快適にしていくための購買行動が見て取れる。

 類型Dは感染拡大後やや販売金額が減少するが、緊急事態宣言解除にともない拡大前水準に回復し、10月以降は感染拡大前よりやや増加傾向に転じる商品カテゴリー群である。ここにはマスカラや眉目料(アイシャドウ、アイブロウなど)、乳液、ヘアトリートメントが含まれており、外出制限やリモートワークの浸透にともない需要が減少したのちに、「withコロナ」への移行にともなう外出機会の増加で需要が回復していった商品と言える。

 とりわけ、外出時のマスク着用習慣化は、マスクで隠されない目元などへの意識の高まりにつながっていると考えられる。また、ステイホーム中にスキンケア、ヘアケアに意識が向けられた生活者が少なからず存在すると言われており、こうした背景での需要喚起も考えられる。いずれも、コロナ禍への順応期における変化とも言えるだろう。

 類型A〜Dは未曾有の事態かつ行動制約が比較的長期に発生する場合に今後も起こりうる購買変動とも言える。まずは生存や最低限の暮らしを満たすものを、続いて変化したライフスタイルに対応するための商品をそろえ、快適な生活を作っていく。そして、状況に適応するに従い、利用や購買が減少していた商品も回復していく。また、行動制約で見直されたニーズに基づく消費も生まれていく。このような変遷が、複数カテゴリーの購買変動の共通性を通じて見えてくる。

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この記事の著者

篠原 正裕(しのはら まさひろ)

株式会社インテージ 事業開発本部 DX部

2005年、インテージに入社。消費財・耐久消費財のデータ解析、消費者パネルデータおよび解析ソリューションの開発に従事後、現職。市場予測、広告効果測定、マーケティング予算配分最適化などのデータ解析プロジェクトを数多く経験。データサイエンスと育児の両立に奮闘中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/01/04 08:30 https://markezine.jp/article/detail/38036

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