エンタメ領域は2022年も伸びしろ十分
――エンタメを複数楽しんでいく人が増え、エンタメに消費する可処分時間の総和は増えていくということですが、一定程度まで伸びると頭打ちになってくると思われます。永遠に増え続けることはない中で、2022年はどういう変化をしていくと思われますか。
まさにそこも調査・分析しているところです。結果から言うと、そのうち頭打ちになることは間違いありませんが、まだ余力はあるという状況ですね。今回の調査で、カテゴリ間の併用率について、現在の観測値と今後の期待値を比較しました。観測値が期待値に近づくほど、それ以上の伸びは期待できなくなってきますが、今のところはまだまだどのカテゴリの併用率も伸びしろがあるという結果が出ています。少なくとも2022年はまだまだ伸びていくと考えられます。
――コンテンツカテゴリの併用率が高まるということは、企業やブランド(広告主)にとってはマーケティングコミュニケーションのプランニングがますます難しくなると言えます。広告主が、デジタル上で消費者にアプローチする際のアドバイスをいただけますでしょうか。
冒頭でお話ししたように、私のチームでは、デジタル環境が変化している中で生活者がどのように情報を獲得し、理解し、行動しているのかについていろいろな調査結果から分析しています。その中で、一見すると無作為と思われる購買に至るまでの情報探索や検索行動のプロセスにも、ある一定の法則があることが見えてきました。その法則を私たちは「バタフライ・サーキット」と名付けています。
これまでのマーケティングは、「F1」「M1」といった性や年代で生活者をラベリングして見てきたところがあります。また、その方法が最も合理的とされていました。
しかし、今、デジタル化によってマーケティングコミュニケーションが難しくなったと感じられているのは、従来のラベルを貼るマーケティングが通用しなくなってきているからではないでしょうか。これからは、マーケティングのやり方も変わっていかなければなりません。方向性としては、もう少し生活者を主導にしたマーケティングに舵を切っていく必要があると言えるでしょう。
2022年は「コネクテッドTV」と「プライバシーのあり方」に注目
――最後に、2022年以降リサーチの対象としてGoogleおよび小林さんが注目している領域がありましたらお聞かせください。
2つあります。1つは、コネクテッドTVです。今までデジタル化というのは、よりパーソナルでモバイルな方向に進化してきました。一方、コネクテッドTVは場所固定型で、ファミリーや一世帯など複数人での利用が想定されます。この方向へどう進化し、それを人々はどう使っていくのか。その結果どのような変化が起こるのかということについて、とても興味があります。
さらに、そのときテレビというハードウェアの役割がどう変わるかについても関心を寄せています。テレビ放送以外のSVODやビデオ会議などのコンテンツがテレビスクリーンに流れるようになると、暮らし方や働き方まで変容してきます。たとえば、携帯電話がスマホに切り替わった時のようなインパクトがあるのではないかと私は感じていて、すでに調査プランを立てているところです。
もう1つは少し注目する角度が違いますが、デジタル環境下でのプライバシーのあり方についてです。今、生活者は何を個人情報として考えているのか。これを生活者の立場で考えてみたいと思っています。
今までデジタルビジネスのエコシステムは、事業者と利用者(生活者)がインタラクティブに対話すればするほど価値が上がっていくというモデルで成長してきました。ですが、対話によって得られる情報の一部はプライバシーと捉えられます。この対話で発生した様々な情報を、あくまで帰属は生活者とした上で、いかに生活者にとって有効に活用できるのか。これは事業者が考えなければならない部分です。生活者にとってプライバシーとは何なのかを、今改めて包括的に考えていくタイミングではないかと思います。以上の2つが、2022年に重要なトピックになると考えています。
※1 「Google Entertainment Study 2020」
調査会社:インテージ
調査時期:2020年10月16日〜2020年10月19日
調査対象者:全国の18〜69歳男女
調査回答者:n=3,209
