限定販売を続けたからこそ決まった、フランチャイズ化
そして昨年秋、冒頭で述べたようにケンズカフェ東京は、新しいビジネスへの参入を決めました。フランチャイズビジネスです。
ガトーショコラを中心に販売するチョコレート店の業態で、加盟店を募集。おかげさまで申し込みが殺到し、昨年11月には1号店が静岡県に開店しました。1月末現在で、15店舗を展開。今後全国で続々と開店し、年内には日本発の高級チョコレートブランドとして最大規模の店舗数となる予定です。
この参入は、フランチャイズビジネスの分野で多くの運営実績を持つ会社からお声がかかって実現したものです。
その会社は、ブランド力はあるのになかなか手に入りづらい当社のガトーショコラのプレミア感に目を付け、加盟店を通じて全国展開すればきっと成功すると判断したようです。もしネット通販を続けていたら、全国どこでも入手できるのですから、声はかからなかったでしょう。
これまで限定的な販売スタイルにこだわってきた私がこのご提案に乗ったのは、1にも2にもガトーショコラの品質向上が目的です。最強の1店舗も悪くないですが、これ以上の品質向上には限界があることを感じていたのです。
店舗数を増やすことによって、たとえば今の20倍のチョコレートを扱うようになれば、より上質なチョコレートを仕入れることが可能になります。美味しさを追求した結果、規模の力の必然性が浮かび上がったのです。
また自ら多店舗展開に乗り出すと商品の品質管理に手が回らなくなり、肝心の美味しさを維持できない恐れがありますが、フランチャイズであれば品質を管理する仕組みが既にありますから、その懸念は払拭されます。品質以外のところでは、各加盟店が思い思いの方法でビジネスを拡げ、新しいお客様に巡り合ってもらえたらそんなに楽しいことはない。そう思って、参入を決めました。
おかげさまで順調な滑り出しですが、この先何があるかはわかりません。大きな落とし穴が待っているかもしれませんし、そもそもコロナの終息もまだ見えていません。
でも、私は楽観視しています。
これからは加盟店の皆さんも一緒に、「ケンズカフェ東京のガトーショコラを大切に味わってくださるお客様に出会い続け、喜んでいただく努力を怠らなければ、どんな逆風も乗り越えられる」と信じています。
ガトーショコラのレジェンドを目指して
実は、その先の夢も既にあります。
それは、ケンズカフェ東京ブランドを世界で展開することです。世界中のスイーツを愛する人に、当社のガトーショコラを届けたいのです。私は将来、ガトーショコラのレジェンドになりたい。
これからも変わらず、ガトーショコラを焼き続けるでしょう。
白髪のおじいさんが、午前中は小さな店でガトーショコラを売り、午後はYouTubeでガトーショコラの美味しさを紹介している。その動画を見た異国の子供たちが「日本には変なおじいさんがいるなぁ。でも、このおじいさんのおかげで世界中で美味しいガトーショコラが食べられるんだって!」なんて、話してくれたら最高ではないでしょうか。
私がこの連載の最後にお伝えしたいことは、ビジネスに環境変化は付きもの。でも、その都度、変わることを恐れず、自社にとって大切なお客様に喜びを提供しつづければ、ピンチはチャンスに変えられる。強くしなやかなブランドを確立できる、ということです。
皆さまのブランドが、どんな逆風も乗り越えて大きく育つことを願っています。
連載「コロナに負けないブランドの作り方」記事
第一回:一つの“推し”で年商3億円。「ケンズカフェ東京」氏家シェフが語る、ブランドを作る看板商品の作り方
第二回:3度の値上げ、好調だったネット通販からの撤退――「ケンズカフェ東京」に学ぶ、ブランドを確立させる方法
第三回:コロナも震災も。逆風を追い風に変える「ケンズカフェ東京」流、環境変化に負けないブランドの作り方(本記事)