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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

1から学ぶインサイト発掘の手法

インサイトを発掘するスキルを磨く。日常的にできる8つのトレーニング手法を紹介

7~8:マーケターが持っている「既成概念」を外す工夫も必要

7.マーケターではない同僚と壁打ちしてみる

 私がよくやるお勧めの手法です。マーケティング部門の人は、流行に敏感であり、業界のことに精通しているが故に、アイデアを狭めてしまったり、消費者の本質的なインサイトに遠回りしたアプローチをしてしまいがちです。ブランドにフィットしているか、きちんと利益が出るか、そもそもスケールできるか、といった消費者ファーストではないビジネス的な側面を無意識に考えたうえで、発言をします。

 しかし、同じ会社でも研究職や工場の生産管理職や人事職の人は、普段から見ているものが全然違います。そのため私は、マーケティング部門以外の人にも相談をしてみて、違うインプットをしてもらうようにしています。製品開発を進めるか否かの大切な会議では、部門に関係なく忌憚ない消費者目線の意見をすべての部署のリーダーから吸収するようにしています。

8.ロイヤルユーザーとノンユーザーに同じ質問をして、回答の差を比べてみる

 ロイヤルユーザーはプロダクトごとに定義が変わってきますが、たとえば自社商品を何度もリピート購入している消費者、一方ノンユーザーは、そのカテゴリーの製品を一度も使ったことがない消費者です。

 マーケターは往々にして、ロイヤルユーザー目線での製品開発をしがちです。ロイヤルユーザーはブランドのことをしっかりと理解し、愛着を持っていて、こちらのメッセージをしっかりと受けてくれるので、マーケターにとって、それらのユーザーに製品を買っていただくことの難易度は、高くありません。一方、ノンユーザーはそのブランドを知らないため、ブランドの力で製品を買ってもらうことはできません。愚直にインサイトを捉え、ベネフィットを伝えなければいけません。実際にやってみるとわかりますが、ロイヤルユーザーとノンユーザーに質問をぶつけると、返ってくる答えが一緒の部分と異なる部分があります。答えが異なっている部分こそに、インサイトのヒントがあり、同じ答えになるようにユーザーの考え・行動を変更することこそがノンユーザーにロイヤルユーザーになってもらう一歩となります。

 反対に、マーケターの命題である新規獲得ばかりに目がいってしまうと、既存の顧客に対するマーケティング施策が不十分になってしまうことがあるため、ロイヤルユーザーがロイヤルユーザーではなくなる瞬間が何かを調べる必要もあります。ここも同様に、ノンユーザーとの回答の差を見ていくことでヒントを見つけることができます。 

 以上、8つの「型」について解説をしました。繰り返しになりますが、これらは、インサイトを発掘するスキルを向上するためのトレーニング方法に過ぎません。私の経験上、マーケティングのスキルは、デスクに向かい、ひたすらに作業をしているだけでは成長に限界があると思います。消費者や、モノ・コトに実際に触れ、それらの心理や背景を妄想し、考え抜くことや、実際にいろいろなコンセプトを書き、商品を発売し、実際に成功や失敗と積み上げることによって、本質的なスキルが伸びていくと考えています。時代に応じて、マーケティングのHOWの手法は流動的ですが、WHO/WHATの部分は一定程度普遍的なスキルになりますので、早めにスキルとして訓練を積むことをお勧めします。

 インサイトの発掘プロセスはとても難しい一方で、最も面白い部分でもあるので、皆様のマーケティングの過程でゴールが見えづらくなった時は、いつでも相談してください(著者 木村のアドレス:tsukasa.kimura@unilever.com)。様々な意見交換をする中で、見えてくることがあるかもしれません。一人でも多くのマーケターの皆様が、これまで見えてこなかった、消費者のインサイトを発掘し、世の中に新しい価値を提供することに貢献できることを、応援しています。

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この記事の著者

木村 元(キムラ ツカサ)

株式会社Brandism
代表取締役

ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にてダヴを担当し、グローバル全体のブランド戦略設計をリードした後、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/01 08:00 https://markezine.jp/article/detail/38512

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