「消費者が払ってもいい額」を探る、2つの方法
変動する価値をいかに捉えるかは、ダイナミックプライシングを考える上で最も重要なポイントです。前回、消費者が払ってもいい額、つまりバリューベースの視点で適切な価格を知るためには、インターネット調査やアンケートを通じて「直接消費者に聞く方法が最善」とお伝えしました。しかしこれは、すべての商材でうまく機能するわけではありません。
「商品数が多い」「価格変更が頻繁にある」、あるいは「新商品が次々と発売される」。こうしたビジネスにおいて、毎度、消費者に聞くのは困難です。代わりに、変更した価格に対する消費者の反応を見ながら適正価格を探っていくアプローチがあります。
自社の商品について考えてみてください。商品数は多いでしょうか。価格変更頻度はどの程度でしょうか。
消費者に直接聞く方法と、価格への反応を測る方法のどちらが適しているかは、次のように分類することができます。
価格変更のルールを決める「プライシングフロー」
ホテルや高速バス、小売のような業界は、取り扱う商品数が比較的多く、価格変更も多めであるため、実際に価格を変更し、その売れ行きや消費者の反応を見ながらプライシングしていく方法が有効です。
ただし、やみくもに価格を変更しても意味がありません。まずは、価格に影響を与える要素(KPI)を洗い出し、「何が」「どうなったら」「いくらで売るか」という価格変更のルールを仮説として整理します。そして、実際に価格を変更し、仮説がどの程度正しかったかを検証し、ルールを改善します。この、仮説検証を繰り返しながら最良のプライシングを目指していく仕組みを「プライシングフロー」と呼びます。
おもしろいのは、プライシングフローの構成は、業界や商材の特性によってまったく異なるということです。
たとえば、ホテル・レジャー施設・ゴルフ場・鉄道・航空業界などのビジネスは、販売可能な在庫数が固定的であるため、稼働率をいかに上げるかが肝要です。そのため、「稼働率がいつのタイミングでXX%になったら、価格をYY円変更する」といった具合に、稼働率に連動したプライシングフローを組み立てることが多くなります。
一方で、スーパーマーケット・家電量販店・ドラッグストアなどの仕入販売型のビジネスは、売れ行きや在庫数、競合店の価格等を注視しながら、粗利率のバランスを鑑みて価格調整するケースがあります。プライシングフローに組み込むべきデータや指標が必然的に多くなるのもこうした業界の特徴です。それだけ、複雑なプライシングを行っている業界と言えるでしょう。
当然、価格に影響を与える指標は一つではありません。自社のプライシングフローを構築する際は、まず、価格に影響を与える要素を棚卸しするといいでしょう。その上で、重視すべき指標は何かを選択し、各商品における価格変更のルールとして組み立てていくのです。