顧客の声を起点としたマーケティングをいかに進めるか?
購買シーンにおいて顧客の声が重視されている現状を踏まえ、注目されているのが顧客の声を起点としたマーケティングだ。SaaSにとって重要なカスタマーサクセスを実行し、そこで得た顧客の声を、見込み顧客に届ける。この仕組みを作ることが、マーケティングの肝となる。加えて竹内氏は、経営やプロダクト開発にも顧客の声を有効活用していく必要があると述べる。
「お客さまからいただく声の中には、良い評価もあれば、良くない評価や競合と比較してどうかといった耳の痛い声もあがってくると思います。こういった声はセールス、マーケティング、カスタマーサクセス部門だけに閉じるのではなく、経営層も積極的に把握し、適正にバリュープロポジションを定義していく必要があります」(竹内氏)
実際にITreviewの利用企業は、幅広い用途で顧客の声を活かしている。一つはブランディングや広告最適化への活用だ。たとえばITreviewが主催するアワードの結果をリリースに掲載し、見込み顧客へ提示することが可能だ。また、ある企業が口コミ評価を掲載したリターゲティング広告を配信したところ、資料請求数が通常の3倍に増加した。
また、レビューの分析を通じて競合と比較した自社の優位性をあぶりだし、コンテンツマーケティング、セールスのマテリアルとして活用している企業もある。中立的な第三者プラットフォームに投稿されたレビューであるため、見込み顧客が上長へ説明する際に役立ててもらうこともできる。
さらに進んだ取り組みとして、レビューをデータとして捉え、マーケティング・インサイドセールスの生産性を高める事例も増えている。具体的にはレビューを閲覧している人を検討が進んでいる人とみなし、彼らを企業規模で捉えてアプローチするという試みで、インテントデータの活用と呼ばれる。
日本進出直後からレビューを集め、事業成長につなげたON24
続いて、ITreviewのユーザーであるON24(オン・トゥエンティフォー) シニアマーケティングマネージャーのコクラン久美子氏にインタビューする形で、活用事例が紹介された。
ON24は、マーケティングDXを支援するクラウドベースのデジタルエクスペリエンスプラットフォームだ。ウェビナーやオンラインイベントを通じてエンゲージメント高め、そこで得られたデータを基にパーソナライズしたり、より適切なエクスペリエンスの提供につなげていくことができる。サンフランシスコに本社を持ち、20年以上にわたり北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域などでサービスを展開してきた。
同社は2020年11月に日本法人を開設し、2021年9月からITreviewを導入。米国本社でもレビューサイトを活用しており、バイヤー行動全体がデジタルで完結している今だからこそ、日本でもレビューを活用すべきと考え、導入に至ったそうだ。当初は日本における認知度不足を解消することや、他の先進諸国に比べ、BtoBマーケティング自体があまり成熟していない中、自社プロダクトの価値を伝えていくことなどを、重点課題としていた。
同社は導入開始からわずか半月で、30件以上のレビューを獲得。ITreviewがレビューを基に顧客満足度の高い製品を選定する「ITreview Grid Award 2021 Fall」では、「ウェビナー」と「動画配信プラットフォーム」カテゴリで「Leader」を受賞、「イベント管理」では「High Performer」を受賞した。また現在は、5点満点中「4.5」を獲得し、ITreviewカテゴリーレポート2021 FallおよびWinterの「ウェビナー」「動画配信プラットフォーム」にてNo.1の顧客満足度となっている。
ON24はどのようにして、導入開始直後からレビューを集めていったのか。コクラン氏はいくつかの理由を明かした。一つは、日本法人のあるグローバル企業、もしくはグローバル展開している日本企業がすでにON24を活用しており、価値を実感していた担当者が投稿してくれたこと。加えて、顧客へのレビューの依頼を営業メンバーが担当するなど、社内から強力なバックアップがあったという。