後編では、医療用医薬品を製造・販売するアステラス製薬の事例を紹介。キャッシュレスデータから病院利用圏を可視化し、最終ユーザーである患者さんの行動を紐解いていったといいます。
医師の先にいる患者さん像の把握に課題
MZ:まずはお2人が担当されている業務と、ミッションについてお教えください。
齋藤:アステラス製薬は「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの価値に変える」をVISIONに掲げ、医療用医薬品の研究開発から販売を手掛ける企業です。私は営業本部デジタルコミュニケーション部に所属し、三井住友カードさんをはじめとする社外とのネットワーク構築をはじめ、部のミッションの1つである「デジタルを通じた営業活動の高質化・効率化支援」を目指して活動しています。
福武:私はCustella Analyticsのプランナーとして、クライアントのニーズをヒアリングし、分析プランを提示する役割を担っています。現在はアステラス製薬さんをはじめ、複数のクライアントを担当しています。
MZ:Custella Analyticsを活用される以前、アステラス製薬ではどのようなマーケティング課題を抱えていたのでしょうか。
齋藤:エリアごとの患者さん像について知る機会を十分に持てていませんでした。私たちが扱う医療用医薬品は、医師が発行する処方箋を通じて患者さんに届きます。したがって、私たちが情報提供を行うお客様は医療従事者です。最終ユーザーである患者さんのことを常に考えながら業務に臨んではいるものの、エリアごとの客観的な患者さん像を描くことは難しかったため「もっとデータドリブンにインサイトを把握できる方法はないか」と模索していました。
とはいえ、患者さんの情報は非常にセンシティブです。簡単にアクセスできるデータではないと思いつつ糸口を探していたところ、キャッシュレスデータに行き当たりました。カード利用者様の情報を厳格に保護しつつ、圧倒的なデータ量から切り口次第で様々な示唆が得られると知り、三井住友カードさんの問い合わせフォームからご相談したのが始まりです。
実態に即した病院利用圏を可視化
MZ:齋藤さんからの相談を受け、具体的にどのようなお取り組みを進められたのでしょうか。
福武:まずは病院利用者がどこから来ているのかをキャッシュレスデータに基づき可視化しました。具体的には市や区などの単位でエリアを分け、数十エリアの病院を対象に利用者の居住地や勤務地を可視化。「このエリアの利用者は居住地の近くだからこの病院に来ている」「このエリアの利用者は勤務地の近くだからこの病院に来ている」といった仮説を立てるためのファクトデータを提示したのです。
齋藤:私たちはこれまで「行政区」や「二次医療圏」などの単位でエリアを捉えていたのですが、患者さんが病院を選ぶ際にそのようなエリア区分を意識するとは限りません。ご自身が行きたい病院に行くはずです。「行政区と患者さんの移動圏は必ずしも一致しないのではないか」という仮説を、Custella Analyticsによって確信に変えることができました。
福武:「自宅近くの“かかりつけ医”から総合病院を紹介される」というのはよくある病院の利用ルートだと思います。病院間で情報連携は行われているようですが、そのルートが患者様にとってベストかどうかはわかりません。ある患者様にとっては自宅の最寄りにある病院よりも、鉄道沿線の2、3駅先にある病院の方が行きやすいかもしれませんよね。齋藤さんが元々お持ちだった仮説を起点に、データで裏付けをしていったのが今回の取り組みです。