リアル接客を大事にしている老舗アパレル企業
MarkeZine編集部(以下、MZ):ここ数年、コロナ禍の影響もあってアパレル業界のデジタル化が進んでいるといわれています。田中興産さんは店舗やリアル接客を重視しているとのことですが、デジタル化の流れをどのようにお考えですか?
中川:今、小売業界でECの売上が10%を超えてきたといわれていますが、実は当社はECに関してかなり後発なんです。現場のお客様との関係性構築を重視し、そこで頑張ってきた企業なので、デジタルシフトが本当に難しいんですね。具体例を挙げると、商品情報を届けるといえば、まず紙でカタログを制作して送付したり、DMを郵送したりという手法が当たり前で、目に見えないデジタル分野への理解や投資がなかなか得られないという状況でした。
中川:ですがコロナ禍になり、店舗営業ができなくなったことで社内でもECの重要性が徐々に認知されるようになりました。しかし、インスタグラムの活用やSNSのインフルエンサーを使った販促といっても、これまでの顧客層にはあまり馴染みがなく……デジタル化には課題が多いという現状です。
やはりスタッフとお客様が会話をしながら洋服を選んでいくという、リアル接客が強みなので、一気にデジタル化というのは難しい面もありました。
接客体験を上げ、店舗の魅力を伝えるためにLINE STAFF STARTを導入
MZ:一気にデジタル化へ舵を取ることが難しいなか、今回「LINE STAFF START」を導入しました。まず折原さんに伺いますが、LINE STAFF STARTとはどのようなサービスなのでしょうか?
折原:店舗スタッフの接客業務をDX化するバニッシュ・スタンダード社の「STAFF START」と、LINEが提供する「LINE公式アカウント」の良いとこ取りをした新サービスで、2021年11月に本格提供を開始しました。
折原:具体的には、LINE公式アカウントを通して店舗スタッフが友だち追加したお客様に対し、メッセージを配信したり、キャンペーンやセールの情報を送ることができます。また、「STAFF START」で作成したコーディネート情報や商品情報をチャットで紹介するなど、お客様1人ひとりにあった提案や接客をLINE上で行うことができるサービスです。LINE STAFF STARTを経由したスタッフ個人の売上を集計・可視化できるという特長もあります。
折原:一般的なLINE公式アカウントは、企業やブランド、店舗単位で活用されることが多いのですが、LINE STAFF STARTは1人ひとりの店舗スタッフがお客様と直接コミュニケーションできる点が特長です。接客や店舗での体験を向上することで、店舗スタッフのファンを増やし、売上につながるサイクルが構築できると考えています。
MZ:田中興産さんとして導入したきっかけを教えてください。
中川:デジタル化の重要性は強く感じていました。会社にとっても、お客様にとっても、第一段階としてやはり売り場を最優先にしながらオンラインと共存することが必要だと考えました。そこで、まずは試験的に2021年3月、当社のLINE公式アカウントを開設しました。
すると、LINE公式アカウントへのお客様の反応が非常に良かったんです。現在、友だち数は2万3,000人ほど。予想以上の勢いだったので、LINEを軸に販促施策を展開できないかと考えました。
そのタイミングでSTAFF STARTの存在を知りました。将来的にLINEとも連携するという話を伺ったので、まずは先行してSTAFF STARTを導入し、その後LINE STAFF STARTを導入したというのが経緯になります。