マーケティング目標だけを追うマーケターは組織で孤立する
BtoBのビジネスでマーケティングチームが組織全体から孤立してしまう最大の原因は、何と言ってもプロセスの後ろを見る意識が不足していることにあります。どういうことかと言うと、マーケターがインサイドセールス、営業、カスタマーサクセス、そして経営陣と目標を共有することなく、マーケティング目標の達成だけを見てしまっているのです。

よくある失敗が「創出したリード数が前年同期比250%増」と報告したものの、売上貢献度を説明できないケースです。後ろに控える営業にとっては、数だけ多く渡されてもリソース的に全部をフォローできない場合もありますし、もらったリードの質が悪ければ次につながりません。
それに「リードが前年同期比250%増」とマーケティングが成果を謳っても、受注金額が減少していたらどうでしょう。営業はマーケティングに不信感を持ち、渡したリードをフォローしなくなります。一度こうした悪循環ができてしまうと、信頼回復には時間がかかります。マーケターは作ったリードの商談化に何が必要か、その条件を逆算して考えなければならないのです。
全体最適の視点を持ってKPIをチューニングせよ
条件の逆算は「ビジネスの全体最適の視点を持つこと」とも言い換えることができます。ビジネスの全体最適を目指すためには、マーケティング組織の成熟度に合わせて適宜KPIを見直すことが必要です。私たちも最初はBDR(インサイドセールス)が作った有効商談数だけを見るところから始め、その後、有効商談を金額ベースでも評価する指標に変更。慣れてきたタイミングで実際の成約金額への貢献度を評価指標に追加してきました。
このように、マーケティングが事業の売上にどれだけ貢献しているかを全社に対して可視化してきたのです。そして現在は可視化した数字に基づき、各営業部門の営業戦略に合わせてマーケティングおよびインサイドセールス活動を調整するようにしています。
これらのプロセスを「当然では?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、アドビのデジタルエクスペリエンス事業は営業部門ごとに戦略が異なり、それぞれに違う引き渡し条件を再整理する必要があったのです。
たとえばある営業部門からは「多少緩くてもいいので、幅広い提案の可能性があるリードを数多く渡してほしい」という声があった一方、別の営業部門では「特定の製品に絞ってニーズをヒアリングし、もっと厳しい条件を満たしたリードに絞って提供してほしい」というオーダーをもらっていました。オーダーは各部門の営業状況によっても変化してくるので、マーケティングチームは各営業部門と常に連携しながら案件の引き渡し条件をチューニングしています。