転職でデジタルマーケティングの道に
野崎:住友生命は1年半で退職され、保険代理店に転職されていますが、どういった背景から転職を決めたのでしょうか?
藤原:元々28歳で起業することを決めていまして、3年大手企業、3年ベンチャー企業に勤めるキャリアプランを立てていました。しかし、1年半のタイミングで転職先である保険代理店との出会いがあり、転職を決めました。
当時、保険代理店のビジネスモデルはまだ珍しく、1社の商品しか販売できない「専売」ではなく、顧客視点に立って、複数社の様々な商品を販売できる「併売」ができることがとても魅力的でした。

野崎:学生時代から明確な逆算キャリアを描いていたのは驚きです。当時の2005年はSNSのmixiが話題になっていた時期で、現在のように起業がここまで身近ではなかったはずです。そして、保険代理店ビジネスもまだまだデジタル化していなかったと思いますが、保険代理店では、どのような経験をされたのですか?
藤原:最初はコールセンターのマネージャーをしていました。具体的には、配線からブースの整備をしたり、販売担当の方と一緒に営業したり、組織作りをしたりと、何でも屋さんでした。
その後、ウェブマーケティング室長として、広告予算の管理やウェブサイト構築、社内基幹システムのリニューアル企画・推進を担当しました。
野崎:入社当時はマーケティングの実務は未経験でしたが、なぜウェブマーケティング室長になれたのでしょうか?
藤原:当時のグループ会社の社長から「保険代理店のビジネスを伸ばすのには、マーケティングが必要だからマーケターを採用しろ」と言われていました。しかし、採用するのが難しいことから、社内でできそうな人を探した結果、私に白羽の矢が立った形です。
野崎:これも参考になりますね。日頃から自身に何ができるのか、何をしたいのか、を社内やレポートラインに発信することで、キャリアの幅は広げられます。チャンスは平等に回ってこないんですよね。さて、マーケティング未経験から、どのようにスキル・知識を蓄積していったのでしょうか?
藤原:最初は付き合いのあった広告代理店の方からデジタルマーケティングのイロハを教えてもらいつつ、グループ会社のマーケティングやクリエイティブ、システムなどのキーパーソンの方と関係構築をしました。これによって、業務に活かせる様々な情報が得られるようになりました。
野崎:事業会社のマーケターは複数の部門を横断して関わる仕事であり、特にDX文脈でその必要性はますます増しています。一緒に働く人が普段どんな悩みを抱えているのかを回収することは円滑に施策を進めていくうえで重要となります。藤原さんのように、他部門の人から情報収集をする姿勢は、事業会社のマーケターを目指すMarkeZine読者の方もぜひ真似して欲しいスタンスです。
婚活支援サービスのマーケターで得られた2つのやりがい
野崎:保険代理店でマーケターとしての実績を作り始めていた中、婚活支援サービスを展開する企業に転職していますが、これはどういった経緯だったのでしょうか?
藤原:自分が起業家になるためには、より経営者に近いところで仕事に携わる必要があると感じていました。その中でマーケティング経験を活かせて、IPOのチャンスもありそうだったことが大きいです。
野崎:キャリア実現のために手段として転職を活用されたケースですね。藤原さんに伺いたいのですが、日々キャリア面談をしていると支援会社のマーケターが「事業会社に転職したい」「将来は事業会社のCMOを目指したい」と希望されることが多く、関わりたいビジネス領域をヒアリングすると、消費財メーカーやアパレルなどの普段の生活に身近な2C向けブランドが人気です。そして、それ以外のサービス領域は「いや、ちょっと……」とネガティブな反応になりがちだったりします。
ただ、その他の業界にもマーケティング予算が潤沢で、経営陣のマーケティングリテラシーも高く、様々な施策が実行しやすい会社が現在はたくさん存在していますし、倍率的に主要メンバーとして活躍できるチャンスが多いはずです。参考までに実際に保険代理店や婚活支援サービスのマーケティングを担当してみたやりがいがあれば、ぜひ教えてください。
藤原:大きく2つのやりがいがあると思います。1つは、「自分がミスをしたら、会社が立ち行かなくなる」というプレッシャーの中で仕事ができることですね。たとえば、婚活支援サービスは売上に対する広告宣伝費の比率が20%程度あって、他の業界に比べても高いと言われています。私はプレッシャーのかかる環境のほうが頑張れるタイプなので、とてもフィットしていました。
もう1つは、ニッチなマーケットで適切なターゲットを導き出すことです。婚活支援サービスって60万人規模の市場で、利用していない人でもターゲットとなる人はかなり限定的です。その人たちに対し、どう広告をリーチさせるか試行錯誤するのは、とても楽しかったです。