WHO/WHATを解き明かす、上流マーケティングの10ステップ
─ WHO/WHATの解像度を上げ、事業を成功に導く。実務に使える、上流マーケティングのフレームワーク(本記事)
─ WHO/WHATを解き明かす「上流マーケティングの10ステップ」とは
─ 正しい「セグメンテーション」で事業の成功確度を引き上げる──ターゲット、潜在ビジネスサイズの捉え方
─ 「狙うべきターゲット」を、ブランドとビジネスの観点で明確にする。ターゲティングに必要な思考と実践法
─ 正しい「ポジショニング」=WHATを定める。デプスインタビューから本質的なインサイトを探る方法
─ “ターゲットが本当に求めているプロダクト"開発に必要な「コンセプト」をロジカルに作る思考法
「マーケティング理論」実践の壁
──本連載では、木村さんが考案された、「WHO」「WHAT」を正しく設定していくためのマーケティングメソッドをお伺いしていきます。10ステップから成るマーケティングメソッドということですが、はじめにフレームワーク開発の狙いについてお聞かせいただけますか。
木村:マーケティングのフレームワークや手法は世の中に数多く溢れるようになりました。フィリップ・コトラーやバイロン・シャープなどアカデミアにバックグラウンドをもつ方のマーケティング理論を本で読まれたことがある方も多いでしょう。P&Gをはじめとするマーケティングに強みがある会社で働いてきた方のマーケティングフレームワークも本や記事でご覧になられたことがあるかもしれません。
木村:一方で、私自身、欧州系消費財メーカーであるユニリーバ・ジャパンにて13年以上勤務してきて、毎日のようにマーケティングを実践してきましたが、書籍に書かれているような教科書的なマーケティング理論を実践することの難しさを実感してきました。
時代が変遷しているからとか、デジタライゼーションのバランスが難しいからという外部要因が難しくしているというよりも、マーケティングは学問として成立しつつも、実践として学問の要素が適応できないことがあまりにも多いのです。そのため、理論やフレームワークを頭で理解しても、成果が出る形で実務に落とし込めるのはごく一部のマーケターしかいないのではないかと感じています。
そして、中でも特に難しいと感じていたのが「WHO」と「WHAT」の戦略です。直訳するとWHOは「誰」、WHATは「何」です。一見簡単に見えますが、マーケティング業務の中で最も実践が難しく、経験の長いマーケターでもWHOとWHATを考えるのが難しいと嘆いています。
学問化しているマーケティングをより実践化することで、本当に実務に使えるフレームワークが必要なのではないか。そうした考えから、私が消費財のマーケターとして経験したこと、またマーケティング支援会社の代表として、BtoB、BtoC問わず支援してきた経験をもとに、実務で使えるWHOとWHATの考え方をまとめたものが、今回ご紹介するフレームワークです。
WHOとWHATなしではマーケティングの成功はない
──では改めて、「WHO」「WHAT」の重要性について教えていただけますか。
木村:WHOとWHATの解析は、マーケティングにおける基礎です。
サービスやプロダクト開発や広告運用において、WHOとWHATの解像度が低い状態でマーケティングを実行しても、最終的に成功させることは難しいです。また仮に運よく成功したとしても再現性がなく、連続してマーケティングを成功させることはできないでしょう。
ところが、私がマーケティング支援をしていくなかで感じてきたことは、この基礎であり、最も重要な「WHO」「WHAT」の設定が曖昧なまま、「HOW」を追求してしまう会社が非常に多いということです。
たとえば、テクノロジー起点で新しいブロックチェーン技術を活用して、何かを売りたいということであればわかります。しかし、技術が特にない会社が、「TikTokやYouTubeが流行っているから動画で何か売りたい」となると高い確率で事業は失敗します。TikTokでモノを売るというのはHOWの一例に過ぎませんが、目の前に流行っているツールに飛びつきたくなる経験は誰しもがあるのではないでしょうか。