あらゆる情報に透明性を求め、プロセスを共有する
4つ目は「透明性・プロセスが欲しい」。SNSを通じて企業と個人の情報の非対称性が弱くなったことや、ブロックチェーン技術によってトレーサビリティの実現性が高まったことで、あらゆる情報に透明性を求められるようになった。企業活動においては、原価率や環境負荷、労働環境など、これまで企業が隠せば見えてこなかったような裏側の部分が見えてくるようになったため、そこの開示を求められるようになってきた。コンテンツにおいても、完成形としてのアーティストを売り出すのではなく、成長するプロセスそのものを売るプロセスエコノミーが進展している。
「エンターテインメント領域においては、作為性があるものよりも透明なものが支持されるようになってきました。最近では『Nizi Project』から誕生したグループNiziUや、日本最大級のオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』から生まれたボーイズグループJO1などが話題になりました。また、『バチェラー』などの恋愛リアリティショーのように、脚本のないリアルな物語も人気があります。プロセスをいかに共有するかということが大事になっているのです」(用丸氏)
また、絶対的なカリスマが存在したマスメディア一強時代とは変わり、ロールモデルが多様化しているのが今の時代だ。Z世代が憧れる対象は、共感できる身近な存在。自らの弱点まで見せてくれる人が「透明性が高い人」とされ、それが信頼や共感へつながるポイントになっている。
「正しさ」より「グッとくるかどうか」が大事
用丸氏は次に、これからのブランディングのポイントについて説明した。
これまでの「消費者」を、「社会を変えるパートナー」と捉え直し、自社の利益だけではなく、財務諸表と非財務諸表の両輪を回すパーパスを真ん中に据えることがポイントとなる。そして、モノ・コトだけを届けるのではなくイミを届けること、プロセスを可視化し透明性を持つことも重要だ。
その上で忘れてはいけないこととして、用丸氏は「正しさだけでは、人の感情は動かない」と説く。
「アウトプットを出していく上では、正しさより面白さ、グッとくるかどうか、発見があるかということを大事にしたほうがいいと思います。たとえば、おしゃれな服を選んだらそれが結果として廃棄される衣類の削減になっていたとか、かっこいい靴を選んだらそれが地球資源の保全になっていたといったように、世の中の人々の欲求を捉え、サステナビリティをまといたくなるものにすることは忘れてはいけないところです。自分にとって良いからしたことが、社会にとっても良いことだったということが、生活者にとってグッとくるところなのです」(用丸氏)
用丸氏は最後に、「Z世代をとらえる4つのキーワードは、あくまでキーワードであってインサイトではない」とし、「調査上のマジョリティだけではなく、マイノリティにも注目することが大事です。インサイトを捉えるには、n=1の声を聞きながら一人ひとりと向き合い、まだ言語化されていない欲求を見つける姿勢を持たねばなりません」と述べ、講演を締めた。