デリバリーお化け屋敷で「恐怖」を近くにお届け
短尺化が進む笑いに対して「恐怖」の感情にはどんな流行が生まれているでしょうか。
車に乗りながら恐怖体験ができる「ドライブインお化け屋敷」や希望の場所まで救急車型のお化け屋敷を届けてくれる「デリバリーお化け屋敷」など、新しい形のお化け屋敷を多数手がける、怖がらせ隊のプロデューサー岩名謙太さんにお話を伺いました。
岩名さん曰く、ドライブインお化け屋敷やデリバリーお化け屋敷の特徴としてあるのが、利用者の大多数がこれまでほとんどお化け屋敷を利用してこなかった人であるという点です。では、なぜお化け屋敷初心者が恐怖体験を求めているのでしょうか?
背景には、「コロナ禍で失われた非日常的体験を取り戻そうとする欲求がある」と言います。
本当は旅行や遊園地へ行きたい。しかし、不要不急の外出自粛が叫ばれる中、日常生活を大きく超えた非日常的な行動は気がひける。そこで、普段の生活圏内に非日常的な体験を持ってくる方法の1つとして、ドライブがてら密を回避して行けるお化け屋敷や、遠出せずとも家の近くに来てくれるデリバリーのお化け屋敷を選ぶ人がいるそうです。
最近では、家族の時間を特別なものにするエンタメとして、キャンプの代わりや誕生日プレゼントにお化け屋敷をデリバリーする人も出てきているということでした。

非日常体験との「距離」を縮めたい
ドライブインお化け屋敷やデリバリーお化け屋敷を利用する人の話には、非日常体験との「距離」を縮めたいというインサイトが見えます。
旅行やキャンプ、郊外の遊園地など、遠くに行くことで日常から遠ざかり、その体験がより「非日常」なものになることってありますよね。しかし、距離を縮められるオンラインの体験では満足しきれない。そこで、オフラインでの非日常体験との距離を縮めるためにデリバリーやドライブインが受け入れられているのではないでしょうか。
この距離の短さが、体験へのハードルを下げて初心者の利用が増加している理由になっていそうです。さらにコロナ禍の場合、移動にともなう感染拡大や不要不急の行為に対する周囲からの批判など、様々なリスクを抑えられる点もポイントのひとつになっていると言えるでしょう。

カルチャー:「感情効率」を求める時代
ここまでガチャガチャの「ワクワク」にはじまり、「笑い」そして「恐怖」と3つの感情についての流行を見てきました。最後に、これらに共通する時代の価値観「カルチャー」を考えてみます。
共通キーワードは「感情効率」にあると考えました。
ガチャガチャはワクワクした感情を数百円で購入できるコストパフォーマンスが高い体験です。お笑いの短尺化は短い時間で心を動かそうとタイムパフォーマンスを求めた結果と言えます。そしてドライブインお化け屋敷やデリバリーお化け屋敷は非日常体験にともなう様々な距離を縮めることに成功しているからこそ選ばれています。
いずれも、自分が望む感情を手に入れる上で余計なコストを避けようとする感情効率を求めた結果であると言えるのではないでしょうか。

みなさんが提供する商品やサービスの「感情効率」はいかがでしょうか。まずはどんな「感情」が自分たちの商品やサービスから生まれているか考えてみてください。
同じような感情を起こすものを考えてみると、普段競合として意識している企業や商品とまったく異なるジャンルのものが、競合あるいは協業先として浮かんでくるかもしれません。また、その感情を引き起こす上でお客さんにともなう費用・時間・そしてリスクなどのコストは何があるでしょうか。求める感情に対する「効率」を考えてみると、商品やサービスに対する新たな価値や改善点が見つかるかもしれません。
もし感想などあればSNSで投稿してくださると嬉しいです。次回も、お楽しみに。