スタートアップ企業の広報の現状とは?
今回は、前回の記事で説明した広報活動を始めるために必要な5条件が整った後、具体的にどのように広報部を立ち上げていけば良いのかについてお話しします。実際に多くの企業ではどのような流れで広報活動をスタートさせているのでしょうか?
主にシード、アーリー期のスタートアップ支援を行い、株式投資型クラウドファンディングサービス「FUNDINNO」を運営するFUNDINNOの執行役員/CMOを務める向井太郎さんによると、「スタートアップで会社の創業期から広報活動を意識できている経営者はかなり少ない」とのことです。
それでも会社によっては、PMF(プロダウトマーケットフィット)など顧客獲得の土台ができた後、創業者の判断で社員数人の段階から広報活動にリソースを割き始めます。多くの場合、立ち上げ初期は代表がマーケティングと広報の両方を一人で担う形で最小限の広報活動をスタートします。その後、企業が一定程度成長したタイミングでマーケティング部を、さらに余裕が出てくれば広報部を設置するという流れで、マーケティング・広報部門を立ち上げる会社が多いようです。
スタートアップの広報活動で上手くいく企業の共通点
そして、スタートアップの広報活動で特徴的なのは、代表が一人でマーケティングと広報の両方を担っているときほど、双方が上手く機能しやすいということです。その理由をまとめると以下の通りです。
つまり、社長と担当者の距離が近く、情報共有が徹底されているので、マーケティングも広報もゴールに向かって正しく機能しやすい。またマーケティングと広報の距離が近く、活動の成果を上手に相互利用することができるため、売上アップなどの目標を達成しやすいということです。
この3点は、組織が大きくなるほど疎かになりやすいので、企業規模が順調に拡大しマーケティング部と広報部が分かれたときの連携で重要なポイントと言えます。
また向井氏は、スタートアップなどまだ知名度の低い企業が広報活動を始める際に最も重要なことは、「トップ自らが会社のストーリーを語ること」だと強調します。
たとえば、「創業者がどんな経歴を歩んできたのか、何をきっかけにして今のビジネスを始めたのか、サービスで解決したいペイン(課題)は何か、どうやってペインを取り除こうとしているのか」などを「ストーリー」として魅力的に語るのです。これによって「会社の持つ価値観や強みが伝わり、共感によって潜在顧客やメディア、投資家などのステークホルダーが集まる」と話します。
まとめると、広報活動のスタート初期には、トップ自らが一番の広報担当となって、マーケティングと連携しながら成果を相乗的に高めていくことが成功の秘訣と言えそうです。