SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究

Z世代社会投資家の中村多伽×MERY斉田裕之が対談「Z世代は本当にSDGs消費をするのか?」

共感を求めるZ世代、その根底にある価値観

斉田:なぜZ世代にとって「共感」が大事なのでしょうか? 中村さん自身は、Z世代とミレニアル世代のはざまにいらっしゃいますが、当事者として何か仮説はありますか?

中村:Z世代の子たちに「Z世代も人それぞれだ」とよく言われるので、「こういうのがZ世代」とはあまり言わないほうがいいんでしょうが、時代背景として共通しているのは、停滞感の中で生きてきた世代であるということです。たとえば、会社で頑張って認められたら、収入が上がる、地位や名声が上がるというシンプルな方程式ではなくなっている。だからこそ、自分だけ突き抜けて強くなりたい、頑張って大勝ちしたいという価値観はあまり理解できないし、そもそも自分の中に実感値がないのだと思います。逆に、横に広がっていく、繋がっていく、あるいは潜っていくような生き方のほうが落ち着くし、素敵だし、カッコイイ。そんな価値観があって、私自身もこちら側にいます。

 また、ひとつ前提として触れておきたいのですが、SDGsに対する興味関心が高いのは、上の世代よりも問題そのものが喫緊であるからという理由もあり、単純に人間性が優しくなっている、意識が高くなっているわけではないと思っています。たとえば、匿名で傷つける、傷つけられる頻度はZ世代のほうが圧倒的に増えています。その象徴として、裏垢女子、裏垢男子という言葉もありますよね。現実世界で得られない承認や満たされない欲求をここで癒している、あるいはぶつけているのだと思います。

斉田:単純にZ世代×SDGs消費を促すのではなく、そういった価値観がベースにあることを理解して、向き合うことが大切ですね。

中村:そうですね。本質的にZ世代を満たすものは、「ただいいことをしている」という感覚ではないと思います。

社会課題の解決に向けて、マーケターができること

斉田:talikiでは投資ファンド事業も展開されていますが、Z世代の社会起業家はどんな人が多いですか?

中村:若ければ若いほど社会性をあえて語らないですね。これは本当に顕著な傾向で、投資検討をしていておもしろいです。上の世代ほどプレゼンに社会課題解決という言葉が入っています

 恐らく、若い世代と上の世代は思考の順番が逆で、若い世代の社会起業家にとって人や環境、社会にいいことをするのは当たり前かつ大前提なんですよね。ですが、上の世代はビジネスとして儲かって、しかも社会貢献できるという順番になっているように感じます。

斉田:上の世代にとっては、付加価値のツールなんですね。僕の世代は、大企業に就職して、給料を上げるために徹夜してでも頑張る、というような風潮がまだまだ残っていました。昔は今のように価値観が多様化されていなかったし、そもそも今ほど選択肢がなかったようにも思います。現代の多様な価値観に寄り添うことが、マーケティングにおいても必須と言えますね。

 ここまでを振り返って、「Z世代はSDGs消費をするのか?」という問い自体が陳腐だったなと思っています。意識の高さうんぬんは置いておいて、社会や環境をより良くしていくというのは、Z世代の中でひとつの世界観として感覚的にあるものなんですね。「社会起業家はみんなエシカル推しを失敗した経験がある」というお話もありましたが、これからいろいろな企業がブランディングでエシカル推しをやってしまうと思います。まずは、そこを気を付けなければいけません。

 さらに言うと、バリューチェーンから見直す姿勢でいないと、「SDGs消費」もプロモーションのツールになってしまう可能性があることを改めて認識しました。開発優先で環境にいいものを作って、それをプロモーションで謳う。これに近い話を僕もマーケティングの現場でちらほら耳にします。「本当にこれでいいんだっけ?」とモヤモヤしてはいるけど、そのままごりっと進んでしまう、というケースはこれからもっと起きてきそうです。

中村:そうですね。今はまだ表層的なマーケティングでごまかせる部分もありますが、それが半永久的に続くことはありません。マーケティングというのは、人間の性があるリアルなところと、目指す理想やなりたい姿のギャップを上手に把握して、間にあるものを埋めていくようなものだと思います。社会をあるべき姿へ近づけていくために、より良い方向へ会社やプロダクト、消費者を向かわせていく、みんなの理解を助けてあげることにマーケターとして持っている力を使ってほしいですね。

斉田:いきなりゴールにはたどり着けないので、しっかり道筋とプロセスを作って引っ張っていけるマーケターがいたら、すごくカッコイイですよね。

中村:めちゃくちゃカッコイイです。5年後になりたいブランドの姿を描いて、少しずつファンを増やしていって……計画と成果を語れる素敵なブランドが出てきたらいいですね。私も支援側として尽力していきたいと思います。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2022/07/01 09:00 https://markezine.jp/article/detail/39186

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング