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Z世代社会投資家の中村多伽×MERY斉田裕之が対談「Z世代は本当にSDGs消費をするのか?」

多くの社会起業家がすでに「エシカル推し」の失敗を経験

斉田:なるほど。その場合、Z世代にとってインセンティブって何になるんでしょうか? 

中村:ビジネスセクターに対しては「儲かります」が一番ストレートでやりやすいんですが、対消費者は「かわいい」「おいしい」などがやはり入り口になりますよね。

 たとえば、talikiの投資先に「LOVST TOKYO(ラビストトウキョウ)」というビーガンレザーブランドがあります。LOVST TOKYOの商品は、リンゴの絞りかすのアップサイクルからできた植物由来の皮素材で作られていて、生産過程、配送においても環境負荷の低減に徹底して取り組んでいます。たとえば、配送時のパッケージには生分解性プラスチックを使ったり、土に埋めると中に入っている種が芽を出して花を咲かせるシードペーパーを使ってお礼のメッセージカードを添えたり、購入したらもらえるポイントは商品にも使えるし、植林活動の寄付に換えることもできます。

植物由来のヴィーガンレザーブランド『LOVST TOKYO』
植物由来のヴィーガンレザーブランド『LOVST TOKYO』

 このように随所で社会貢献を感じられる素敵なブランドなのですが、ブランドサイトを見るとわかるとおり、「社会貢献をしているから、いいブランド」という見せ方はしていないんです。あくまで、かわいいしおしゃれなバッグブランドで、王道のマーケティングをしています。「エシカル推し」でマーケティングをしていた時もあったのですが、「エシカルだから」という理由で「価格の高いもの」「機能や質の低いもの」を買うことは、人間やっぱりないわけです。

斉田:なるほど。以前、中村さんは「エシカル系のブランドはどうしても堅く、正しい方向にいきがち」とお話しされていました。その反動なのかもしれませんが、最近は、はっちゃけていたり、楽しい空気感を出すエシカル系のブランドが増えているような気がします。

中村:そうですね。現状、まだ社会性の高さは付加価値でしかありません。また、ほとんどの社会起業家がエシカル推しでは売れなかった経験をしているので、人間の性を踏まえた王道のマーケティングを今やっているのだと思います。

 ただ、もう少し先のことを考えると、最終的にいかに顧客のLTVを高められるかがカギになってきます。そう考えると、「かわいい」「楽しい」などの入り口を作ることと同じくらい、「飽きられない」という要素も重要です。

斉田:継続的にコアユーザーを作り続けていく意識を置かないと、トレンドで消費されてしまう。MERYで若年層をターゲットにしたマーケティングに従事していますが、よく起こりがちで、一番避けたいケースです。

中村:まさにそうなんです。たとえば、「おいしいけどヘルシー」などのアンチテーゼでうまく表現している飲食のブランドも、おいしくてヘルシーなものが世の中にあふれてくると、それは競争優位ではなくなってしまう。そうなった時にどうファンを育てるか? が重要になってくると思います。

「自己表現としての消費」をするZ世代

斉田:ソーシャルビジネスだとクラウドファンディングで資金を集めるケースも多いですよね。クラウドファンディングでZ世代を中心に話題になったり、支援金が集まりやすかったりするアプローチの方法は何かありますか?

中村:私の肌感覚ではありますが、ひと昔前までクラウドファンディングでは「社会正義をどう語るか?」が見られていました。それが今は「いかに共感を作り出せるか?」に変わってきているように感じています。

 たとえば、これは実数を調べてみたいくらいなのですが、若年層を中心に「世界観」という言葉がすごく使われるようになっていると感じませんか?

斉田:わかります。MERYで若い子たちと話をしていると、「世界観」ってすごくよく聞きます。

中村:そうですよね。多分、SDGsも世界観のひとつなのだと思います。Z世代は「自己表現としての消費する」傾向があって、「私はここの所属です」「私はこういう人です」と表現するためにブランド選びがある。なので、「環境にいいものだから、みなさん買ってください」というアプローチではなく、「環境にいいものを作りたいと思ったブランドの世界観」へ共感してもらえるようなアプローチを取るといいのではないでしょうか。

 ただ、今はパッケージをリデザインして、Z世代受けするようなニュアンスカラーにするだけで売れてしまう、といったことも正直あるように思うので、まだ変化のはざまなのかもしれないですね。

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共感を求めるZ世代、その根底にある価値観

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2022/07/01 09:00 https://markezine.jp/article/detail/39186

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