“汎用性の高い”フレームワークに“習熟する”ことが重要
──マーケティング・フレームワークと言われるものは、多数存在します。これらを学ぶ上で、大切なことは何でしょうか?
いろいろなフレームワークを知っているということは、安心感につながるのかもしれません。ですが、たくさんのフレームワークを知っているより、少数のフレームワークに習熟しているほうが、よほど便利です。たとえば、釣りに行くとき。いろいろなルアーを持って行くと、確かに安心かもしれません。ですが、1日に50個も100個もルアーを使うことはないですよね。むしろ、1つのルアーの扱い方を習熟して、春夏秋冬どんな状況でもそのルアーをうまく扱えるほうが、釣果につながりやすい。これと同様に、まず“汎用性の高い”フレームワークに習熟するというのが、MarkeZineの読者にとっては大事なのではないでしょうか?
また、手前味噌な話になりますが、パーセプションフロー・モデルは約25年前には既に存在していました。しかし、世に出したのは、昨年だった。その間何をしていたかというと、ずっとテストにかけていたのです。日用品から自動車、医薬品、住宅、アプリや保険などの無形サービスに至るまで延べ50以上のブランドで、5,000億から6,000億円ほどのマーケティング予算の投資を通して検証してきました。信頼性は高く、適用範囲も広いと思います。

──フレームワークに習熟しているとは、どういった状態を指すのでしょうか? 個人でフレームワークを用いる場合と、会社の組織で用いる場合と、それぞれで捉え方が変わりそうです。
個人の場合、解決したい課題やアクションを取らなければいけない事態に遭遇してから、フレームワークを適用して答えを出すまでの時間が、習熟すればするほど短くなると思います。
一方、組織でフレームワークを用いる場合、「みんなが知っている」という状態になれば、すなわち習熟度が高いと言えます。組織がフレームワークに習熟することには様々なメリットがあって、まずそのフレームワークをベースにみんなが会話できるようになるので、社内で意思疎通を図りやすくなります。そうすると、ラーニングも共有しやすくなる。各々が共有された二次体験を自分の知識としていくので、組織の成長の加速にもつながります。
仮に一人が1年で得られる経験値を1とすると、20人の組織なら、一人ひとりが20年分成長できるイメージですね。さらに、複数のブランドでフレームワークを運用できていると、ブランド間でのラーニングの共有も可能になります。そのためにも、特定のブランドでしか使えないようなものでなく、汎用性の高いフレームワークを用いることが重要です。
ただ、フレームワークは導入に労力がかかるものです。ですので、まずはマーケティングチームで運用してみて、うまくいったら次は広報を巻き込み、その次に営業、研究開発を巻き込んでいくというふうに段階的に展開していくと、組織でのフレームワークの習熟を目指しやすいと思います。