企画立案のポイントは特別視しないこと
廣澤:自分の職域を超えて企画書を作り先方に持ち込むというアクションは、なかなかできることではないと思います。阿部さんはなぜそんなことができるんですか。

阿部:「いても立ってもいられなくなる瞬間」は誰しもあると思うんです。広告の仕事に携わる皆さんは、ご自身の想いや展開イメージ、つまりは未来を企画書にまとめる力があるはずです。僕の場合は使命を感じた時に、自己紹介を兼ねて企画書を作り、とりあえず会いに行ってみる。シンプルにそれだけなんですよね。
廣澤:普段からお2人は企画という仕事に対して熱狂されているようにお見受けします。そのマインドはいかにして醸成されているのでしょうか。
阿部:僕はいつも「積極的な受け身」を大事にしています。様々な人やものと出会ったり、話を聞いたりする際に「こうすればいいかも」と思うことを企画のヒントにしているんです。リアクションから生まれるアクションを企画書にするイメージですね。
畑中:先ほど阿部さんがおっしゃった順番待ちの感覚は僕も若い頃すごく感じていて。「このまま待っていても順番は回って来ないぞ」とわかってからは、どうすれば並ばずに前のほうへ進めるかをプランニングし始めたんです。そういう意味では、自分の置かれている状況がアゲインストであればあるほど、企画に対する熱意が高まりやすいのかもしれません。絶メシの舞台である高崎市も良いまちではありますが、地域創生が必要な状態ではありましたし。“持たざる者”というポジションのほうが、企画のモチベーションは湧きますね。
廣澤:「何を取っ掛かりにして企画を立てるべきかわからない」という方は多いと思います。お2人が企画を立てる際に意識されていることがあれば、教えてください。
阿部:企画というものをあまり特別視し過ぎないことが大事かもしれません。たとえば企画を移動に置き換えて考えてみてください。「なぜあなたは自由に移動できるのですか」と聞かれても、移動のための手段は電車・タクシー・徒歩など、人によって違いますよね。大事なのは「これからどんな目的地に行きたいのか」という想いだと感じています。
担当領域を決めつけない「企画者はニュートラルたれ」
阿部:「コピーを書く」「企画を立てる」「記事を書く」「企画書を作る」僕がやってきたことは全て違う仕事のように見えるかもしれませんが、同じゴールを目指しているという点ではとても似ています。「伝えたい気持ちがある」「ハッピーになりたい」「みんなをこういう気持ちにしたい」というゴールへの強い想いがあれば、そこに向かうための手段は後からついてくる。企画の前提には想いの強度があるんだと、今日話しながら改めて気付きました。
廣澤:そもそも強い想いを抱けずに悩んでいる方もいると思います。毒の仕事をし過ぎてHPが減ってくると、強い想いの発露が難しくなるのかもしれません。自分が置かれた状況に危機感を抱いて「脱したい」と思えるかどうかは自分次第。人から言われて為せることではないのだと、お2人の話を聞いて思いました。最後に、広告だけでなく企画に携わる全ての方に向けてメッセージをお願いできますか。
畑中:阿部さんがおっしゃったことと重なりますが、自分が「広告の企画をしている」と思って仕事に取り組んではいません。物事の課題を抽出して言語化し、アウトプットとして表現する──これを10数年間ずっとやっているだけのような気がしていて。
そんな中で「この領域は専門外だから違う人に任せる」という発想を持たないように意識しています。企画に対する姿勢がニュートラルであれば、プランナーは全領域で打ち手を繰り出せるはずなんです。映画も撮れる、商業施設も作れる。肩書きから解放されると、意外とアビリティも解放されますよ。
阿部:「独り占めしないでください」と言いたいです。「自分には強い想いがない」と悩む方のことを僕は少し疑っていて。「何かちょっとやりたいな」という気持ちは皆さんの心にあるはずなんです。あるのに「自分はできない」と押し殺してしまう。ちょっとしたアイデアでも、誰かに伝えることで意義や実現の糸口が見いだせるかもしれません。「こういうことを考えているんです」と僕に連絡をいただければ「ぜひやってください!」とお伝えするので(笑)、独り占めをせず皆さんが企てる面白いものを共有していただけたら嬉しいです。