自社セミナーの有効商談化率が高い理由
祖谷:リードの数を追求するフェーズから質重視のフェーズへと転換するにあたり、どんな工夫をされましたか。
酒居:最も有効商談化率が高いチャネルを調べました。

祖谷:その有効商談化率はどう計算しますか。
酒居:分母は「商談の全体数」で、分子が「有効商談(パイプライン)の数」です。有効商談化率が高い案件は、その後の成約化率も高いことがわかっています。計算した結果、自社で主催するセミナーが最も効果的だとわかりました。
なぜセミナーが効果的だったのか。僕たちは「対象とする市場において、課題がまだ顕在化していないためだ」という仮説を立てました。当時はABMの認知度やデータマネジメントのニーズが低く、営業が電話をかけても必要性をなかなか認識してもらえなかったんです。
そこで「ターゲティングワークショップ(現・ABMワークショップ)」を開き、ターゲティングの重要性をお客様に実感してもらいました。僕たちが解決したいと考えるお客様の課題と、プロダクトが提供する価値を実感してもらうことができれば、自ずと「話を聞いてみようか」となる。徐々に有効商談化率が高くなり、組織の中にマーケティングの意識が定着しました。
マーケの仕事はリードジェンだけじゃない
祖谷:会社の成長にともない、組織体制を大きく変革していますよね。マーケが各事業部を横串で刺すような体制にしたと伺いました。その狙いを教えてください。
酒居:2020年1月から、SPEEDA・FORCAS・INITIALというSaaS事業を統合したマーケティング組織に変わりました。これまで別々に活動していたマーケティングチームを一体化するとともに、子会社や新たに立ち上げた事業も統合したセントラルマーケティング体制をつくっています。
この組織改革の背景には「非連続な成長を目指したい」という会社の想いがあります。これまでは事業ごとの部分最適でも良かったのですが、会社の成長にともない、複数の事業部が関係するお客様が増えてきました。「ユーザベース共通の世界観がお客様に伝わっていない」と感じる場面も増え、全体最適の基盤を整える必要性が出てきたのです。マーケティングの戦略やノウハウも横断的に共有し、施策の効果を高められるようなりました。
祖谷:お話を聞いていると、日本のBtoB企業によくあるマーケと営業との対立を感じません。営業との円滑なコミュニケーションを取るために工夫していることはありますか。
酒居:リード獲得後の「後工程フェーズ」をマーケのKPIに設定していることでしょうか。マーケの仕事はリードジェネレーションだけでなく、事業をつくることだと思っています。そのためマーケで完結するKPIではなく、インサイドセールスや営業との関係性、さらにはチームの成長フェーズに応じた「商談数」や「案件化数」などを目標として設定するようにしています。