※本記事は、2022年7月25日刊行の定期誌『MarkeZine』79号に掲載したものです。
特集:TikTok×マーケティングの最前線
─ TikTokはSNSではない?急成長するTikTokの現在地とショートムービー時代の活用方法
─ 「TikTok売れ」はなぜ起きる?メカニズムと意図的に生み出すアプローチを探る
─ “TikTok売れ”の実態とポテンシャル。狙って起こすために必要なことは?(本記事)
─ 大バズリから1年経過後も話題沸騰のリップモンスター 戦略的SNS活用に学ぶ、TikTokマーケの秘訣
─ 広告とは違った魅力を伝える、ほっともっとのTikTokアカウント運用
─ TikTokマーケのプロに聞く、TikTokの魅力と活用のポイント
TikTokは“売れ”のきっかけを作るツール
──“TikTok売れ”に注目が集まっていますが、最前線で活動されている皆さんはどのような実感をお持ちですか?
森:“TikTok売れ”は、TikTokに投稿すればただちに売れるという意味ではありません。TikTokの強みは他のプラットフォームに比べてフォロワーがいなくてもバズりやすいという点で、私は認知を取りにいくツールと捉えています。
たとえば弊社が過去に手掛けた事例では、アカウント開設直後に投稿した動画の再生数が、20万回に達したことがありました。フォロワーがほとんどいない段階にもかかわらず、です。こうしたバズを起こせるのは、TikTokのアルゴリズムが新規ユーザーからのリアクションを重視する仕組みだからだと思います。“フォロワー至上主義”と言われることもあるInstagramとは、真逆の特徴をもっています。
一方、コンバージョンレートの観点からお話しすると、同じ再生数であればTikTokよりもInstagramやYouTubeといったプラットフォームのほうが、パフォーマンスが高いケースが多いです。これは視聴態度の違いによるもので、Instagramのリールでは主にフォローしているアカウントのものが再生されるため、ユーザーの集中度合いが高く、TikTokは流し見するユーザーが多い傾向があります。
今瀧:今のお話の通り、潜在顧客にアプローチするとき、TikTokは強い味方になります。TikTokで商品を認知したことをきっかけに、様々なプラットフォームに書かれているレビューを見に行き、購入に至るというジャーニーが典型的です。TikTokは確かに売れの“きっかけ”としての役割を果たしていますが、他のプラットフォームとの掛け合わせが重要で、TikTokのみで完結しているケースは本当にわずかです。
田中:認知と獲得を同じ動画で達成できると考えている方も多いのですが、ここにも誤解があるのではないかと思います。TikTokのアルゴリズムではコンバージョンを重視してしまうと再生数が伸びなくなってしまい、バズが起こりにくくなります。
そのため、TikTokでは商品のベネフィットを動画フォーマットを活かす形で表現し、認知を獲得するために活用する。その上でTikTokの外にCVのための導線を用意していく、というのが現時点での最適解です。森さんも、TikTokのフィードでバズらせたあと、ファン向けに作ったLINE公式アカウントやInstagramアカウントに誘導し、ユーザーの熱量を高めながら、コンバージョンにつなげていますよね。
森:はい。TikTokを観て興味を持ち検索してくれたユーザーに向けて、先回りしてInstagramなどでUGCを作っておくことも大切です。TikTokはまだまだ検索文化が弱いので、他のプラットフォームにも受け皿を用意するようにしています。