若年層の獲得目的にTikTok for Businessを活用
MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、TikTokの広告ソリューションであるTikTok for Businessの活用を始めた経緯を教えてください。
堀内:TikTok for Businessの配信を本格的に開始したのは2021年の夏ごろでした。LINEマンガは元々幅広い年代の方にご利用いただいていることもあり、それまで年代別のターゲティングを細かく行っていませんでした。
そんな時、広告運用を支援いただいているアイレップさんと議論する中で、「LINEマンガの魅力を若年層へ伝えられるチャネルを確保する」という目標を両者で掲げました。そこから既存を含めた広告配信のチャネルを整理し、若年層へのアプローチはTikTok for Businessで重点的に行おうと決断しました。
MZ:TikTok for Businessの活用について、アイレップさんはどのような提案を行ったのでしょうか。
岩城:TikTokは縦型のショートムービーが特徴的なので、とにかくPDCAサイクルを回しながらTikTokに最適なクリエイティブを検証することを提案しました。
また、通常の広告配信だけでは成果を最大化できないと思い、TikTokクリエイターの動画を広告として第三者配信することができるSpark Adsの活用も勧めました。
認知から獲得までフルファネルでTikTokを活用
MZ:運用型のTikTok for BusinessとTikTokクリエイターの投稿を第三者配信するSpark Adsを 中心に活用していたのでしょうか。
堀内:そうですね。加えて、アプリ起動時に動画を配信できる「TopView」、広告リーチや動画視聴を最適化する運用型インフィード広告の「Brand Auction」も活用していました。これらのソリューションは、有名なアーティストのコラボマンガなど世の中の注目が大きく集まる作品の認知拡大を目的に活用しました。
MZ:獲得目的のTikTok for BusinessとSpark Adsは定常的に配信し、しかるべきタイミングで認知目的のTopViewやBrand Auctionを活用することで、認知から獲得までフルファネルでカバーしているんですね。
堀内:おっしゃる通りです。広告に投資できるリソースは限られるので、TopViewなど認知目的のソリューションは定常的なメニューと比較して利用頻度が少ないのが現状です。しかし、ここぞというときに活用することで一定の効果が得られているので、認知から獲得まで活用できるソリューションがTikTok for Businessには揃っていると感じています。
MZ:通常時はTikTok for BusinessとSpark Adsを活用しているとのことですが、どのようなKPIを設定しているのでしょうか。
堀内:基本的には、アプリの利用につながっているかを計測するためにDAUをKPIに置いています。新規ユーザーの獲得はもちろん、過去に利用していたユーザーのリテンション(復帰)も狙い、より多くの方にLINEマンガを日常的に利用いただくことを重要視しています。
Spark Ads活用に欠かせないクリエイター選定の秘訣とは?
MZ:ここからは、中長期に活用することで成果が得られているTikTok for BusinessとSpark Adsについてお聞きします。まずSpark Adsの活用時に意識していたことを教えてください。
高橋:Spark Adsの活用で一番意識していたのは、TikTokクリエイターの起用のバリエーションを増やすことです。最初は、マンガや映画などのコンテンツ紹介動画を投稿しているTikTokクリエイターを起用していました。普段投稿している動画と親和性が高く、LINEマンガの作品の世界観を的確に表現してくれるためです。
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高橋:ただ、これだけではマンガなどの特定のコンテンツが好きな方にばかりリーチしてしまい、それ以外の若年層にリーチするためには、キャスティングの工夫が必要だと感じました。
あるあるやモノマネなどのコント動画といった、いわゆるパフォーマンス系の動画を投稿しているTIkTokクリエイターたちを、マンガとはまた異なるジャンルの側面からリーチするために起用するようになりました。たとえば、TikTokクリエイターが普段投稿している動画の方向性に沿って、LINEマンガオリジナル作品を題材にしていただき、マンガの要素を入れたコントをしてもらうことで、作品の世界観を伝えつつ、動画としても楽しめるようにご依頼させていただきました。
これにより、普段マンガに興味のないユーザーにも違和感なくアプローチすることができ、リーチの拡大と新規ユーザーの獲得につなげることができました。コメントも「広告の中で一番おもしろい」「広告だけど全部見た」など、好意的なものが多かったです。
MZ:TikTokクリエイターを選定する際、どのような基準で選んでいるのでしょうか。
高橋:前提として作品とTikTokクリエイターの相性は意識しております。プロモーションする作品が決定した際に最初に想起した方や、普段の投稿と作品の内容の接着点が自然につなげることができる方を選ぶことが、大事だと考えています。
ユーザーやファンが見て、内容を理解するのに時間がかかったり、悪い意味での違和感を覚えたりする起用は避けています。
その他の点でいうと、動画のコメントを参考にしています。ファンの方からのコメントにきちんと返信していたり、交流を図っていたりするTikTokクリエイターは、とても信頼ができます。コメントからファン層や性質なども見えてくるので、定性的な部分のチェックも重要だと思います。
重要なのはクリエイティブの鮮度キープと動画の構成
MZ:続いて、TikTok for Businessを運用する際のポイントを教えてください。
米本:TikTok for Businessは、他プラットフォームの広告と比べクリエイティブが摩耗するスピードが早いという特徴があります。成果が良い広告でも、1週間から10日ほどで反応が悪くなるので、各クリエイティブのパフォーマンスを逐一モニタリングし、数字に変化が見えたらすぐ差し替えることが重要です。
MZ:効果の良いクリエイティブの共通点はありましたか。
米本:やはり若年層が多く集まるプラットフォームなので、若年層向けのマンガを訴求したクリエイティブの効果は高かったです。TikTokで反応の良いマンガのジャンルも見えてきたので、そのジャンルに関連した複数作品の広告を展開しました。
また、クリエイティブの構成にも共通点が見えてきました。TikTokは、動画を見た瞬間に興味のあり・なしを判断しているので、冒頭の数秒でアテンションが取れることが重要です。LINEマンガの広告では、冒頭に主人公の顔面アップや見せ場となるシーンを表示していました。
若年層の利用が増加、広告にも好意的
MZ:ここまでフルファネル、そして中長期的なTikTok for Businessの活用事例について聞きました。今回の活用によってどのような成果を得られたのか教えてください。
堀内:若年層にリーチでき、広告への反応も良く、LINEマンガの利用にもつながりました。LINEマンガでは作品へのコメント機能があり、「TikTokを見て来ました」というコメントがいくつもの作品で見られました。KPIのDAUも増加しているので、高く評価しています。
MZ:アイレップの岩城さんは、今回の成果が出た要因はどこにあると考えていますか。
岩城:企画段階からプラットフォームとコンテンツをハックする視点で協働できたのが成功の要因だと考えています。TikTokで流行している、人気のあるジャンル・動画、そしてプラットフォーム特性を理解しながら施策を実施し、定量・定性で評価をしながら、運用の知見を蓄積する。このPDCAサイクルを回せたからこそ、フルファネルで長期的な活用につながったと思います。
TikTokの流行を取り入れ、若年層へのアプローチを一層強化
MZ:最後に、今後の展望について教えてください。
堀内:認知から獲得までフルファネルでTikTok for Businessを活用してきたので、今後も新たな広告ソリューションなどにチャレンジしていきたいです。他社のマーケターが「そんなやり方があったんだ」と驚くような施策を実現できればと思います。
高橋:今後、TikTokでLINEマンガの作品やマンガ内のキャラクターを紹介する動画などをユーザーが自発的にアップしたくなるような動画のフォーマットを開発し、UGCを増やしていきたいです。
岩城:アイレップにとってLINEマンガの事例は最も先進的な取り組みで、たくさんの知見が得られました。一方で、まだまだ課題もあるので、そこはTikTok for Businessの社員の方からサポートを受けながら新しい提案をしていきたいです。
米本:TikTokは若年層が多いこともあり、流行の移り変わりが早いのでそこに素早く対応していきます。また、TikTokでは音声読み上げなど、新しい機能が登場しているので、そういった機能をいち早く取り入れたクリエイティブを提案したいです。