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特集:ターゲティングが嫌われる時代のシン・ターゲティング

なぜ「ターゲティング=気持ち悪い」になってしまったのか?進化するアドテクの使い方を考える

創造的破壊「Disruption」で考えるアプローチ

——TBWAの哲学であり方法論である「Disruption」の考え方では、どのようにターゲットを捉えていくのですか?

 我々は広告を作る会社ですが、自らのことを「Disruption Company」と紹介しています。ここで言う「Disruption」が意味するのは、「創造的破壊」。今の当たり前を疑って、疑って、疑って、それを破壊して新しいルールを作ろうというのがTBWAのDisruptionの考え方です。ここでは、この考え方に基づき、我々が普段プランニングをするときに行う3つのステップをご紹介したいと思います。

 最初は、どのようにそのビジネスを成長させていくか? という視点で市場を考えるのですが、このとき「Incremental Growth(漸進的成長)」と「Disruptive Growth(破壊的成長)」の2つの成長の捉え方を用います。Incremental Growthは徐々に大きくしていく成長で、たとえばミントタブレットなら、隣にあるガム、飴の市場の中で少しずつ自分たちの市場を広げていこう、という考え方ですね。ここがいわゆる従来のターゲティングにつながる部分になります。一方、もう1つのDisruptive Growthでは、これまでとは全然違う次元で市場を成長させるには? という視点で市場を見ていきます。

 たとえば、ミントタブレットの成長を既存の市場の外側で思い描いてみましょう。コロナ禍でリモートワークが増えた結果、打ち合わせが途切れなかったり、仕事のオンオフを切り替えるのが難しかったりする中で、今「3分の休憩」に投資をする流れがあります。ルームフレグランスやキャンドルが売れていたり、少しずつ飲めるキャップ付きのコーヒーが売れていたり、短時間でリフレッシュしたいと思っている人が急増している。そこで、ミントタブレットを「リフレッシュのためのツール」と捉えたら、途端に市場の可能性が広がりますよね。商品カテゴリーを超えたいわば「リフレッシュメント市場」が見えてきます。このように、まだ誰も目をつけていない、誰にも見向きもされていないところにフォーカスして、より大きな成長を狙うのです。

 そうして市場を捉えたら、2ステップ目で「Convention」を見つけていきます。Conventionというのは「今の常識」で、企業や業界、社会の怠慢を見つける作業とも言えます。みんなが当たり前と思っている物事の中には、様々な怠慢が引き起こしていることがたくさんあって、そのせいで生活者がまだ幸せになれていないところもたくさんあります。

 そこで見つけた「今の常識」をなくすことで、生活者がどういうふうに幸せになるか? を考えていくのが3ステップ目です。ポイントは、ブランドの成功ではなく、生活者を主役にした「Vision」を描くこと。ブランドは生活者の相棒であって、生活者が主役であり、ヒーローである、と捉えるとよいと思います。このVisionの考え方は、ターゲティングの在り方にも関係してくるはずです。実際に我々がこれをやるときは、左の壁に「Convention」を書き出し、右の壁に「Vision」を書いていきます。この3ステップで描いたビジョンを実現するために、マーケティングプランや広告プランなど具体的なアイデアに落とし込んでいく形ですね。

より具体的に“これからの広告の作り方”を聞いた後編いま世の中に求められているのはどんな広告?TBWA HAKUHODO細田氏が語る、3つの広告の作り方』も、近日公開予定です。

進化するアドテクをどう使うかは我々次第

——今号のテーマは、「ターゲティングが嫌われる時代のシン・ターゲティング」です。最後に、これからのターゲティングの在り方についてご意見をうかがえますか?

 これから先もアドテクは進化を続け、データを使って広告の効率を上げていくという流れが止まることもないでしょう。私は、それ自体が間違えているとは思っていません。ただ、「ターゲティングでできること」と「すべきかどうか?」は分けて考える必要があります。冒頭にもお話ししましたが、アドテクを使うことで「生活者をコントロールできる」という錯覚に陥っていることが問題であって、どんなにテクノロジーが発展しても、企業側が一方的に生活者をコントロールすることはできないという前提に立つことがまず大事だと思います。そうした過信が一方的な広告配信につながったり、嫌悪感を抱かせるような表現につながったりするのではないでしょうか。

 今のターゲティングのやり方に限界を感じていたり、あるいは何かしらの罪悪感を覚えていたりする人は、とても多いと思います。ですが、本来「相手のことを理解できる」というのは、よい方向へ使えるはずです。たとえば、ホテルで受ける接客は、究極のデータドリブンなパーソナライズとターゲティングですよね。受け手のことを第一に思い、受け手が好きなことを提供する。テクノロジーを使って、生活者を幸せにするための広告やマーケティングに向かっていけばよいですね。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2022/08/25 08:30 https://markezine.jp/article/detail/39712

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