トレンドは「ソーシャルグッド」、IR・HR観点での活用も広がる
──今年5~6月にはABEMAで「SSFF & ASIA 2022 BRANDED SHORTS」ノミネート作品の配信が行われたそうですが、ノミネート作品から見えるコンテンツの時流や、「BRANDED SHORTS」が始まってから6年間での変化などがあれば教えていただければと思います。
別所:昨今のブランデッドムービーでは、ソーシャルグッドなメッセージの発信、つまりSDGsやESG投資を意識した、ステークホルダー向けの情報発信が増えています。昨年「Branded Shorts of the Year」(ナショナルカテゴリー)を受賞したユニクロの作品などが代表例です。自分たちが生産した洋服がどういう生涯を送るのか、プロダクトを売った先に光を当てていました。
別所:また今年の受賞作品であるNETGEAR Japanの作品は、ゲーマーに焦点を当て、世の中でネガティブに捉えられがちな部分を捉えなおし、ソーシャルグッドな気づきを与えてくれました。
別所:このように社会的な責任に対する姿勢や哲学を表現する場として使われるようになったのは、ここ1~2年のトレンドだと思います。
山田:商品を訴求するPRだけではなく、IRやHRの観点でも有効なブランデッドムービーが増えてきた印象です。活用の目的が多岐にわたってきたというのは、新しい潮流です。
コンテンツは「選んで見る」時代、勝負は15秒
──ここまでは企業の活用目的を伺ってきましたが、ブランデッドムービーの受け手が求めているものはなんでしょうか。
別所:僕は、ショートフィルムに限らず結局エンターテインメントに求めることは「Better Life」だと思うんです。ただ食べて寝て生きていくだけじゃなくて、どう五感を動かして人生を豊かにしていくか。より良い人生のヒントみたいなものをもらう。もしくは、誰かのすごい「Another Life」を見せてもらうことで、自分のBetter Lifeに繋がるものをもらえる。これに尽きるような気がしています。ショートフィルムもゲームも、ABEMAさんのコンテンツも、エンターテインメント全体に言えることだと思います。
山田:まさにそうだと思います。近年ますます、コンテンツは「選んで見る」時代になりました。昔はなんとなくテレビの前にいたら、なんとなくおもしろいものがあっていつの間にか好きになる時代でしたが、今は違う。コンテンツを視聴者にどう選んでもらうようにするか、あるいは自然とそれを受けとってもらうかが大事。なので引きのあるブランデッドムービーを作ることが、新しい手法として目立ってきたのかなと思いますね。
別所:人って大体5~15秒で、見たものが自分と関係あるかどうかを認知判断するらしいですよ。僕はハリウッド映画でデビューさせていただいたのですが、2時間半の映画も15秒単位で(シーンを)考えるんです。
だから、テレビCMの尺である15秒は科学的にもおそらく適切な時間で、視聴者はその間に興味があるか判断して離脱する。それは、広告業界の先輩たちが科学されてきたんだろうなと思うんです。ブランデッドムービーも尺の自由度はあるものの、15秒でいかに惹きつけるかが重要です。