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Visual Voice別所哲也氏とABEMA山田氏に聞く!ブランデッドムービーの価値とこれから

 マーケティング領域において「ブランデッドムービー」の可能性が注目を浴びている。日本で唯一の国際的なブランデッドムービーの部門、BRANDED SHORTSを持つ映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」では、今年687本ものブランデッドムービーがエントリーされた。同映画祭を主催し、自身が代表を務める株式会社ビジュアルボイスでブランデッドムービーの制作も請け負う俳優・別所哲也氏は、ブランデッドムービーについて「企業のマーケティングツールの中心に存在する」とまで評している。年間100本のブランデッドムービーを制作し、プラットフォームとして配信も行うABEMA山田陸氏にも登場いただき、ブランデッドムービーが企業マーケティングにおいて持つ価値とトレンド、これからの展開について伺った。

自由な尺の長さで、ブランドのストーリーを届ける

──はじめに、ブランデッドムービーとはなんでしょうか。従来のテレビCMとの違いなど、特徴を教えてください。

山田:ブランデッドムービーとは、企業がブランディングを目的に制作する映像のことです。従来のテレビCMとの一番の違いは、尺の自由度です。テレビCMは15秒や30秒という限られた尺の中で商材を印象付けるために、とにかく商材の名前を訴えるといったクリエイティブになりがちでした。一方ブランデッドムービーは自由な長さの映像の中で、ブランドの背景まで伝えることができるのが特徴です。

株式会社AbemaTV 広告本部 本部長 山田陸氏
2011年株式会社サイバーエージェントに入社。2015年にアメーバ事業本部(現メディア統括本部)メディアディベロップメントディビジョン 統括、株式会社サイバーエージェント 執行役員に就任。2017年10月より株式会社AbemaTV ビジネスディベロップメント本部 本部長に就任。2018年12月に株式会社サイバーエージェント 取締役に就任。2020年12月より常務執行役員に就任。

──別所さんが代表を務めるショートショート フィルムフェスティバル & アジア(以下、SSFF & ASIA)では最も優れたブランデッドムービーを表彰する「Branded Shorts of the Year」を選定されていますよね。またビジュアルボイスでは、ブランデッドムービーの制作もされています。別所さんは、ブランデッドムービーをどのようなものだと捉えていますか?

別所:僕が主催する映画祭では25分以内のショートフィルムが毎年世界から5,000本以上集まります。その中で、ブランデッドムービーの登場は予想だにしなかった嬉しい流れでした。

 企業が物語を発信するコミュニケーションの一つとして、ショートフィルムに光が当たり始めたのが、15年ほど前。世界的な潮流として広告祭が登場し、企業のコミュニケーションとしてのブランデッドムービーが制作され始めました。

 歴史的には、BMW社が世界中のBMWファンとつながるためにショートフィルムを作ったのが先駆けです。マドンナも出演したそのショートフィルムは「こんな人たちにBMWに乗ってほしい」というメッセージを載せて制作され、有効なダイレクトマーケティングツールになりました。

 日本国内でも15年ほど前から「CMの続きはWebで」という潮流が生まれ、ブランデッドムービーの流れにつながったと思います。これからの企業のマーケティングツールとして中心に存在するものが、動画コミュニケーションとしてのブランデッドムービーではないでしょうか

ショートショート フィルムフェスティバル & アジア代表/株式会社ビジュアルボイス 代表取締役 別所哲也氏
1965年生まれ。1999年より、米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」の代表を務める。長年ショートフィルムの発掘と発信を行ってきた経験を活かし、企業や団体がより効果的なブランディングを目的とした動画を制作することができる基盤を確立させるために、映画祭内に「BRANDED SHORTS」という公式部門を2016年に立ち上げた。優れた映像作品を紹介・表彰するほか、動画マーケティングやブランディングに有効なクリエイティブに関して知見が深いゲストを国内外から招聘し、カンファレンスを実施するなど、同部門がアジアにおけるブランデッドムービーの発信地となることを目指している。

──登場したのは15年も前なんですね。近年のブランデッドムービーへのニーズの高まりには、企業のどんな課題や目的があったのでしょうか。

別所:山田さんがおっしゃる通り、15秒や30秒のテレビCMのフォーマットでは伝えきれないものがある。さらにインターネットが生まれて、コミュニケーションのツールが変化したので、なにも15秒、30秒である必然性がない。この二つが背景にあると思います。

山田:スマートフォンの進化によるメディア接触時間の変化や、コンテンツ・情報量の増加に伴い、消費者は忙しくなったと思います。コンテンツや情報の取捨選択がより容易になった今の時代においては、意図なく強制的に見せるフォーマットとしての広告だけでは届かない層が増えてきたのではないかと考えています。

 企業のマーケターの方たちもこの状況に危機感を持ち始めたのが大きいと思います。

トレンドは「ソーシャルグッド」、IR・HR観点での活用も広がる

──今年5~6月にはABEMAで「SSFF & ASIA 2022 BRANDED SHORTS」ノミネート作品の配信が行われたそうですが、ノミネート作品から見えるコンテンツの時流や、「BRANDED SHORTS」が始まってから6年間での変化などがあれば教えていただければと思います。

別所:昨今のブランデッドムービーでは、ソーシャルグッドなメッセージの発信、つまりSDGsやESG投資を意識した、ステークホルダー向けの情報発信が増えています。昨年「Branded Shorts of the Year」(ナショナルカテゴリー)を受賞したユニクロの作品などが代表例です。自分たちが生産した洋服がどういう生涯を送るのか、プロダクトを売った先に光を当てていました。

「Branded Shorts of the Year 」ナショナルカテゴリー(2021)受賞作品
【短編映画】服の旅先―日本発のリサイクル服が、難民の少女へ届くまで。知られざる舞台裏を初公開

別所:また今年の受賞作品であるNETGEAR Japanの作品は、ゲーマーに焦点を当て、世の中でネガティブに捉えられがちな部分を捉えなおし、ソーシャルグッドな気づきを与えてくれました。

「Branded Shorts of the Year」ナショナルカテゴリー(2022)受賞作品
短編映画「AIM」~NETGEAR Japan Presents~

別所:このように社会的な責任に対する姿勢や哲学を表現する場として使われるようになったのは、ここ1~2年のトレンドだと思います

山田:商品を訴求するPRだけではなく、IRやHRの観点でも有効なブランデッドムービーが増えてきた印象です。活用の目的が多岐にわたってきたというのは、新しい潮流です。

コンテンツは「選んで見る」時代、勝負は15秒

──ここまでは企業の活用目的を伺ってきましたが、ブランデッドムービーの受け手が求めているものはなんでしょうか。

別所:僕は、ショートフィルムに限らず結局エンターテインメントに求めることは「Better Life」だと思うんです。ただ食べて寝て生きていくだけじゃなくて、どう五感を動かして人生を豊かにしていくか。より良い人生のヒントみたいなものをもらう。もしくは、誰かのすごい「Another Life」を見せてもらうことで、自分のBetter Lifeに繋がるものをもらえる。これに尽きるような気がしています。ショートフィルムもゲームも、ABEMAさんのコンテンツも、エンターテインメント全体に言えることだと思います。

山田:まさにそうだと思います。近年ますます、コンテンツは「選んで見る」時代になりました。昔はなんとなくテレビの前にいたら、なんとなくおもしろいものがあっていつの間にか好きになる時代でしたが、今は違う。コンテンツを視聴者にどう選んでもらうようにするか、あるいは自然とそれを受けとってもらうかが大事。なので引きのあるブランデッドムービーを作ることが、新しい手法として目立ってきたのかなと思いますね。

別所:人って大体5~15秒で、見たものが自分と関係あるかどうかを認知判断するらしいですよ。僕はハリウッド映画でデビューさせていただいたのですが、2時間半の映画も15秒単位で(シーンを)考えるんです。

 だから、テレビCMの尺である15秒は科学的にもおそらく適切な時間で、視聴者はその間に興味があるか判断して離脱する。それは、広告業界の先輩たちが科学されてきたんだろうなと思うんです。ブランデッドムービーも尺の自由度はあるものの、15秒でいかに惹きつけるかが重要です

ブランデッドムービーは「ストック型」コンテンツとしても有効

──これまでのお話にもヒントがちりばめられていましたが、改めてブランデッドムービーが注目を浴びている背景や、なぜ今企業が取り組むべきなのか教えていただければと思います。

山田:タイムパフォーマンスに対しての意識が上がってきた今、従来の広告ではなく「コンテンツとして見せること」でマーケティングのチャンスが高まります。なので、新しい気づきを与えるコンテンツを作り、その中でブランドメッセージを訴求する手法が注目されています。

 またテレビCMはフロー型で、タレントさんとの契約期間や楽曲の問題でいつか使えなくなることが多い。一方、ブランデッドムービーはストックしていくものなので、たとえば10年活用できる動画を作ればコスパはいいんです。そういった背景もあって、IRやHRの予算を投資する企業も増えていると考えています。

──そんな中で、ABEMAではどのような取り組みをされているのでしょうか。

山田:ABEMAは開局から今年で6年になります。開局当初からオリジナルでも番組を作ってきた中で、番組内で企業の紹介やインフォマーシャルを作ってきました。これが弊社のブランデッドムービーの走り出しです。開局から2年ほど経つと、企業が自分たちで「番組ごと」作りたいという要望が増え、ABEMAによる企業のブランデッドムービーの制作が始まりました。現在は年間100本近くのブランデッドムービーを番組やインフォマーシャルとして作っています。

──年間100本はすごいですね。企業のニーズがますます高まる中で、今後はどのように展開していく予定ですか。

山田:別所さんのSSFF & ASIAとの取り組みもそうですが、ブランデッドムービー市場をどんどん盛り上げて、新しいマーケティングの手法を編み出していきたいですね。強みのある制作企業や、映画監督などのクリエイターとのコラボレーションを加速して、従来とはまた違う新しいクリエイティブを生み出していければと思います。

別所:ショートフィルムの真髄には「ノールールがルール」というのがあるんですが、ブランデッドムービーも従来の広告モデルの延長線とは大きく異なるところがあると思います。テレビメディアに風穴を開けたABEMAという存在が、またブランデッドムービーのあり方も変えていくのではないでしょうか。

山田:我々の強みは、作品を多くの人に提供することができ拡散力を持つ配信プラットフォームであることだと思っています。ブランデッドムービーは、主体的に見に来た方にはもちろん伝わりますが、いかに受動的に見てもらうかの間口を広げることも大事です。その役割をリニア型のサービスを提供する弊社が担っていくことで、より多くの方に届くのではと思います。

ブランデッドムービーを、動画コミュニケーションの中心に

──最後に、ここ数年で変化するデジタルマーケティングにおいて、ブランデッドムービーがどのような価値を生んできたのか、そして今後どのような展望があるのかについて伺えればと思います。

別所:この記事を読まれる方は、きっと会社で宿題をもらっていて、事業や商品をお客様に伝えるにあたって、どういうコミュニケーションをとればよいか試行錯誤されていると思います。コミュニケーションの根源的なことは、ストーリーテリングだと思います。「いいものを作っていたらきっと伝わる」という美学をどこかまだ僕たちも持っていると思うのですが、実はコミュニケーションはまず伝えないといけない。その「伝える」ためのコミュニケーションの中心に、ブランデッドムービーがあり、企業だけでなく、人と人を繋ぐコミュニケーションの中心になるような気がしています。

 ぜひ皆さんにもブランデッドムービーを作ったり、試行錯誤したりする仲間になっていただき、何か困ったことがあれば相談してほしいと思います。

山田:消費者やユーザー、従業員も含め、ロイヤリティの高いファンをいかに増やすかが、企業の存続には重要です。そのための施策の一つとして、有効打になりうるのがブランデッドムービーだと確信しています。瞬発力があるものではないからこそ、企業の方は投資判断がしづらいかもしれません。今後ブランデッドムービーは「やって当たり前」という状態まで、別所さんの会社とも協力しながら市場を盛り上げていきたいと思います。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/10/17 10:00 https://markezine.jp/article/detail/39854