自由な尺の長さで、ブランドのストーリーを届ける
──はじめに、ブランデッドムービーとはなんでしょうか。従来のテレビCMとの違いなど、特徴を教えてください。
山田:ブランデッドムービーとは、企業がブランディングを目的に制作する映像のことです。従来のテレビCMとの一番の違いは、尺の自由度です。テレビCMは15秒や30秒という限られた尺の中で商材を印象付けるために、とにかく商材の名前を訴えるといったクリエイティブになりがちでした。一方ブランデッドムービーは自由な長さの映像の中で、ブランドの背景まで伝えることができるのが特徴です。
──別所さんが代表を務めるショートショート フィルムフェスティバル & アジア(以下、SSFF & ASIA)では最も優れたブランデッドムービーを表彰する「Branded Shorts of the Year」を選定されていますよね。またビジュアルボイスでは、ブランデッドムービーの制作もされています。別所さんは、ブランデッドムービーをどのようなものだと捉えていますか?
別所:僕が主催する映画祭では25分以内のショートフィルムが毎年世界から5,000本以上集まります。その中で、ブランデッドムービーの登場は予想だにしなかった嬉しい流れでした。
企業が物語を発信するコミュニケーションの一つとして、ショートフィルムに光が当たり始めたのが、15年ほど前。世界的な潮流として広告祭が登場し、企業のコミュニケーションとしてのブランデッドムービーが制作され始めました。
歴史的には、BMW社が世界中のBMWファンとつながるためにショートフィルムを作ったのが先駆けです。マドンナも出演したそのショートフィルムは「こんな人たちにBMWに乗ってほしい」というメッセージを載せて制作され、有効なダイレクトマーケティングツールになりました。
日本国内でも15年ほど前から「CMの続きはWebで」という潮流が生まれ、ブランデッドムービーの流れにつながったと思います。これからの企業のマーケティングツールとして中心に存在するものが、動画コミュニケーションとしてのブランデッドムービーではないでしょうか。
──登場したのは15年も前なんですね。近年のブランデッドムービーへのニーズの高まりには、企業のどんな課題や目的があったのでしょうか。
別所:山田さんがおっしゃる通り、15秒や30秒のテレビCMのフォーマットでは伝えきれないものがある。さらにインターネットが生まれて、コミュニケーションのツールが変化したので、なにも15秒、30秒である必然性がない。この二つが背景にあると思います。
山田:スマートフォンの進化によるメディア接触時間の変化や、コンテンツ・情報量の増加に伴い、消費者は忙しくなったと思います。コンテンツや情報の取捨選択がより容易になった今の時代においては、意図なく強制的に見せるフォーマットとしての広告だけでは届かない層が増えてきたのではないかと考えています。
企業のマーケターの方たちもこの状況に危機感を持ち始めたのが大きいと思います。