ユーザビリティ×サスティナビリティ×ブランディングの関係性
このほかに、川合氏が紹介したのは「アクアレーベル」と「エリクシール」の事例。
アクアレーベルは、コロナ禍で生活者の健康や美容への意識が大きく変化したことに着目し、それを製品開発からプロダクトデザイン、コミュニケーションまで落とし込んでいった。「生活者の価値観を分析することで、美を新たな形で表現・提案することができたと思っています」と、川合氏は手応えを述べた。

次に「エリクシール」の事例においては、ユーザビリティとサスティナビリティ、そしてブランディングの関係性について、自らの考えを話した。
「エリクシール」は1983年に誕生、来年で発売から40周年を迎える資生堂の老舗ブランド。2012年から詰め替えに対応したリフィルを販売しており、資生堂のサスティナビリティ推進の柱にもなっているブランドである。

「こうした取り組みの背景には、エリクシールで新しいスキンケア体験を提供することで、生活者のサスティナビリティへの意識を高めたいという目的があります。サスティナビリティへの対応やプロダクトの使用性も、ブランド体験の構成に欠かせない条件です。私は主に商品パッケージをメインにクリエイティブをディレクションしていますが、こうしたブランドのフィロソフィーや考え方はデザインにも表れているべきだと考えています」(川合氏)
資生堂が追求する「美しさ」とは何か
最後に川合氏は、サスティナビリティとユーザビリティに関連する取り組みとして、資生堂の「SHISEDO UNIVERSAL BEAUTY DESIGN」という活動を紹介した。
「使いやすさ、環境配慮、デザインの美しさ。これらは、一見すると相反するもののように思われるかもしれません。しかし、私たちは、美しさとは単なる見た目のことだけでなく、商品を手に取ったあらゆる人がストレスなく使えること、使っていて気持ちが高まること、地球の未来も考えたものであること、これらすべてを備えたものであると考えています。その考えのもと行っているのが『SHISEDO UNIVERSAL BEAUTY DESIGN』という活動です」(川合氏)
「SHISEDO UNIVERSAL BEAUTY DESIGN」では、ユニバーサルデザインやサスティナビリティに関する幅広い知識を得ることを目的としたワークショップの開催や、感性計測の研究、カスタマーセンターと連携して使いやすい容器を考察するなど様々な取り組みを行っている。感覚的に心地よく使えるデザイン、五感に訴えるデザインを追求しながら、美しさと地球への負荷のトレードオフをなくすことも目指しており、ここで得られた知見を資生堂グループの各部門に共有する機会も設けているという。

川合氏は、Product Creative Directorとして体験デザインを創造する自身の、そして資生堂クリエイティブとしての目標を次のように述べ、講演を結んだ。
「これからも市場はどんどん変化し、生活者のライフスタイルや意識も変わっていくでしょう。こうした時代の流れ、風の流れを常にキャッチし、マーケターをはじめとする様々なプロフェッショナルとしっかり関わりながら、新たな美の体験の創造を追求していきたいと思います」(川合氏)