コネクテッドテレビ広告の在庫量は拡大傾向
佐々(Adjust):「CTV広告の最新トレンドと活用法」というテーマの下、放送業界で新しい道を切り拓くお三方にお集まりいただきました。まずは簡単なご経歴と、現在担当されている業務についてお話しください。
綾瀬(AbemaTV):私は元々サイバーエージェントで「アメーバブログ」のマネタイズを担当していました。その後、AbemaTVに出向という形でジョインし、現在は「ABEMA」の動画広告を企画開発する立場にいます。
柴崎(TVer):私は2015年に入社した東急エージェンシーで、テレビバイイングの業務に従事していました。2019年にプレゼントキャスト(現TVer)へ出向し、マーケティングチームを経て2022年7月よりコネクテッドテレビに特化したチームのマネージャーを務めています。
野村(フジテレビジョン):私はNTTドコモでワンセグを担当していたご縁から、2012年にフジテレビジョンへ転職しました。現在は「FOD」の責任者を務めています。
佐々(Adjust):コネクテッドテレビとは「インターネットにつながっているテレビデバイス」のことです。皆様はそこに流れるストリーミングサービスやOTT(※)を仕掛けながら、放送業界を進化させていらっしゃいます。各社のサービスについて、最近の傾向とともに紹介いただけますか?
※Over The Topの略称。インターネット回線によってアクセスできるコンテンツ配信サービスを指す
綾瀬(AbemaTV):ABEMAは、2016年4月に本開局した動画配信サービスです。2022年で6周年を迎えましたが、最近では話題になった格闘技の大会「Yogibo presents THE MATCH 2022」をはじめ、サッカーのプレミアリーグやメジャーリーグといったライブコンテンツの放送や、オリジナルコンテンツの制作に力を入れています。
コネクテッドテレビ広告の在庫量はここ1年で拡大傾向にあり、現在は全デバイスのうち32%をコネクテッドテレビ広告が占めています(2022年10月時点)。モバイルに次いで2番目に大きい割合です。
他デバイスより視聴時間が長いコネクテッドテレビ
柴崎(TVer):「TVer」は民放テレビ局が放送した600番組以上のコンテンツを無料で配信するサービスです。2019年にコネクテッドテレビでのVODサービスを開始した当時、コネクテッドテレビを通じたTVerの視聴割合は1.9%でした。それが2022年には30%目前にまで伸長しているほか、15~19歳のティーン層のMUB(月間ユニークブラウザ数)が急増しています。
野村(フジテレビジョン):FODはAVOD(広告付きのVOD)、SVOD(サブスクリプション型のVOD)、TVOD(都度課金型のVOD)、BOOK(雑誌・コミック)を含めたエンタメサービスの集合体です。
AbemaTVさんやTVerさんと同様、コネクテッドテレビでのFOD視聴時間は大きく伸長しており、全体の4割を占めています。ユニークブラウザ数でいうと、32.7%まで伸びてきている状況です。またコネクテッドテレビでの視聴時間はほかのデバイスよりも10分ほど長いため、広告接触機会も多いと言えます。
佐々(Adjust):最近コネクテッドテレビの話題を耳にする機会が増えたと実感しています。コネクテッドテレビの広告市場はどのような盛り上がりを見せているのでしょうか?
綾瀬(AbemaTV):AJA/SMN/デジタルインファクトの3社が実施した広告市場調査では、この4、5年で市場規模が5倍ぐらいになるという予測もあります。テレビの視聴データを使ったビジネスを展開されているSMNさんの発表によると、同社が扱えるコネクテッドテレビの台数は、直近の2年で2倍まで増加し、1,000万近くになっているそうです。
佐々(Adjust):アメリカのコネクテッドテレビ広告市場を見ると、2021年時点で2兆円弱、2024年には4兆円規模になると言われています(出典:eMarketer, Oct 2021)。
野村(フジテレビジョン):アメリカでは地上波の直接受信世帯が1割前後で、多くの方はケーブルテレビ経由で地上波の番組を見ていました。ところが最近、ケーブルテレビがコネクテッドテレビに置き換わっていて、コネクテッドテレビで地上波放送を視聴できるんです。アメリカでは年間の8割に相当する広告在庫を期の最初に売ってしまうので、地上波セールスの45%が既にコネクテッドテレビに流れこんでしまっているという背景があります。
佐々(Adjust):産業構造が日本とは異なるというわけですね。
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