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ABEMA、TVer、FODの担当者が語るCTV広告の現在地【Japan App Summit】

 2022年10月、AdjustとLiftofftは独自調査の結果をまとめた「モバイルアプリトレンド 2022:日本版」をリリース。リリースにともない「Japan App Summit 2022」を開催した。「CTV広告最新トレンドと活用法」と題されたセッションには、OTTサービスの主要プレーヤーであるAbemaTV、TVer、フジテレビジョン(FOD)の3社が登壇。アプリマーケターに向けて、コネクテッドテレビの市場観と広告活用のポイントを語った。本稿ではその内容をレポートする。

コネクテッドテレビ広告の在庫量は拡大傾向

佐々(Adjust):「CTV広告の最新トレンドと活用法」というテーマの下、放送業界で新しい道を切り拓くお三方にお集まりいただきました。まずは簡単なご経歴と、現在担当されている業務についてお話しください。

Adjust ゼネラルマネージャー 佐々直紀氏
Adjust ゼネラルマネージャー 佐々直紀氏

綾瀬(AbemaTV):私は元々サイバーエージェントで「アメーバブログ」のマネタイズを担当していました。その後、AbemaTVに出向という形でジョインし、現在は「ABEMA」の動画広告を企画開発する立場にいます。

AbemaTV シニアプロダクトマネージャー 綾瀬⿓⼀氏
AbemaTV シニアプロダクトマネージャー 綾瀬⿓⼀氏

柴崎(TVer):私は2015年に入社した東急エージェンシーで、テレビバイイングの業務に従事していました。2019年にプレゼントキャスト(現TVer)へ出向し、マーケティングチームを経て2022年7月よりコネクテッドテレビに特化したチームのマネージャーを務めています。

TVer サービス事業本部 コネクテッドTVタスク タスクマネージャー 柴崎孝仁氏
TVer サービス事業本部 コネクテッドTVタスク タスクマネージャー 柴崎孝仁氏

野村(フジテレビジョン):私はNTTドコモでワンセグを担当していたご縁から、2012年にフジテレビジョンへ転職しました。現在は「FOD」の責任者を務めています。

フジテレビジョン ビジネスセンター事業部 部⻑職 PF担当 野村和⽣氏
フジテレビジョン ビジネスセンター事業部 部⻑職 PF担当 野村和⽣氏

佐々(Adjust):コネクテッドテレビとは「インターネットにつながっているテレビデバイス」のことです。皆様はそこに流れるストリーミングサービスやOTT(※)を仕掛けながら、放送業界を進化させていらっしゃいます。各社のサービスについて、最近の傾向とともに紹介いただけますか?

※Over The Topの略称。インターネット回線によってアクセスできるコンテンツ配信サービスを指す

綾瀬(AbemaTV):ABEMAは、2016年4月に本開局した動画配信サービスです。2022年で6周年を迎えましたが、最近では話題になった格闘技の大会「Yogibo presents THE MATCH 2022」をはじめ、サッカーのプレミアリーグやメジャーリーグといったライブコンテンツの放送や、オリジナルコンテンツの制作に力を入れています。

 コネクテッドテレビ広告の在庫量はここ1年で拡大傾向にあり、現在は全デバイスのうち32%をコネクテッドテレビ広告が占めています(2022年10月時点)。モバイルに次いで2番目に大きい割合です。

他デバイスより視聴時間が長いコネクテッドテレビ

柴崎(TVer):「TVer」は民放テレビ局が放送した600番組以上のコンテンツを無料で配信するサービスです。2019年にコネクテッドテレビでのVODサービスを開始した当時、コネクテッドテレビを通じたTVerの視聴割合は1.9%でした。それが2022年には30%目前にまで伸長しているほか、15~19歳のティーン層のMUB(月間ユニークブラウザ数)が急増しています。

野村(フジテレビジョン):FODはAVOD(広告付きのVOD)、SVOD(サブスクリプション型のVOD)、TVOD(都度課金型のVOD)、BOOK(雑誌・コミック)を含めたエンタメサービスの集合体です。

 AbemaTVさんやTVerさんと同様、コネクテッドテレビでのFOD視聴時間は大きく伸長しており、全体の4割を占めています。ユニークブラウザ数でいうと、32.7%まで伸びてきている状況です。またコネクテッドテレビでの視聴時間はほかのデバイスよりも10分ほど長いため、広告接触機会も多いと言えます。

佐々(Adjust):最近コネクテッドテレビの話題を耳にする機会が増えたと実感しています。コネクテッドテレビの広告市場はどのような盛り上がりを見せているのでしょうか?

綾瀬(AbemaTV):AJA/SMN/デジタルインファクトの3社が実施した広告市場調査では、この4、5年で市場規模が5倍ぐらいになるという予測もあります。テレビの視聴データを使ったビジネスを展開されているSMNさんの発表によると、同社が扱えるコネクテッドテレビの台数は、直近の2年で2倍まで増加し、1,000万近くになっているそうです。

佐々(Adjust):アメリカのコネクテッドテレビ広告市場を見ると、2021年時点で2兆円弱、2024年には4兆円規模になると言われています(出典:eMarketer, Oct 2021)。

野村(フジテレビジョン):アメリカでは地上波の直接受信世帯が1割前後で、多くの方はケーブルテレビ経由で地上波の番組を見ていました。ところが最近、ケーブルテレビがコネクテッドテレビに置き換わっていて、コネクテッドテレビで地上波放送を視聴できるんです。アメリカでは年間の8割に相当する広告在庫を期の最初に売ってしまうので、地上波セールスの45%が既にコネクテッドテレビに流れこんでしまっているという背景があります。

佐々(Adjust):産業構造が日本とは異なるというわけですね。

マーケター必見!ベンチマークとインサイトを提供するレポート「モバイルアプリトレンド 2022:日本版」

ゲーム、Eコマース、フィンテック、マッチングアプリ、コネクテッドテレビに関する詳細かつ実用的な分析調査の結果を解説しています。レポートはAdjustのWebサイトからダウンロードしてご確認ください。

CTV広告経由のアプリインストール率はモバイル広告の4倍

佐々(Adjust):コネクテッドテレビ広告の特徴として「圧倒的なオーディエンス」「一対多」「大画面」「高い視聴完了率」「デュアルスクリーニング」「デジタル(ターゲティングと計測)」の6つが挙げられます。これらの特徴に対する皆様のご意見をお聞かせください。

綾瀬(AbemaTV):大画面でしっかり訴求できる点は大きな特徴ですね。10年前の主流は32インチでしたが、@DIMEの記事によると今は55インチが2割と、大画面化が加速しているようです。「ネットコンテンツを楽しむためにテレビデバイスを購入する人は、大型テレビでの視聴傾向が高い」という当社のアンケート結果もあります。

 また、モバイルデバイスに比べてコンテンツを見る時間が長い点もコネクテッドテレビの特徴です。当社のデータでは、モバイルデバイスより138%視聴時間が長く、視聴中に見る広告も離脱が少ない傾向が見られます。60秒を超える広告の場合も完視聴率は90%を超えているんです。

柴崎(TVer):当社でも同様の傾向が見られます。コネクテッドテレビでは番組・広告ともに最後まで再生される完視聴率が高いです。専念視聴する人が多いので、広告も受け入れられやすいのでしょう。

綾瀬(AbemaTV):デュアルスクリーンも特徴的ですよね。コネクテッドテレビでコンテンツを視聴する際、スマホを手元に置く人は多いです。当社が実施した調査によると、コネクテッドテレビの視聴をきっかけに検索した人の49%は「リアルタイムで検索した」と回答していました。コンテンツを見終わるまで待つのではなく、途中で知ろうとする意識が強いようです。

佐々(Adjust):アプリマーケターがコネクテッドテレビ広告を活用する意義は、どんなところにあるのでしょうか?コネクテッドテレビの特徴を踏まえて解説いただきたいです。

綾瀬(AbemaTV):「モバイル広告経由のモバイルアプリインストール率を1とすると、コネクテッドテレビ広告経由のモバイルアプリインストール率は4倍」という実績が当社では出ています。コネクテッドテレビ広告の特徴である、気になった時にその場ですぐインストールできるインタラクティブ性や、シームレスな広告体験が数値として表れているのではないでしょうか。

番組と連動したクリエイティブ制作が効果的

綾瀬(AbemaTV):また、アンケートベースで保険商材・自動車関連商品・電子書籍サービスのブランドリフト効果を測ったところ、どの商材においても「広告認知率」と「検索実績」がモバイルよりコネクテッドテレビの方が高かったです。専念視聴される方が多いコネクテッドテレビならではの結果だと感じます。

 今あえてネットに接続可能なテレビを買って、コネクテッドテレビ上で各動画サービスのコンテンツを視聴している方の多くは、一般的な地上波視聴者よりも比較的可処分所得の高い層である傾向が当社のアンケート結果でも見られます。そうしたユーザー像を意識しながら、合いそうな商材があればアプリマーケターの方にもチャレンジしていただきたいですね。

柴崎(TVer):当社では、アンケートデータを基に広告のターゲティング配信を行っています。地上波のテレビCMでは幅広い認知の獲得を狙い、同時期にTVerでは商圏エリアを絞った広告配信を行うことで、相乗効果を狙った事例もあります。

 共視聴や大画面由来の視認性の高さは、やはりテレビデバイスならではの良さだと思います。そこにインターネットの力が宿り、データの可視化を実現したものがコネクテッドテレビです。今後はテレビCMとコネクテッドテレビ広告を駆使したハイブリッドなアプローチが広まっていくのではないでしょうか。

佐々(Adjust):コネクテッドテレビ広告の効果を高めるポイントについて教えてください。

野村(フジテレビジョン):FODでは、番組コンテンツと連続性のある広告クリエイティブを作ったことがあります。同じ広告を何回も配信するとユーザーに嫌がられてしまうため、3パターンほど用意しました。フリークエンシーコントロールによって「2回目のユーザーには1回目と違うパターンを配信する」など、広告効果を高める取り組みに注力しています。 

佐々(Adjust):ユーザーが過去に視聴したデータを参照できるコネクテッドテレビならではの取り組みですね。

コネクテッドテレビ広告のパフォーマンスは、Adjustの「CTV Advision」で計測できます!

「CTV Advision」を活用すると、コネクテッドテレビ広告の効果やROIを可視化でき、キャンペーンのパフォーマンスを最大化することが可能になります。CTV Advisionの詳細はjapan-sales@adjust.comまでお問い合わせください。

広告のアシスト効果を可視化する

綾瀬(AbemaTV):コネクテッドテレビ広告には様々な活用方法がありますが、やはりクリエイティブの設計を緻密に考える必要はあると思います。QRコードを使った展開1つとっても、単純にクリエイティブにQRコードを入れるだけでは成果につながりにくいでしょう。

 当社ではAdjustさんのお力を借りて、広告効果の高いクリエイティブについて研究しています。Adjustさんと当社それぞれが持つデータを突き合わせて、QRコードの読み取りに必要な秒数や、読み取ってもらいやすい位置などを分析しながら、正解を探っているところです。

AdjustとAbemaTVが研究している新広告フォーマット
AdjustとAbemaTVが研究している新広告フォーマット

佐々(Adjust):私からは広告計測の具体的な手法についてご紹介します。Adjustが提供しているコネクテッドテレビ広告の計測ソリューションでは、1つの管理画面でコネクテッドテレビ広告の全体的なパフォーマンスを明確に把握できるほか、コネクテッドテレビ広告がアプリのインストール数や収益、ROIなどに与える影響を理解することが可能です。

佐々(Adjust):また最近、アシスト効果がわかる機能「アシスト管理画面」もオプションとして追加しました。これにより、コネクテッドテレビ広告に限らず「あるネットワークが別のネットワークにどれだけアシストしているのか」を可視化します。たとえば、アシストあり/なし別のインストール数の推移や、チャネルごとのインストール割合などがわかります。今はコネクテッドテレビ広告に着手していない企業であっても、複数のキャンペーンを実施している場合はぜひ試していただきたいです。

野村(フジテレビジョン):地上波のテレビCMも同様の仕組みで効果測定できるようになると非常に理想的ですよね。

佐々(Adjust):ビデオリサーチさんと協力したことによって、地上波テレビCMの計測自体は既に実現しているんです。ビデオリサーチさんは「どこの地域で何時何分にCMを放送した」というデータをお持ちなので、ざっくりとした効果を測ることは可能となっています。

 今後テレビデバイスを操作するリモコンが進化して、テレビデバイスとユーザーの手元にあるスマホを紐付ける機能が規格化されれば、もっと面白い仕掛けや精緻な効果測定ができるかもしれませんね。

3社はライバルであり同志

佐々(Adjust):最後に、皆様の展望をお聞かせください。

柴崎(TVer):地上波放送とTVerで同時に広告を出稿した場合のブランドリフト効果がデータとして明らかになっているため「テレビとTVer」を意識しながらサービスや広告メニューを提供していきたいです。

 またTVerでは2022年4月にスタートした「TVer ID」によって、PC・スマホ・コネクテッドテレビのそれぞれでログインデータが見られるようになりました。今後はデバイスを横断した広告の検証と制御に取り組んでいく予定です。

野村(フジテレビジョン):当社では、AI技術を用いたプレイスメント「iCADs(アイキャズ)」を開発しました。iCADsは「in Contents ADs」の略称で、動画コンテンツの本編内に広告情報を付与するAVODの新しい形です。

 通常のAVODでは、コンテンツの前後や途中にインストリーム広告が入る構造となっています。一方iCADsでは、動画本編に映っている看板やポスターなどに広告情報や商品情報を合成することができるんです。このiCADsとインストリーム広告を組み合わせると高い相乗効果が期待できるため、ぜひ活用を検討いただきたいです。

綾瀬(AbemaTV):プラットフォーマーとして、ユーザーのアクションを促すようなコネクテッドテレビ広告体験の創造にチャレンジしていきます。まずはAdjustさんのお力を借りながら、QRコードを活用した広告フォーマットの開発に取り組みたいです。ゆくゆくは、番組コンテンツと連動した広告フォーマットの開発にもチャレンジしていきたいと考えています。

野村(フジテレビジョン):今日登壇した3社はライバルであり、コネクテッドテレビ市場をともに拡大していく同志でもあります。各社の事例が増えれば機能の拡充にもつながるので、ぜひアプリパブリッシャーの皆様には協力いただけると幸いです。

Adjustの「アシスト管理画面」でカスタマージャーニー全体を可視化

Adjustアナリティクスソリューション「Datascape」に新たに追加された「アシスト管理画面」では、マーケティングキャンペーンのファネル全体を確認することができます。従来のラストタッチアトリビューションロジックと新しい「アシストタッチポイント」を組み合わせることで、アトリビューション情報だけでなく、コンバーションに至るまでに発生したユーザーエンゲージメントの重要な役割を把握できます。この機能についての詳細はjapan-sales@adjust.comまでお問い合わせください。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/19 16:13 https://markezine.jp/article/detail/40236