自身のリーダーシップのスタイルにも変化が
MZ:P&G、楽天とはまた違い、Facebookも違う雰囲気のカルチャーを持っています。さらに考え方がシェイクされた感じですか?
長谷川:そうですね。年齢に関係なく、優秀な人が当たり前に役職につく世界だったので、いい意味で年齢の概念も吹き飛びましたし、価値観も個性も本当に様々な人たちがいて、ジャングルのような環境でした。また、「世界中の人々の距離感を縮めたい」という大きなミッションに向かって突き進むパワーも体感しました。
今の自分につながっている学びを挙げると、リーダーシップが1つあります。Facebook Japanに入った当時、僕が持っていたリーダー像は「強いオーラでみんなを引っ張っていく存在」というものでした。ですが、Facebookのリーダー像は少し違っていて、表現が難しいですが、みんな素のままに近いんですね。自分の弱いところを見せれば、苦手なものも共有する、日本語で言うと「腹を見せる」感覚に近いかもしれません。ちょっと肩の力が抜けたリーダーシップのスタイルになったのは、Facebookでの経験が影響しています。
MOON-Xの事業構想につながった原体験
MZ:長谷川さんが代表の座につかれている間、Instagramは日本で急成長を遂げています。功績として語られることも多いと思いますが、ご自身としてはどのような出来事が大きかったですか?
長谷川:すべての仕事がそうだと思いますが、1人で完結する仕事はありません。Instagramの急成長も僕だけの仕事ではなく、グローバルチーム含めみんなで動いた結果であり、本当にみなさんに感謝しています。
Facebook Japanでは、本当に色々な苦楽がありました。思い出深いことばかりですが、地方創生や町の活性化に向けて、Facebookとして取り組めたことはとても良かったと思っています。日本のモノづくりは素晴らしいし、良い製品を作っている会社がたくさんある。このことを、日本中を回り、地方の様々な産業やモノづくりの現場にお邪魔する中で知りました。一方で、情報発信が足りないゆえに、世の中に知られていない、伝わっていない企業やブランドが多いことを残念に思うこともありました。
当時、僕はFacebookやInstagramを使って「誰でも情報発信できる時代ですよ」ということをレクチャーする立場だったのですが、モノづくりの現場で情報発信まで行う必要があるのだろうか? という疑問も浮かんでいました。モノづくりに集中しているからこそ良いものが作れるのだとしたら、情報発信の部分を僕のようなマーケティング領域、ネット領域に強い人間が担う形でコラボレーションしたり、パートナーシップを組んだりする手もあるはずです。マーケティングとテクノロジーの力で、隠れた日本のプロダクトを世界中に広げる(売る)仕組みを作る。そんな存在が必要なのではないかと考えていました。
MZ:そこからMOON-Xの起業につながっていくわけですね。元々「起業する」ことは決められていて、興す事業の業種を決められたのはその時ですか?
長谷川:それについては、その時々で変化していました。自分で事業を興すことは決めていましたが、年齢やキャリアのフェーズが変わるにつれて、その時持っている情報や自分の強みも変わっていきます。それにあわせて、アイデアも変化していましたね。現在のMOON-Xの事業は、Facebook時代の経験が原体験にありますが、今までのキャリアの掛け合わせ、集大成とも言えると思います。
MZ:次の記事では、そんな長谷川さんのキャリアの集大成について、MOON-Xの今とこれからのことについて、そして長谷川さんのこれからの人生についてお話を伺っていきたいと思います。