Instagramで「好き」と「欲しい」につなげる、動画の活用法
Instagramで「好き」と「欲しい」を作ることを目指し、アクションを起こしていく際のポイントとして示された「4つのHOW」。House of Instagram2022の2日目では、この4つのHOWをそれぞれ深掘りする形で、多様なセッションが繰り広げられた。
最初のセッションでは、Meta日本法人 Facebook Japan株式会社(以下、Facebook Japan)の営業部長 宇津井文子氏が、好きと欲しいを作るための「動画」の活用法について解説した。
まず、動画プラットフォームとしてのInstagramの特徴について。これは1日目の講演でも言及があったが、Instagramは「つながる」という目的と、「楽しむ・気分転換」といった娯楽目的の両方をバランスよく兼ね備えているという特異性がある。熱量が高く、前向きな気持ちで利用者が訪れるため、広告体験もポジティブに受け入れられる素地があり、実際に「Instagram/Facebookの利用中に表示される広告を楽しんでいる、または気にしない人が6割超」という調査結果もあるそうだ(※)。
現在、企業がInstagramで動画広告を展開できる場所は、おすすめやハイライトをチェックする「フィード」、フォローしているアカウントの日常を知れる「ストーリーズ」、エンターテインメントの目的で利用されている「リール」の3つ。中でもリールは、Instagramの利用時間の20%を占めるまでに急成長を遂げており、新たな動画広告の取り組みを模索している企業は要チェックの場所である。
マーケティングにおけるリール広告の特長は、認知・ブランディングから購買までフルファネルで効果的であること。また、利用者の80%以上がサウンドオンで視聴しているため、リールでは「音あり」の表現が必須というポイントもある。
さらにセッションの後半では、博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 ビジネスプロデューサーの横山昴氏、リチカ 事業開発責任者の妹尾浩充氏を招いたゲストセッションが行われ、次のような動画制作のコツも共有された。
リール広告制作のコツ
・ブランドリフトが目的のキャンペーンを実施する時は、テレビCMの撮影時にデジタルの縦型動画の撮影も行う。CMの企画段階時にモバイル最適を意識するとよい
・タレントの語り掛け、生声といった“音”をフックに動画を構成するとよい
・動画は開始1.5~2秒が肝、この間に何かしらのアテンションを入れる。さらに短尺(10~15秒)が好ましい
最後に、動画広告を企画・プランニングする上でのアドバイスとして、「キャンペーンの全体設計があった上で、目的に応じてリール広告を考えていくと、高い成果の見込める最適なクリエイティブに近づくと思います」(妹尾氏)、「最近のリールの急成長には、ストーリーズが流行り始めた時に近いものを感じます。今のうちにトライしておくことで、先行者優位が得られるのではないでしょうか」(横山氏)と両者からコメントがあった。
(※)出典:Ipos「Grobal Media Study.Video」毎月モバイルインターネットを利用し、毎月動画を視聴する日本の18~64歳の2,501人を対象としたFacebookの委託によるオンライン調査。2020年10~11月実施。
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「インフルエンサーマーケティング」から「クリエイターマーケティング」へ
続いて、Facebook Japan 相原留衣氏が「Instagramで実現する本質的なクリエイターマーケティング」というテーマで講演。好きと欲しいを作る4つのHOWのうち、「クリエイター」にフォーカスした内容だった。
インフルエンサーに商品を送り、「#PR」のハッシュタグをつけて投稿してもらう――こうした従来のインフルエンサーマーケティングから進化した「クリエイターマーケティング」が昨今注目されている。
Instagramが考えるクリエイターとは、「自らコンテンツを作り、発信し、それをコミュニティに広げ、マネタイズまで実現している」人たち。彼ら彼女らは、自分の言葉で商品やブランドの魅力を表現し、偽りのないメッセージを自身のファンへ届けてくれる。情報過多の時代となり第三者からの情報がシビアに取捨選択されるようになった今、クリエイターの力を借りることはマーケティングの重要テーマとなっていると言える。
「ブランド、利用者、クリエイターの三者の共創によって、熱量の高いコミュニティが形成され、クリエイターマーケティングが価値を持つようになりました。ブランド発信の情報だけでなく、クリエイターのフィルターを通して商品の文脈価値をアピールすることは、広告主のビジネスを加速する重要なドライバーになる可能性があります」(相原氏)
現に多くのInstagram利用者が、フォローしているクリエイターの投稿を見て、新しい情報、つまり「好き」と「ほしい」を発見しているのに加え、他のプラットフォームと比べても購買への影響が大きいという。クリエイターマーケティングの重要性だけでなく、クリエイターマーケティングを行う場としてInstagramが有用であることも示された。
広告主×クリエイターが語る、クリエイターマーケティング
セッションの後半には、Facebook Japan 三浦せしる氏のファシリテーションのもと、HYPEBEAST JAPANの阿部勇紀氏、神葉俊輔氏、クリエイターのYURINO氏の3人をゲストに招いたパネルディスカッションが行われた。HYPEBEAST JAPANでは、YURINO氏を起用した動画コンテンツを制作した事例がある。その際に意識したポイントなどが共有された。
まず、Instagramが他のプラットフォームと違うのは「ビジュアルで見せられる点」であると阿部氏。YURINO氏は「ファッションやインテリア、コスメなど自分の好きなものがたくさん見つけられて、自分自身が発信しやすい場でもある。さらに、海外ともつながれる。一番好きなプラットフォーム」と話す。
続いて、三浦氏が「本質的なクリエイターマーケティングとは何か?」と問いかけると、阿部氏は次のように話した。
「作り込まれたビジュアルよりも、スマホで撮った写真のほうがエンゲージメントが高く出ることがあります。利用者が見たいのは、クリエイターの“素”や“生の声”です。写真や動画を撮影する時は、クリエイター自身が腹落ちしている状態で、自分の言葉で話してもらうことを意識しているので、台本などもありません」(阿部氏)
さらに神葉氏からは、クリエイターマーケティングにおけるKPIの設定に対するヒントが提示された。
「どうしても、数値として見えやすいフォロワー数やいいねの数に目が行きがちなのですが、今日明日の売上ではなく、5年10年先のLTVを見据えた長期的な取り組みが本来のあるべき姿です。これを念頭に置いてKPIも設定すべきだと思います。そのためには、少しずつ社内をエデュケートしていくことも必要です」(神葉氏)
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売上に効く、Instagramコマースの3つの機能
「好き」と「欲しい」を作る4つのHOW、次は「コマース」のパートだ。クリエイターマーケティングによって興味関心を高めたユーザーを、購買へと導く機能がInstagramにはある。Facebook Japanの丸山祐子氏は、「売上と広告パフォーマンスに効くInstagramコマース」について紹介した。
日本のInstagram利用者は、グローバルに比べ、ハッシュタグを使って検索をする回数が5倍も多い。このことから、Instagramを「発見型コマース」と位置付けると、Instagramは消費者とブランド・商品が出合うチャンスがあふれた場と捉えることができる。コマースの領域で「好き」と「欲しい」を増やすために、Instagramが提供している広告機能は、次の3つだ。
よりリッチなショップ作りを実現する「コミュニティコンテンツ」
Instagramで開設されているショップを分析していくと、商品詳細ページをいかに作り込めるか? が重要であることがわかってくる。商品詳細ページの情報量を増やし、コンテンツ化することで、より商品理解と購買意欲を高めることができるからだ。ただ、「商品詳細ページを拡充したいけど、画像などの素材を十分に揃えるコストがない」というケースもあるだろう。
そんな時に有用なのが「コミュニティコンテンツ」という機能。ショップ機能を利用かつ一定量の投稿を達成しているアカウントが使用できる機能だ。
コミュニティコンテンツでは、自社のショップがメンションもしくはタグ付けされた投稿を一覧で見ることができ、それぞれの投稿者にショップのコンテンツとして掲載可能かの許諾を取ることもできる。投稿者の写真を商品詳細ページなどに追加することで、よりリッチなショップ作りが実現する。
ショップ関連のデータを広告に活用する「ショッピングカスタムオーディエンス機能」
続いて2つ目は、「ショッピングカスタムオーディエンス機能」。この機能では、Instagramオンサイト上のデータを広告に活用することができる。具体的には、自社のInstagramショップを見に来ている、既に商品やブランドに対して興味関心を持っている利用者へ広告を配信することが可能。ショップのページを訪問した人、投稿を保存した人などアクションごとにオーディエンス設定ができ、またその類似拡張によるターゲティングも可能だ。
大手ECへの誘導を促す「コラボレーション広告」など新機能も
最後3つ目に解説されたのは、コマース領域の広告機能のアップデートについて。「ADVANTAGE+ショッピングキャンペーン」では、今まで手作業で行っていたキャンペーン設定、クリエイティブの配置といった作業をすべて自動化。労力やモニタリングの手間を最小限に抑えながら、オンライン販売のキャンペーンパフォーマンスを最大化する機能だ。
加えて、自社ECを持たず、大手ECサイトで商品を販売している企業向けの機能「コラボレーション広告」も紹介された。日本では楽天とのパートナーシップ締結により、「Ichiba Dynamic – Facebook」がリリース。楽天市場での閲覧したデータをもとに、その商品や関連商材をInstagram/Facebook広告で表示し、大手ECへの誘導や売上拡大を狙うことができる。
本セッションではこの後、自社で化粧品販売やマーケティングを行いながら、本業ではD2C企業を支援するCARTA COMMUNICATIONSのコマースコンテナチームマネージャー 加藤潤一氏が登壇。自社で実践したソーシャルコマースから得られた知見を共有した。
避けて通れない「データ活用とプライバシー保護」に関するテーマも
最後のセッションでは、昨今のCookieレス問題などを受け、プライバシーを尊重しながらもパフォーマンスを上げていくマーケティングの在り方について、Facebook Japan 近藤克尚氏からFacebookとしての見解や意向が示された。
現在、人々の行動の変化やテクノロジーの進歩、各種規制によって、広告業界は日々変化している。変化の要因を改めて整理すると、大きくは以下の3つとなる。
1.GDPR、CCPA、日本の個人情報保護法改正など、プライバシーに関連法による規制。利用者がCookie利用に同意しないとビジネス成果全体を把握することができない。
2.広告ブロックシステムなどのテクノロジーの進化も著しい。広告を非表示にするオプションが新たに増えてきている。
3.プラットフォームの新たなデータに関するポリシーの導入。AppleのATT(App Tracking Transparency)、Googleのプライバシーサンドボックスなどがこれにあたる。
これらの要因が重なり、マーケティングにおいては、カスタマージャーニーの全体像を把握することが難しくなっている。これは、ターゲティングだけでなく効果計測にも影響を及ぼすものだ。
ここで、「パーソナライズ広告は利用者にとってもビジネスにとっても有益である」というのがMeta社の考え。近藤氏も「パーソナライゼーションとデータのプライバシーは両立できると信じています」と話す。
このための具体的な取り組みとして、Metaはインフラ構築に注力。予測を基にキャンペーンのパフォーマンスの全体像を把握できるようにする「コンバージョンモデリング」の開発と、利用者のプライバシーを尊重しつつ、最大限にデータを活用できる「Privacy-enhancing technologies(プライバシー強化技術)」などに引き続き投資していく考えだという。セッションでは、コンバージョンAPIの導入事例として、TowaStela 代表取締役の丸谷陽介氏、Septeni Japanのシニアコンサルタント 池田菜摘氏を交えたパネルディスカッションがあった他、広告システムの機能改善・アップデートについても共有があった。
最後に近藤氏は、「プライバシーを尊重したパフォーマンスマーケティングの実現に向けて、皆様と様々なトライをしていきたいと思っています」と意気込みを述べ、セッションを締めくくった。
本レポートでは、紹介しきれず割愛した内容も多々ある。イベントのアーカイブ視聴ページから、知っておくべきInstagramの“今”を逃さずチェックしてほしい。
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