戦略を見直し、施策のプランニングに落とし込んでいく
このギャップをもとに、改めて4P戦略をAs is(現状)とTo be(理想)で整理し直します。この時、先に戦略スローガンを書くと整理しやすくなります。難しく考えず、「戦略策定の意気込み」として書くくらいでちょうど良いです。

このモジュールはコミュニケーション戦略を考えるためのものなので、Promotionを中心に見直してもらうのがいいと思いますが、ProductやPlaceに関わる重要な事柄が出てくることもあるでしょう。特に、リアルに比重が強い商品・サービスであれば、OMOは大きなテーマになってくるでしょうし、その課題はここでも出てくると思います。
さらにコミュニケーション領域の見直しをもう一歩深めたいと思います。
整理したZ世代の情報行動を前提に、「こんなふうに行動してもらいたい」という理想(ゴール)を書きつつ、それを実現するコミュニケーション設計を行う流れです。まず理想的なターゲット行動を左側に書いたら、次はその理想的な行動を生み出すための全体をくくるコアアイデアを一言で書きます。コアアイデアと言うと難しそうですが、ここもスローガン的に「作戦名」を書くイメージでOKです。それをもとに、各フェーズでEarned/Owned/Paidに分けて、施策をプロットしていきます。

Earnedは「稼ぐメディア」と言われますが、企業が作った広告をそのまま出す直接的な広告ではなく、口コミ誘発施策やインフルエンサー施策、PR施策など、結果として情報量を稼ぐ施策をプロットします。
Ownedには、基本的にSNS運用が入ってくると思います。認知施策としてTwitter、TikTokを運用し、検討や購入後のエンゲージメント/アップセル&クロスセルを目的にInstagram運用へ繋いでいくのが一般的です。Paidは各種施策のリーチ拡大やルート作りとして機能します。並行して、メジャー感醸成としてマスメディアを活用します。
たとえば、普段の情報接触のフェーズでは、Twitterでのキャンペーンや、リーチ目的/メジャー感醸成のインフルエンサー施策、YouTube広告やSNS広告をプランニングに入れます。最近は縦型のショート動画のリーチが効率的なので、TikTokとInstagramのリールも良いでしょう。そこから、検討フェーズでは、ランキングや使用感の口コミ、ファクト情報、商品ストーリーなど「自分向けの商品・サービスだ」と思える情報を広く配置します。
最近、普段の情報接触から検討フェーズを含めて、特に広義のUGCが売上との相関が高いと言われ始めており、先進的な企業では一定の検証も行われています。ここで言う広義のUGCとは、Twitterのリツイートもあれば、「この商品どう? 知ってる?」とフォロワーに呼びかける投稿もありますし、使用感に関する投稿、「〇〇な商品ランキング」など情報まとめ系アカウントによる投稿も含まれます。
「SNS」を軸に戦略と予算の全体最適化を
そうして掴んだ顧客をきっちりSNS運用でつなぎ止め、エンゲージメントを深くしていく。最終的にユーザー(ファン)でありながら、インフルエンサーでもある「インフルエンシューマー」を育成し、さらなる情報発信→顧客の獲得→ファン育成のループを回していくことがゴールです。

最近は、著名人やその一歩手前のメガ/マクロ/ミドルインフルエンサーに加え、1~10万人程度のマイクロインフルエンサーや1万人以下のナノインフルエンサーの領域が発展しています。インフルエンサーを起用する時は、コミュニケーション全体で「本音感」をどう作り出していくかが重要で、そのためには各層のインフルエンサーを目的に応じて起用することが必要になります。企業主導/企業都合の「嘘っぽい情報」ではなく、「本音感のある情報」の広がりをプランニングし、質の高いリーチを作ることが大切です。
以上、今回ご紹介したプランニングフレームは、Z世代向けオリジナルというよりは、「SNSファースト」の発想にシフトし、プランニングを組み直すためのガイドとなるフレームです。インフルエンサーマーケティングや、SNSキャンペーン、SNS運用、SNS ADの展開など、個別でより深い議論はありますが、まずは大枠の設計と予算の枠組みを変えていくことが、マーケターが今しっかり取り組むべきアクションだと思うのです。
SNSがプランニングのコアにあり、予算の中心にあるべきだと思います。今こそ改めて、SNSファーストなマーケティング戦略設計に向き合う、それを徹底的にやり切る。そんな議論を読者の皆さまとしたいと思っています。