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【特集】Web3、メタバース、NFT──最新技術がマーケティングに及ぼす影響

「web3とは何か?」をビジネスの文脈で理解する──企業が捉えておくべき変化

 「web3」や「NFT」というキーワードが盛り上がりを見せる中で、自社のビジネスやマーケティングとの関連についてはいまいちピンとこない方も多いだろう。本稿では、バズワードとしてではなく、マーケティング担当者が理解しておくべきビジネストレンドとしての「web3」を、デジタルガレージでweb3事業の責任者を務める木室俊一氏に解説いただいた。

※本記事は、2022年11月25日刊行の『MarkeZine』(雑誌)83号に掲載したものです。

Web1.0は「read」、Web2.0は「write」、web3は「join」

──はじめに、木室さんの現在の業務領域についてお聞かせください。

木室:今年の6月に立ち上げたweb3準備室の室長として、web3関連の戦略立案を、全社横断で取り組んでいます。たとえば「onlabweb3」というweb3のスタートアップを育成するインキュベーションプログラムを企画・運営したり、マーケティングの領域にNFTやweb3がどういったインパクトをもたらすのかを、当社のマーケティングテクノロジー事業のメンバーと一緒に検討しています。

株式会社デジタルガレージ web3準備室 室長 木室俊一(きむろ・しゅんいち)氏 日本アイ・ビー・エムにてクラウド、AI、ブロックチェーンなどエマージング・テクノロジーの事業開発に従事。2018年2月デジタルガレージに入社。ビットコイン、ブロックチェーン分野への投資および事業開発を担当。
株式会社デジタルガレージ web3準備室 室長 木室俊一(きむろ・しゅんいち)氏
日本アイ・ビー・エムにてクラウド、AI、ブロックチェーンなどエマージング・テクノロジーの事業開発に従事。2018年2月デジタルガレージに入社。ビットコイン、ブロックチェーン分野への投資および事業開発を担当。

木室:デジタルガレージは、2015年からブロックチェーン事業を始めていて、主に金融系企業を支援してきました。現在はNFT、web3の普及で非金融のユースケースも増えているので、今までのナレッジを他の領域を担当するメンバーとも共有し、横串で取り組まないと対応できません。そこで社内にweb3準備室を設立し、全社で推進しています。

──最近「web3」がキーワードとして盛り上がってきています。web3とはどのようなものなのでしょうか? Web1.0、Web2.0との違いも含めて教えてください。

木室:「web3はこれだ」という明確な定義より、歴史的にどう捉えられてきたか、様々な視点から理解することが重要だと思います。時代ごとに整理して説明します。

 Web1.0ではコンテンツにアクセスする「read(読む)」だけができる状態でしたが、Web2.0ではユーザーがコンテンツをアップできるSNSなどが登場し「read」と「write(書く)」ができるようになりました。

 web3という言葉の登場は2007年頃で、当時は「セマンティックWeb(解釈可能なWeb)」という、人間の代わりにWebが意味を解釈する世界を表す文脈で使われましたが、この定義自体はあまり浸透しませんでした。2009年以降、ビットコインの登場によってそのインフラ技術であるブロックチェーンが登場し、「これを使えば、世の中の様々な業務プロセスや社内システムが、プラットフォーム企業にコントロールされずに自由に構築できるんじゃないか」といった考えが徐々に広まってきました。

 2016年頃に、そういった議論が盛り上がったタイミングで、再び「web3」という言葉が使われ始めました。アプリケーションを構築するインフラストラクチャーをより分散化された計算資源、ストレージなどで実現していくことを、web3というワードで表すようになりました。

 そして、最近ではまた少し異なる文脈で語られています。従来は、プラットフォーマーが成長したとしてもユーザーには利益がもたらされないということがありました。スタートアップの従業員であれば、ストックオプションによって利益を得る機会もありましたが、ユーザーには今のところありません。それが、web3の世界ではトークンを使うことで、サービスの初期にコミットしてくれたユーザーにインセンティブを与える仕組みを作れるようになるわけです。これがweb3の画期的なポイントです。

 このように、web3はサービスとユーザーとの関係性に劇的な変化を起こしていて、マーケティングの視点が重要な領域になりつつあります

──様々な文脈で「web3」が語られてきた中、デジタルガレージや木室さんはどのように捉えていらっしゃいますか。

木室:web3では「read」「write」「own(所有する)」ができると言われますが、当社の取締役共同創業者である伊藤穰一は「read」「write」そして「join(参加する)」だとよく言っています。「own」、つまり所有だと、そのサービスのユーザーではない可能性もあります。しかしながら、「join」は参画してサービスの発展に貢献していく状態。トークンを持つだけでなく、ユーザーがサービス発展の一部になっていくという見方が大事なのではないでしょうか。

 また、web3という言葉自体が語られているうちは、まだweb3が浸透していないと思っています。というのも、今「Web2.0」という言葉は使いません。SNSやUGCといった言葉だけが残っている。web3もトークンやNFT、DAO(ダオ:分散型自律組織)といった用語だけが残って、web3という言葉自体は意識されないようにならないと、浸透しているとは言えないと思います。その過程で関連する技術要素が、いかにサービスに取り込まれていくかに注目しています。

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/11/28 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40646

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