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【特集】2023年、マーケターたちの挑戦 ──未来を拓く人・企業・キーワード

ブランド戦略論の第一人者 田中洋氏が見据える視点 二極化するブランド、その背景にあるトレンドを探る

「ブランドの信号化」とは何か

MZ:ブランドの「信号化」とはどういうものでしょうか?

田中:信号とはつまりシグナルを指し、「1つの意味しかもっていないようなブランド」を意味します。つまり「このブランドはこういう意味です」というメッセージが非常に単純明快というパターンです。典型的な事例は、処方箋医薬品です。こうした商品ではもともと余計なイメージや意味を必要としていませんでした。それが現在では他の商品カテゴリーにも広がっています。

 最近だと「ヤクルト1000」がいい例です。ヤクルトというと乳酸菌や腸内環境の改善というイメージがありますが、ヤクルト1000を購入している方の大多数が期待しているのは「睡眠の質の改善」でしょう。実際、ヤクルト1000をきっかけにして「睡眠の質」というものが注目されたといわれています。

 これもまさに、ヤクルト1000という商品に対して余計な広告やメッセージを入れず、「睡眠の質」1つに絞っていますよね。マルボロのカウボーイのように余計なイメージは必要なく、1つのブランドがほぼ1つの意味をもっていて、それはイコール「消費者にとってのベネフィット」になっています。

 このように、1つのブランド=1つの意味=消費者のベネフィットという関係性が単純明快になっていることを私は「ブランドの信号化」と呼んでいます

 昨今は特にオンラインサービスのブランドが非常にわかりやすくなっていて、その道のプロでなくても使いやすく、わかりやすいものが増えています。オンライン会議ツールのZoomのシェアが大きいのは、やはり使い方がわかりやすいからでしょう。Zoom=オンライン会議=使いやすさというように、それが1つの価値としてブランドを形成しています。昨今カスタマーエクスペリエンス(CX)が注目されていますが、オンライン上のブランドは特にCXが大切です。

信号化と真逆の「ブランドの理念化」

MZ:もう1つの「理念化」について教えてください。

田中:理念化は信号化と逆で、ベネフィットを明確に知覚できないが、商品の世界観・哲学・考え方を重視しているブランドを意味しています。たとえばオーガニックもその1つで、オーガニック食品や化粧品は良いものとして知覚されています。確かにオーガニックは体に良いかもしれませんが、かといって普通に栽培されている野菜や食品が有害というわけではありませんし、食べて農薬の味がするわけでもありません。オーガニックワインのブランドが現在もてはやされていますが、ワイン愛好家でもおそらくオーガニックとそうでないワインをテイストで見分けることはかなり困難なはずです。

 オーガニックだけでなく、電気自動車や家電にもそうしたブランドはあります。具体的に知覚できるベネフィットというよりは、「環境に配慮したブランド」「人権や差別に配慮したブランド」「社会に貢献するブランド」などの理念を優先するブランドが台頭するようになりました。そのようなブランドの傾向を「理念化」と呼んでいるわけです。

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ニュースやSNSの影響でブランドへの態度を変える消費者たち

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/06 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40949

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