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「一言発想法」から学ぶ、ファンの心を動かす方法

人に話したくなる体験価値創造の3つのカギ「行動メタファー」「擬人メタファー」「舞台メタファー」とは?

 本連載では、クリエイティブの面から多岐にわたるクライアント企業の支援をしてきた博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 尾崎チームが、「一言発想法」の考え方を共有。フレームワークを活用し、マーケターの実務上の悩みを具体的に解決する視点やアイデアを提供していく。第2回はキッチハイク、ライザップやドン・キホーテの「激安ジャングル」などの実例を紹介しながら、フレームワークを解説。各メタファーにどのような特徴があるかを紐解いていく。

行動を起点に価値を生み出す (1)行動メタファーとは?

 前回の記事『体験価値でファンを作り出す「一言発想法」の考え方〜なぜ?そのアイデアは人に話したくなるのか〜』では、顧客体験を考える上でのイメージを統一するフレームワーク「一言発想法」の考え方を紹介しました。その中で、ブランドが提供する体験を重なる3つの円(レイヤー)で考えると理解しやすくなると説明しました。

 3つの円は、(1)「仕組み(コア)」の体験、(2)「対話」の体験、(3)「世界観」の体験で構築されます。本稿では、各レイヤーにおける体験と、その発想に役立つメタファー、さらに具体的な事例を紹介します。

 まずは、中心にある「仕組み」の体験から考えていきましょう。ここは様々な商品やサービスのコアとなる体験部分で、モノの体験から、サービス体験まであらゆる体験価値を包含しています。

 現在、テクノロジーの力でこれまではできなかったことが可能になり、それにともなって様々な付加価値があるサービス体験が生まれています。

 「行動メタファー」は、この新しい「仕組み」の体験を発想する時に有効です。この体験自体が、生活者が何かの行動をすることによって生まれるものになります。したがって、商品やサービス体験を考える上では行動から発想することが近道となるのです。

 たとえば、ギフトを“投げて”応援できる、音楽をいつでもどこでも“持ち運べる”、乗りたい人と乗せたい人が“マッチングできる”、などの既存のサービスがあります。これらは行動をベースにしているので、その行動の後に“仕組み”という単語をつけてみると、わかりやすくなると思います。

  • 「ギフトを“投げて”応援できる」仕組み
  • 「音楽をいつでもどこでも“持ち運べる”」仕組み
  • 「乗りたい人と乗せたい人が“マッチングできる”」仕組み

 つまり、仕組みを作ることは、新しい行動を作ることと言いかえることができます。さらに、新しい行動を発想する際に、楽しい、役に立つ、発見する、応援する、などポジティブな変化を意識的に加味することが価値を作り出す上では重要です。まずは、こんな行動ができたら楽しいかも!こんな行動が生まれたら世の中に役に立つかも!と無邪気に妄想したり、想いをめぐらせたりすることからで良いと思います。

 このように行動を起点にして考えることで誰もがイメージしやすい価値を作り出すことができます。

「キッチンをヒッチハイクする」(キッチハイク):行動メタファーによる一言発想事例

 行動メタファーに当てはまる事例を紹介しましょう。

 キッチハイクが運営する「KitchHike(キッチハイク)」は、料理をつくりたい人と食べたい人をつなぐサービスです。手づくり料理を振る舞う人は「Pop-up」という食事会を開催でき、参加したい人は予約、承認されれば食事会に参加することができます。これは新しいサービス体験を"「キッチンをヒッチハイクする」と見立てた「行動メタファー」により発想”されています。

 一般的に手づくり料理は家族や友人という近い人たちに振る舞うものという概念を持っている人も多いでしょう。その固定概念をこのサービスでは覆し、希望すれば誰にでも販売するという新しい行動を発想しています。そして、そこには『キッチン×ヒッチハイク』という意外性のある言葉の組み合わせが新鮮さを与えてくれます。

 この「キッチハイク」は、社名であり、サービス名、さらにはコンセプトにもなっている「一言」の好例です。「食でつながる暮らしを作る」という同社のパーパスをベースに、とても斬新でイメージしやすい一言を作り出しています。お店ではないプライベートな場所(家)で、手料理を作る人と手料理を食べたい人がつながる。「キッチハイク」という一言が、会社の仲間を募る時、生活者にサービス内容を説明する時などに、『体験できるイメージ』を一瞬で想像させてくれます。

 企画書に言葉を多く並べて説明するのではなく、『キッチンをヒッチハイクする』と書くだけでサービスの本質が伝わるのです。

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この記事の著者

尾崎 徳行(オザキ ノリユキ)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 クリエイティブディレクター
1998年博報堂入社。以来、100を超える企業やブランドのブランディング、統合コミュニケーション、 商品・サービス開発などに従事。多様なクリエイティブ領域の経験を生かして、新しい体験価値の創造を実践している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

塩見 勝義(シオミ カツヨシ)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 コピーライター

言葉を起点にしたコアアイデアを武器に、事業や新商品開発からエグゼキューションまでを得意領域とする。ブランドのビジョン、パーパスの定義から、一貫性のあるブランド体験を企画する。 ACC賞、読売広告大賞、 朝日広告賞、 交通広告グランプリ、 宣伝会議賞など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

髙橋 良爾(タカハシ リョウジ)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 
コピーライター/プロダクトデザイナー

学生時代より線香花火のような照明 DEW や鉛筆の万歩計などを開発、販売。 入社後はコピーライターとして新規事業開発やスタートアップの業務に従事。
早稲田大学より小野梓記念章芸術賞やグッドデザイン賞ベスト100など受賞。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/01/26 07:00 https://markezine.jp/article/detail/40967

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