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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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「一言発想法」から学ぶ、ファンの心を動かす方法

人に話したくなる体験価値創造の3つのカギ「行動メタファー」「擬人メタファー」「舞台メタファー」とは?

体験に人間らしさを付加する(2)擬人メタファーとは?

 次に「対話」の体験の領域について、解説していきます。この領域はいわゆる顧客体験領域全般を指しています。これまではリアルな接点で、ブランドと生活者が直接対話をしていました。たとえば、直接コスメの売り場に行って、肌の調子や悩みについて話しながら、おすすめの化粧品を探してもらうといったようなことです。こうした対話が、デジタルデバイスと通信技術の発達によって、いつでも、どこでもできるようになり、多様なインターフェースが生まれました。

 しかし、スマートフォン、パソコン、などといったデジタルデバイスや、さらにその中にある、アプリ、SNS、Webサイト、などの多種多様なコンテンツがあり、一貫した体験を作ることが難しくなっています。これによって体験が分離してしまいがちなのもデジタルデバイス上の体験の課題と言えるでしょう。

 そこで、統一した対話体験を作るカギとなるのが「人」です。デジタルが前提になった時に、いかにリアルな人間らしさを体験として提供できるか? それが大きなポイントとなるのです。よくブランドを人格に例えますが、その人格を具体的にやりとりとして体現できるのがこの領域なのです。そのための第一歩は『擬人化』です。「どんな人がそのインターフェースの向こうにいるのか?」ということを想像し、どんな人格? どんな役割? どんな良いことを与えてくれる人なのか? それをイメージしていくのが「擬人メタファー」による一言発想法です。

 スマートスピーカーやチャットボットはまさに対話の擬人化です。プッシュ通知によるリマインドや、診断コンテンツ、センサーによる使用データの可視化なども、人と人のやりとりをどうすれば擬似的にできるか、という考えで生まれています。リアル・デジタルを問わず、愛着のあるファンになってもらう体験を作るためには人間らしさが必要なのです。そこでは、どんな「人」をクリエイトするのか? が差別化のポイントになってきます。

「徹底的に寄り添う筋トレと食事のパートナー」(ライザップ):擬人メタファーによる一言発想事例

 テレビCMで有名なライザップは、「結果にコミットする」という明確な約束と、体験者のビフォーアフターを見せることでインパクトを与え、「自分もあんな風に変わりたい!」という気持ちを駆り立てます。

 では、なぜ「ライザップ」が選ばれるのでしょうか? 他のスポーツジムとは何が違うのでしょうか?

 その理由は、“徹底的に寄り添う”トレーナーの存在です。ライザップでは、通常のスポーツジムとは異なり、一番のサービスポイントは専属のパーソナルトレーナーになります。筋トレのみならず食事にもかなり踏み込み生活改善を厳しく求めます。

 筋トレにおいては一人一人に合わせたトレーニングメニューに加えて、1人では引き出せない自己限界を超えたトレーニングを提供し、効果的な成果を生み出しています。この辺の厳しさは、徹底的に寄り添うライザップならではの特徴です。

 食事の面では、常にトレーニングと食生活の状況を共有しながら、理論に基づいた効果的なアドバイスと叱咤激励をしてくれ、トレーナーを超えた良きパートナーとなってくれます。

 顧客体験全体を考えた時に、提供する体験はジムサービスを"『徹底的に寄り添う筋トレと食事のパートナー』と一言で見立てる”ことが重要です。つまり、「結果にコミットする」という目的に基づき、筋トレと食事に対してコミットするという体験を規定。その2つを『徹底的に寄り添うパートナー』として、サービスをどう具体的に提供していくのかを考えていくことが必要になのです。私たちが大切にしたいのはこの一言です。

次のページ
ブランドの世界観を作り出す 人々を魅了する(3)舞台メタファーとは?

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この記事の著者

尾崎 徳行(オザキ ノリユキ)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 クリエイティブディレクター
1998年博報堂入社。以来、100を超える企業やブランドのブランディング、統合コミュニケーション、 商品・サービス開発などに従事。多様なクリエイティブ領域の経験を生かして、新しい体験価値の創造を実践している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

塩見 勝義(シオミ カツヨシ)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 コピーライター

言葉を起点にしたコアアイデアを武器に、事業や新商品開発からエグゼキューションまでを得意領域とする。ブランドのビジョン、パーパスの定義から、一貫性のあるブランド体験を企画する。 ACC賞、読売広告大賞、 朝日広告賞、 交通広告グランプリ、 宣伝会議賞など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

髙橋 良爾(タカハシ リョウジ)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 
コピーライター/プロダクトデザイナー

学生時代より線香花火のような照明 DEW や鉛筆の万歩計などを開発、販売。 入社後はコピーライターとして新規事業開発やスタートアップの業務に従事。
早稲田大学より小野梓記念章芸術賞やグッドデザイン賞ベスト100など受賞。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/01/26 07:00 https://markezine.jp/article/detail/40967

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