ABEMAのユーザー数推移を属性別に分析
では、まずはABEMAのアプリ利用者数の推移を見てみましょう。下のグラフは、直近6ヵ月のABEMAアプリユーザー数の推移です。

大会開催期間が含まれる2022年11~12月にかけて、利用者数が急増しています。伸び率で言うと、約2ヵ月で1.9倍近くまで跳ね上がった模様です。
こうした変化により、ユーザー層にはどのような変化があったのでしょうか? 続いて、ABEMAアプリの属性別利用者の変化を見ていきます。下は、直近6ヵ月の属性別アプリユーザー数の推移(性別/年代別)です。

性別では男性ユーザーが、年代別では40代のユーザーが特に上昇。これを受けて、属性割合も男性/40代がやや増加しています。


「ワールドカップ」を検索したユーザーの属性も同様に、男性40~50代の割合が高くなっており、全体の中でもこのユーザー層が特にワールドカップへの関心が高かったと考えられます。

また、下はアプリではなくABEMAブラウザ版のデータです。こちらも大会期間中は新規ユーザー率が上昇しています。これらのユーザーが大会の視聴をきっかけにサービス利用を継続、あるいは有料会員として利用を開始するのかなど、今後も注目したいところです。

W杯期間中のVODアプリシェアはどうだった?
ここまでABEMA利用者の変化に注目してきましたが、大会期間中はコンテンツ消費における時間の使い方にも変化が見られたので、最後の考察としてまとめます。
以下のデータは、ABEMAを含む主要VODアプリユーザー全体における、各アプリのユーザーシェア率の月別推移データです(サービス別ユーザーシェア推移、アプリ利用者の身を対象)。

2022年11~12月にかけて、全体に占めるABEMAのシェアが上昇しています。あくまでVODコンテンツ消費に限った話になりますが、これはつまり他のVODサービスに割く時間が一時的に減少したということになります。可処分時間は限られている中、普段はドラマや映画の視聴にあてていた時間を、大会期間中はワールドカップの観戦にあてた。つまり、コンテンツ消費にあてられる可処分時間そのものは増えなかったとも考えられます。
一定期間、多くの消費者の注目を集めるイベントは、スポンサー権・放映権を獲得することで、集客やサービス認知の一助となるコンテンツとして有効活用できる側面がありながら、他VODサービスの利用者割合が減少したように、消費者の興味関心やコンテンツ消費時間がイベントに集中し、他テーマへのマインドシェアや消費時間が下がる可能性がある、という側面も忘れてはなりません。こういった視点を持つことで、「自社もしくは支援先の事業へ与える影響は?」「消費者のマインドシェアを保つもしくは引き上げるためには?」といった発想につながるのではないでしょうか。