高齢者福祉が行政から民間へ移る中に機会がある
──将来のシニア層、社会はどのように変化していくか、また、その変化に対し企業はどのように対応していくことが望ましいとお考えですか?
日本の高齢化は今後もさらに進んでいきます。2030年を超えると3人に1人が65歳以上になります。特に2025年以降、団塊世代が後期高齢者に入っていくと、日常生活において困難を抱え、介護が必要になる人が増えていきます。
そういった人たちに適切な援助、支援が提供できるかどうかが今後大きな社会課題になってくるでしょう。従来、高齢者福祉領域は行政が対応するという住み分けがありましたが、社会保障費が非常に増大化していく中では、行政の予算にも限界があります。これを鑑みると、高齢者が持つ様々な課題を、民間企業で解決していくことが求められると思います。
昨今ではエイジテック(「高齢者(Age)×テクノロジー(Tech)」)という言葉で注目されていますが、スマートスピーカーであったり、ロボットであったり、あらゆるテクノロジーを活用して高齢者の困難を解決するソリューションの開発に、大きなニーズが広がっていくと思います。
──この20年見てきた中でシニアの意識の変化をどのように捉えていますか。
全般的には平均寿命も健康寿命も延びているので、元気な高齢者は実数として増えています。元気であれば、できるだけ今の状態を維持したいので、健康志向が高くなります。
また、従来は子育てが終わったらそのままリタイアだったものが、「子育てが終わった今だからこそ、本当にやりたかったことにチャレンジしてみよう」と考える人が、60代や70代前半で増えてきていると思います。その中で、趣味などの自分の人生を豊かにしてくれるものにお金を使いたいという消費意欲が出てきます。
一方で、不安意が高まっていることも事実です。自分が何歳まで生きるかが誰もわからない、この長生きリスクに備えなくてはいけないのです。そのため、金融資産は持っていても、やすやすとは使えないシニアも多いと思います。
「リタイアしない社会」でのニーズを考える
──今の40代50代の人がシニアになったときにはどのようなニーズが考えられますか?
そう簡単にリタイアできない社会になってくことが予想されます。言い換えれば、元気なうちは何らかの形で世の中に貢献して、お金を稼いで消費していく社会になっていく。
ただ、今までしてきたことを継続するのは、特に大企業中心の従業員を中心に難しい。そのためリスキリングによって、会社に頼らなくても自活できる能力開発を若いうちに行い、備えておくことが重要だと思います。ですから、社会人生活の折り返し地点の年齡から既に次の段階を意識する人々が増えるのではないでしょうか。
──最後に、電通シニアラボの今後の展望をお聞かせください。
私も両親の介護を目的に長距離通勤を会社に認めてもらったことがあります。今後このようなニーズは明確に高まってくると思うので、介護の観点も含めた様々な社会課題解決のお手伝いに取り組んでいきたいと考えています。電通シニアラボは、この領域に関心のある企業様の商品やサービス開発、コミュニケーションへの支援を非常に大きなテーマと捉えています。