「アメックス=ハイステータス」のイメージを刷新
鈴木:コロナ禍の到来により、多くの業種・業態においてビジネス環境が大きく変わりました。土谷さんはアメリカン・エキスプレス(以下、アメックス)のブランドコミュニケーションのリーダーとして、どのような変化を経験されてきましたか。
土谷:コロナ禍が到来する以前、2018年にブランド戦略を一新しました。それまでのアメックスはハイステータスのイメージが強く、アメックスを保有することに価値を感じてくださる方がお客様が多かったのです。
土谷:ところが、時代の移り変わりとともに人々の価値観は変わります。アメックスも「憧れられる存在」から「前を向いて進んでいく人を支える存在」を目指すブランド戦略に舵を切りました。2019年にプラチナ・カードを招待制から申し込み制に変えたことは、ブランドの変革を象徴する出来事だったと思います。
プラチナ・カードの特長は旅行特典の多さにあります。そのため、CMでもルームアップグレードやレイトチェックアウトなどを中心に訴求していました。また、予約がなかなか取れないレストランのシートリザーブ特典を訴求したテレビCMも、2019年末~2020年初めに放映していました。
鈴木:申し込み制にしたことで、プラチナ・カードの発行枚数は相当増えたのではないでしょうか。
土谷:そうですね。申し込み制への切り替えとコミュニケーションで裾野が広がり、多くのお客様にプラチナ・カードを持っていただけるようになりました。
コロナ禍は会員向けのコミュニケーションを強化
鈴木:新しいブランドコミュニケーションを通じて事業を拡大されていたわけですが、コロナ禍が訪れた2020年当時の状況を教えてください。
土谷:それまでは新規顧客向けに広告を作っていましたが、2020年は会員様向けのコミュニケーションを強化しました。
鈴木:なるほど。ターゲットを変えたのですね。
土谷:CMの放映を少し控え、会員様向けのメルマガでは割引やキャッシュバックなどのキャンペーンを告知するなど、ハレの日以外の日常的な使い方を積極的にメッセージしました。
鈴木:僕はアメックスの会員なのですが、確かに2020年当時はDMの頻度とリッチ度が増したように感じました。
土谷:ほかには「SHOP SMALL」というキャンペーンを展開しました。対象店舗で会員様が支払いをすると、キャッシュバックが受けられるという内容です。遠出が難しい時期に街のお店への来店を促すことで、会員満足度の向上と加盟店のCSを同時に叶える狙いでした。動画撮影が難しい時期だったこともあり、CMは静止画をつないで制作しました。