Z世代が好む「くすみ系カラー」を因数分解すると?
少し専門的になりますが、色は「彩度」「明度」「色相」の3軸で構成されています。その中で、Z世代らしい特徴が最も出ているのが「彩度」です。彩度は鮮やかさであり、同時に淡さでもあります。海外ではファッションなどでビビッドなカラーが流行ってきていますが、日本のZ世代のメジャーカラーの方向性は、彩度が低い、いわゆる「淡い色」です。彩度を下げると、色としては「色名を特定しにくい」色となり、王道のカラーブランディングとは真逆の色味になります。
次に特徴があるのが、明るさと暗さにつながる「明度」です。明度も高めが好まれる傾向にありますが、ペール系ほど明るくなく、若干のグレイッシュの混じったペール、というようなバランスです。ちなみに、Y世代やX世代などの上の世代では、明度が低めのグレイッシュな色味も好まれる傾向があります。
少し補足すると、ペールやグレイッシュという言葉は「トーン」と言われるものの一つです。彩度と明度の掛け合わせで生まれるものがトーンなのですが、たとえば「トーン別色相カラーチャート」と検索すると、色々なトーンが出てきます。左上には淡さが特徴のペール系のトーンがあり、右下にはグレイッシュやダークトーン、右にはビビッド系トーンがあります。Z世代の好みをチャート上で表現すると、ベリーペールとペールの間くらいの彩度、ベリーペールよりも低めの明度からミドルグレイッシュくらいまでの明度あたりと言えると思います(MERYではこれをGen-Z Toneと仮に名付けています【図表2】)。

最後に「色相」ですが、これは赤・青・緑などのいわゆる「色」を指します。前述のとおり、Z世代は何とも表現しにくい「中間色」を好みますが、中でも「黄色みは好まれない」傾向のようです。「くすんだ黄色」や「黄色みのベージュ」「黄色みのグレー」などは、調査上、好感度の反応が低く出ています。どちらかと言えば「赤み」か「青み」に色ブレさせた色が好まれる傾向が見られました。
しばしば「くすみ系カラー」という言い方をしますが、これを因数分解すると、彩度を限りなく下げ、明度は基本上げつつも一定の暗さが残る上げ過ぎないバランスにし、色相を赤みか青みにブレさせる、ということになります。つまり、Z世代向けの商品開発やリブランディングを実際に行う際、ベースの色(色相)は、カテゴリー内のブランドの立ち位置として“得する”色選びをしつつ(例:カテゴリー内の競合が近しい色選びに寄っていて、似せたほうが得な場合もありますし、他方ブランドとしてイメージが蓄積した色があればその近くがよいなど)、上記の方向性での調整で、ブランドカラーを規定していくのがよいでしょう。
調査での反応を踏まえ、以上の考え方をもとに、MERYクリエイティブディレクター佐藤二輝さんとアンズデザインのグラフィックデザイナー中西貴子さんとともに、Gen-Z Color Palette(図表3)」を制作しました。

Z世代に対する新商品開発やユーザーの若返りを図るリブランディングプロジェクトなども増えてきているかと思います。その際の参考にしていただければ嬉しいですし、ぜひこうした議論や探索をみなさまと一緒に行っていければと思います。また、Z世代男性では? 他の世代では? といった疑問についてもぜひ議論させてください。