コンテンツのTime to Value短縮を実現する「Workfront」
Fireflyだけに留まらず、アドビはジェネレーティブAIで強化したアプリケーション機能の提供を加速させる。その狙いは、プロのクリエイターを強力にサポートするだけではなく、一般のユーザーにも高品質な画像や卓越したテキストエフェクトを作るスキルを獲得してほしいという思いがあるためだ。
Chakravarthy氏に次いで登壇したCEOのShantanu Narayan氏は、Fireflyのようなイノベーションがアドビのパーパス「Adobe for All」「Creativity for All」「Technology to Transformation」によって生み出されるものである点を強調した。
「私たちは、世界中のあらゆる年齢、あらゆる背景を持つ何100万人もの人々が、自己表現に必要なツール、スキル、プラットフォームを利用し、自分の可能性を最大限に引き出し、アイデアを共有できるようにすることに取り組んでいます」(Narayan氏)

たとえば、企業のマーケティングチームがデザイン事務所に依頼するのと同様のコンテンツをセルフサービスで生成できれば、キャンペーン展開までのスピードを短縮できるだけでなく、多様かつ大量のコンテンツを必要とする大規模なパーソナライゼーションも破綻なく実施できるようになるだろう。その実現に向けては、コンテンツそのものだけでなく、プロセスにも最適化の視点が必要だ。
アドビがイベントで発表したコンテンツサプライチェーンソリューションは、Adobe Creative Cloud for Enterprise、Adobe Workfront、Adobe Experience Manager(Sites、Assets、およびAdobe Experience Platformのセグメンテーション、コンテンツプロファイルサービス)、Adobe Express for Enterprise、Frame.ioなどを連携させて提供するものである。
企画から制作、配信、分析に至る一連のプロセスを円滑に進める際、“オーケストラの指揮者”の役割を担うのが「Workfront」である。同製品は、マーケター向けのプロジェクト管理ツールを提供してきた会社を2020年に買収し、Adobe Experience Cloudの傘下に加えたものだ。Workfrontには、マーケティングカレンダーのキャンペーンプランの可視化、予算管理の効率化、コンテンツのバリエーションの自動化、コンテンツのマーケティング目標に対する貢献度の分析およびその最適化の機能が新しく実装されることになる。場当たり的だったコンテンツ企画、どんぶり勘定だった予算、進捗が可視化されれば、オペレーションに統制を効かせつつ、コンテンツのTTV(Time To Value)の短縮を実現できる。

また、新しいAdobe Experience Manager(AEM)と一般的なOfficeツールとの連携、汎用性の高いデザインテンプレートを提供するAdobe Express for Enterpriseとの連携で、コンテンツの制作、共有、レビューに伴う作業負荷を大きく軽減できるようにもする。マーケティングチームがセルフサービスで行う作業範囲は広がるが、これまでデザインチームにかかっていた負担は減り、制作の簡素化が促されることになるだろう。
新しい時代のXLG戦略は反復的に、アジャイルに
ジェネレーティブAIと同様に、コンテンツサプライチェーンは大規模なパーソナライゼーションの実践で得られる成果を阻害する組織やプロセスの分断を解消するためのソリューションとも解釈できる。このようなソリューション提供をアドビが強化するのは、XLG戦略の推進でコンテンツが要になると見越してのことだ。

Chakravarthy氏は、「新しい時代のXLG戦略では、もっと反復的でアジャイルなやり方が必要」と訴える。今は組織やプロセスがバラバラだとしても、あらゆる顧客接点が1つのカスタマージャーニーに収斂されたとき、エンゲージメントが高まり、収益成長を実現できる。一般的な成長戦略はファネルマネジメントが中心だが、XLGでは「Acquisition」「Engagement」「Retention」のチェーンの中心に顧客を据え、カスタマージャーニーを継続的に最適化する取り組みが必要になる。
Chakravarthy氏は「私たちはお客様が価値を早く実感し、ビジネス収益を実現することを重視しています」と語り、今後もXLGから顧客がより早く成長できるよう、TTVに着目したイノベーションに注力することを明言した。