YOLUの成功事例に見る「好感認知」の重要性
店頭で売れる仕組みをより詳細に説明するため、中谷氏はナイトケアビューティーブランド「YOLU(ヨル)」のヘアマスクの事例を紹介する。
YOLUブランドでは、以前からシャンプーの売れ行きが良かったことから、ヘアマスク発売の際にはSNS上で「あのYOLUからヘアマスクが出た」と話題になっていたという。「つまりYOLUのヘアマスクは、ただ製品名を知っている『認知』の状態ではなく『この製品が自分の髪にどう良いか』『使うとどんな良い状態になれるか』までユーザーに知ってもらえている『好感認知』が既に醸成できていた」と中谷氏は語る。
好感認知を育てていくことで初めて、店頭での購買につながるという。なぜなら、ただのブランド認知だけでは自分の身体に合っているかがわからず、結果として消費者は商品を購入しないからだ。
「一般的に『認知が拡大すれば売れる』と思われてきましたが、それだけでは店頭での購買にはつながりにくくなってきました。より深い認知、つまり好感認知を得る必要があり、そのためにも事前にSNSで商品を訴求する必要があります」(中谷氏)
実際、7割の人が「SNSで見て買うものを決めてからお店に行く」と回答した調査結果もあるという(MimiTV調査、2022年8月実施)。では、SNSにおける理想的な発話とはどのようなものか。それが、前述のモノ軸・ヒト軸双方の投稿が存在する状態だ。
「モノ軸のUGCの例として、美容高関心層が美容専用のアカウントなどで商品の特徴について詳しく取り上げた投稿があります。ヒト軸のUGCの例は、インフルエンサーによる発話です。『私のおすすめや愛用の製品です』と紹介されれば、そのインフルエンサーのことが好きな人たちにリーチされます」(中谷氏)
口コミのリーチ数は計1,500万imp以上必要
中谷氏によると、バズったといわれる製品をひも解くと「InstagramとTwitterでそれぞれ約100件以上の口コミ」が発生しているケースが多い。加えて「ユーザーへの口コミのリーチ数は、発売のタイミングで500万以上、発売後は1,000万以上必要」とも指摘する。
施策をモノ軸とヒト軸に分けて実施し、モノ軸では美容オタク層を対象にギフティングを、ヒト軸ではインフルエンサーにPR投稿を促すのが効果的だという。また、発売後にはモノ軸・ヒト軸双方のUGCを広告に活用することを中谷氏は勧める。
「ギフティングやPR投稿は、元々美容に興味があったり依頼したインフルエンサーが好きな人には届きますが、製品名やブランドを知らない人、新製品を日頃から積極的に買わない人たちにはほとんど届きません。そこで広告を活用し、美容に対する興味が高くない層にも見てもらうことが重要です」(中谷氏)