リテールメディアはDXの枠組みの1つ
既に100を超えるブランドが「ツルハグループAD」を活用し広告配信を実施している。たとえば、ジョンソンエンドジョンソンのリステリンの場合、ID-POSデータに基づいて購買行動を分析。競合商品購買ユーザーや自社商品離反ユーザーそれぞれに合わせたクリエイティブをYouTube、Facebook、Twitterに配信をした。結果、同じカテゴリーの売上推移が施策前比で102%に対して、同ブランドは130%まで伸長した。
クリエイティブに関しても、新規ユーザー獲得向けは、口臭をフックにした動画で新規獲得が204%アップした。また、自社ブランド継続は、殺菌力をメインに打ち出し他社との差別化を訴求することで、130%アップさせることに成功している。
一方で、リテールメディア推進を担当する同社執行役員 経営戦略本部長 兼 情報システム本部長の小橋氏は、リテールメディアを「DXという大きな枠組みの中の1つの領域」であり、単に自社の収益を上げるだけでなく「新たな顧客体験」に紐づいたものでなければならないと語る。
ここからは、ツルハホールディングスがリテールメディアを実施するに至った背景を紹介したい。
データ活用の基盤を整え、顧客への返還を
ツルハホールディングスが進めるDXとはどのようなものか?「DXとは単純なデジタル化ではなく、文字通りビジネスの変革です。既存の仕組み自体を変えるものでなければなりません」と小橋氏は語る。
ツルハグループは7つの事業会社を抱え、ドラッグストアおよび調剤薬局は全国に2,500店舗以上存在する。データの散逸を防ぎ、活用するために基幹システムのデータ一元化を進めている。これが実現すれば、各店舗のリアルタイムでの在庫変化はもちろん、商品がどの店舗のどの棚にあるかを表示することなどが可能になる。
また、独自決済サービスの開発も進めており、2023年5月を目処に開始する予定だ。こちらもグループの全店舗で使えるようにする。これにより、アプリでクーポンを配信するといった販促だけでなく、決済データを活用した新たな価値の提供が可能となる。
「DXの土台となるデータ基盤を整理し、自社でサービスとデータを持つことで、お客様に今までになかった価値やサービスとして返還できます。新たな体験をしていただき、喜んでいただければ」(小橋氏)