Z世代とのコミュニケーションを模索
MarkeZine編集部(以下、MZ):今回、Z世代へのアプローチとしてeスポーツ×マーケティングの可能性について伺います。まずジェーシービーと楽天グループそれぞれの、背景や課題感についてご教示いただけますか。
吉野:2022年の4月から改正民法の施行によって成人年齢が引き下げられました。これにより18歳から親権者の同意不要でクレジットカードの入会が可能になったため、ジェーシービーにとって新しい顧客層が生じました。
今後のLTVを考えると競合各社もアプローチすることは予想できましたし、当社の調査で「30代の半数以上が20代に作ったカードをメインで使い続けている」というデータもあります。これらの状況を鑑み、Z世代に積極的なアプローチをして彼らの多様な価値観のコミュニティとつながりを持つことが重要だと考えました。
吉野:また決済ブランドの競争が激化する中で、いかに「JCBブランド」を選択していただくか。そのためにも、まず興味を持ってもらうこと、ブランドの認知や一般の広告だけでは伝わらない魅力まで知ってもらうことが必要でした。Z世代の方々はSNSを使いこなすデジタルネイティブ世代となるので、彼らに向けてどのようにコミュニケーションを取るべきかが課題でした。
川畠:楽天グループでも、Z世代に向けたコミュニケーション方法を模索していました。中でも、特に男性の若年層に対して効果的にリーチできる施策を通じて、楽天が提供するサービスとの新たなタッチポイントを作りたいと考えていました。
Z世代のエンゲージメントが強いeスポーツ事業
MZ:ジェーシービーはどのような取り組みをされたのでしょうか?
吉野:2022年11月にプロeスポーツチーム「ZETA DIVISION」とのスポンサー契約を締結いたしました。経済産業省の調査によれば日本のZ世代は、米国や韓国などゲーム消費額が大きい主要国と比べエンゲージメントが高く、月当たりのアクセス回数が多く利用時間が長い傾向にあります。
吉野:さらに10代および20代男性のYouTube視聴における好きなジャンルは、「ゲーム実況」が1位となっているなど、eスポーツはZ世代とのエンゲージメントが強くリーチしやすいジャンルであるといえます。プレーするゲームそのものにファンがいる点はもちろん、プレーヤーや配信者の方々といったインフルエンサーが作る強力なファンコミュニティがeスポーツの大きな強みだと考えています。
吉野:そんな中でZETA DIVISIONへの協賛のお話をいただきました。ゲーミングライフスタイルブランドとして日本から世界に挑戦を続けるZETA DIVISIONは、日本発の国際カードブランドとして1981年から国際展開を進めているJCBと親和性が高く、協賛を決めました。
MZ:楽天グループのお取り組みについても教えてください。
川畠:2022年7月にeスポーツのイベント「Rakuten esports cup」を実施したことを皮切りに、eスポーツ事業に参入いたしました。当社はeスポーツ関連のプロダクトを所持している企業ではないため、楽天グループのサービスを通じてeスポーツ業界のビジネスモデルの構築をサポートし、盛り上げをより加速させる一助となることをミッションに取り組んでいます。
川畠:楽天グループでは、日本で「esports元年」といわれる2018年頃よりeスポーツ関連事業について検討を重ねてきました。プロチームのスポンサーをはじめ様々な関わり方を検討していたのですが、当社として直接的なシナジーを生みづらい領域だったこともあり、eスポーツ業界と当社の両方にとってより良い関わり方を探っていました。
そのような中で、eスポーツ事業に興味を持った企業がビジネスに参入しても、長く続かずに撤退している光景を目の当たりにすることが何度かありました。こうした背景から、eスポーツ業界の発展のためには、ビジネスモデルの構築から再編する必要があると感じ、楽天グループが持つエコシステムを活用したイベント実施の検討を開始しました。
当社の場合はスポンサー企業=「楽天市場」に出店されている店舗様などが挙げられ、まずは店舗様に還元される座組みでイベントを実施しております。初回を2022年7月に実施したのですが、多くの店舗様よりイベント参加の効果を感じていただいております。