コロナ禍で増え続ける「素材改善美容」需要
こんにちは。スパイスボックス・Social Data Lab.アナリストの奥村咲香です。森竹に代わり、今回は2023年夏の美容市場に向けた需要の予測をしていきます。Social Data Lab.では、SNSの投稿データやプロファイリング情報を抽出して生活者のインサイトや動向の分析を行っています。
今回は、SNS上の過去1年間の美容に関する投稿データを分析し、特に顕著に見られた傾向から美容トレンドを紐解き、夏の美容需要を予測していきます。
まず、新型コロナウイルス発生以降の大きなトレンドとして、「飾る美容から素材改善美容へ」という流れがあります。コロナ禍での化粧機会の減少によって、メイクアップ化粧品市場が大幅に縮小しました。一方、メイクアップをしないことによって、自身の肌や髪といった素材に向き合う機会が増えたことや、マスク着用で起きる肌トラブル対策としてのスキンケア強化によって、基礎化粧品市場は2021年夏の時点で回復傾向にありました。
そして、この「飾る美容から素材改善美容へ」という傾向は現在も続いています。Twitter、Instagram、YouTubeにおける「メイク」「コスメ」を含む過去1年間の投稿は減少傾向にありますが、「美容」や「スキンケア」を含む投稿は緩やかに増加しています。
これは、コロナ禍による外出機会の減少以外に、「ファッションやメイクで飾るよりも素材が美しい人のほうが垢抜けて美しく見える」という考え方が浸透していることが理由として考えられます。
SNS上では、「プチプラファッションやプチプラコスメでも、痩せている美人であれば綺麗に見える」という意見や、逆に「着飾っていても、太っていたり言動が汚かったりすると意味がない」といった意見がここ数年で何件も高いエンゲージメントを生んでいるからです。
美容アイテムを取捨選択する要素とは?
素材改善美容がトレンドになり、SNS上に「優秀美容スキンケア情報」が溢れる中で、本当に効果のあるアイテムを判別するための情報価値が高まっています。
2022年、スキンケアにおいて効果があるとされている成分が含まれるアイテムを選ぶトレンドが浸透しました。「レチノール」や「ビタミンC」「セラミド」などの成分や、ニキビができにくい成分で作られている「ノンコメドテストジェニック」アイテムなど、以前は一部の美容高感度層でしか使用されていなかった美容用語が、美容インフルエンサーの発信によって、2021年以降はSNS上で特に広く使用されるようになりました。
そして、2023年現在もこの成分を重視するトレンドは続いています。以下はTwitterにおける過去1年間の「レチノール」という言葉が使われた投稿数の推移です。
SNSでは「スキンケア商品を『バズっているから買う』のはやめて、自分に合った成分で選ぼう」という呼びかけも数万件のエンゲージメントを生んでいました。
また、メイクアップにおいては、「自分に合ったメイク」をAIによって分析するブームも発生しました。2023年に入り、AIを活用して自身の顔を元に美化した顔写真を生成できる「SNOW」の「AIアバター機能」や、顔のパーツ配置や肌の色をAI分析できる「FaceScore」が話題になりました。
1月から2月にかけて「このアプリ、自分に合ったメイクの参考になる」という美容系インフルエンサーによる投稿が行われたことが火を付け、多くの人がアプリを利用しSNSに投稿しました。これまでも、色やメイクのプロによる診断サービスはありましたが、長時間かかることや比較的高価だったこともあり、こういったAIサービスの登場が「自分に合ったメイクの分析」のハードルを下げていくのではないかと考えています。
溢れる美容情報の中から効果のある情報を取捨選択し、いかにコストパフォーマンスを最大化するかが、SNSで美容情報を収集するユーザーの中では重要になっています。