激しくなった感情の起伏、継続的な観測が必要
続いて、ネガティブな感情を見ていきたい。コロナ以前から約1割の人々が何らかの不安を抱えていたが、流行期に突入して跳ね上がったことがわかる。その後は下がったものの、災害や戦争、物価高の影響もあり、ネガティブな感情はビフォーコロナに比べ底上げしたまま推移している。

コロナ流行期には「悲しみ」上昇の振れ幅が大きくなった点も特徴だ。著名人の訃報や事件・事故が起きた際に、悲しい感情が表に出ていることがわかる。コロナ以前でも人が亡くなる報道はあり、それにともない「悲しかった」という回答数が増加していた。だが、比較すると2020年以降は振れ幅が非常に大きいことがわかる。ここから、悲しいという感情が表に出やすくなっていることが読み解ける。また、「腹が立った」という感情も同様に底上げされており、人々がストレスを抱えて生活をしているとも考えられる。
このように、生活者の感情の起伏が激しくなった様子が見られる。「この変化が一時的なものかどうかはわからない。これからも追っていくことが重要」と萩原氏。今後も観測を続けると語る。
このデータから、企業は何を考えるべきか? 生活感情の変化について理由や要因を掴めていないため憶測の域は出ないが、感情の振れ幅が大きくなっている背景から、たとえばポジティブ要素を打ち出したほうが良いのか、ネガティブ要素に寄りそう形が良いのかなど、企業の打ち出し方にはより慎重な検討が必要だと考えられる。
10年間で最も消費金額が落ち込んだのは緊急事態宣言発令1回目
続いて、生活者の消費の変化に触れたい。「消費金額」に着目すると、年末年始・ゴールデンウィークや夏休み期間に上昇する季節性の変動は変わらないものの、1回目の緊急事態宣言が発令された時に10年間で最も消費金額が落ち込んだ。「今後1ヶ月の消費予想」を見ても、この時期に大きく消費マインドが低下している。
また、「先行きの景況感」で10年間を見ると、2014年の消費税の8%引き上げ時に1つ目の谷、2019年の消費税の10%引き上げ時に2つ目の大きな谷が確認できる。そして、その3~4カ月後に、類を見ない急下降を見せた。コロナへの不安や恐怖、経験したことのない事態から、多くの生活者が、先行きの景気に不安を抱えていたことがわかる。

具体的な消費行動からも変化が見て取れる。特に顕著なものが飲食に関する行動だ。過去1週間に購入した品目をたずねる「購入品目」のうち、「食事会・飲み会」「家族との外食」「自宅の特別な食事」を見ると、「食事会・飲み会」「家族との外食」がコロナ流行期に入り大きく下降した後に少しずつ元に戻りつつあることがわかる。しかし、いまだビフォーコロナにまでは水準が戻っていない。

特に「食事会・飲み会」の回復に遅れが見られる。とはいえ、「食事会・飲み会」は10年間で少しずつ下降しているため、回復が鈍くても不思議ではない。一方、「自宅の特別な食事」は元々の割合が少なかったが、コロナ流行期にはビフォーコロナを上回って推移している。外出が制限される中で、自宅での食事を楽しむ生活者が増えたのかもしれない。この層が今後、自宅での食事を続けるか外食を選択するかも気になるところだ。