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目的の設定と問いの立て方次第で大体の悩みは解決できる 音部さんが『マーケティングの扉』に込めた思い

バイアスを外したければ別のバイアスを入れるべし

──238ページでは「販促キャンペーンを担当して大失敗した後輩にどのような言葉をかけるべきか」という質問に対し、後輩がラーニングを得られるように手伝ってあげることを提案されていました。具体的にどのような手伝い方が考えられますか?

 たとえば2023年春の新商品のプロモーションを2021年の秋から準備していたとしましょう。そのプロモーションで大失敗してしまった後輩に、私なら「今2021年の秋だとしたら何をやり替える?」と聞きます。

 2023年の春がこうなっているのは、取りも直さず2021年の秋から18ヵ月間のやり方がおかしかったからです。失敗の結果は自明でも、そこから得られる学びは自明ではありません。「何をやり替えるか」という問いを通して気付けることはあるはずですから、一緒に振り返ってあげると良いのではないでしょうか。振り返りを終えたら、その先はブランドマネジメントの定石に従えばOKです。

──音部さんの著書『マーケティングプロフェッショナルの視点 明日から仕事がうまくいく24のヒント』(日経BP)で提案されていた「上司のコピー作る」にも通じるアプローチですね。

 よっぽど徳を積まない限り、人間はバイアスが外せません。最も簡単なバイアスの外し方は「バイアスを入れる」なんです。「●●さんなら何と言うだろう」と考える視点は、非常に取り入れやすいバイアスと言えます。自分の中に上司のコピーをつくってしまえば、徳を積まなくてもフラットに点検ができます。

近視眼的な善悪判断から脱するために

──最後に、音部さんから悩めるマーケターに向けてメッセージをお願いします。

 これも本を読んだ知人が寄せてくれた感想なのですが、彼は「目的の設定と問いの立て方次第で大体のことは解決できるのだとわかった」と言うんです。言われてみれば、ほぼその手法で質問に回答しています。

 過去に執筆した戦略の本では、終始形而上学的に目的と資源の話をしていました。そのフレームを使ってよろずの相談にアプローチしてみた実践編がこの一冊と言えるかもしれません。目的の解釈で概ね解決していますから。私の過去の著書を最後まで読み切れずに途中で挫折してしまった方は、先にこの本を読むとあちらが読みやすくなるのではないでしょうか。たとえるならば、家族などが運転する車に同乗した経験を経て、自分も運転を覚えるような感覚です。先行して体験した後に知識体系を習得すると、理解が深まります。

 最近は方法論や手法の話に終始している方が多いような気がします。連載でもそのような質問がいくつか見受けられました。「TikTokはやったほうが良いですか?」「この選択肢は良いですか?悪いですか?」という具合に、物事の善悪を近視眼的に判断しようとしている。

 この本には善悪の正解は書いていません。文脈の中で何を目的とするか考え、自分の資源と照らし合わせながら良し悪しを判断する必要があります。「手元ばかりを見るのではなく、手元を取り囲む周辺を、目的も含めて捉えましょう」というのは本書の重要なメッセージの一つかもしれません。それを実践するだけで物事は効率的に進む気がします。

──素敵なお話をありがとうございました!

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/06/21 09:30 https://markezine.jp/article/detail/42536

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