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マーケターの本棚

目的の設定と問いの立て方次第で大体の悩みは解決できる 音部さんが『マーケティングの扉』に込めた思い

定義風の金言に要注意

──本書の中で音部さんは、組織内の共通言語を構築する際の注意点について次のように語っていらっしゃいます。

よく耳にするのは「マーケティングとは、顧客を知ることである」といったフレーズです。(中略)間に「とは」などと入っているので定義風ですが、これは定義ではありません。顧客を知ることはマーケティングにとって重要ですが、マーケティングには顧客理解以外の活動もたくさん含まれていることを思い出せば、これは定義ではないと分かります。(中略)金言は定義ではありませんから、そのまま共通言語化するとうまく機能しないので、気を付けましょう。(p.274)

──この一節に限らず、本書全体を通して音部さんの言葉に対する“執念”のようなものが伝わってきました。やはりマーケターにとって言語化力は必要なスキルでしょうか。

 とにかくちゃんと定義したいんですよね。言葉に対しては少し偏執的なところがあるかもしれません。ブランドやマーケティングは概念です。実体がともなわないからこそ、言語に依存せざるを得ないとも言える。ビジネスにおける言葉はOSのようなものです。ここが何でもありだとよろしくありませんし、きちんと言語化ができるって素敵なことだと私は思っています。

目的と資源のヒントは「好きなもの」に表れる

──252ページの「マーケターの分類」も印象的でした。CMOクラスのタイプをナポレオンとモルトケ、ミドルクラスのタイプをコンシューマープルとトレードプルに分けた図は大変示唆深かったです。

 この四象限を使う際に重要なことは、各タイプの良し悪しを判断したり、自身をカテゴライズして安心したりしないことです。スキルの種類を把握し、自身の強化ポイントを見定める道標として有用だと思います。強化ポイントは自分が携わっている案件や、何と言っても自分の好みによって見定めると良いのではないでしょうか。

『マーケティングの扉 経験を知識に変える一問一答』(日経BP)より抜粋
『マーケティングの扉 経験を知識に変える一問一答』(日経BP)より抜粋

──「このタイプはあてはまる人が多い=レッドオーシャンだから、このタイプを狙ってみよう」という越境にも使えるのでしょうか。

 レッドオーシャンを避けるのは戦略の一つですが、戦略とは目的達成のための資源利用の指針であり、環境には依存しません。つまり「競合の動きが変わったから」と言って戦略を変えるのは御法度と言えます。では環境要因を無視して良いかというと否で、「競合の動きが自身の目的や資源にどう影響を与えるか」という視点で周囲を理解することが大切です。「自分が何を達成したいか(目的)」と「自分が何を持っているか(資源)」は、恐らく好みに表れてきます。好きなもののほうがやっていて楽しいですし、経験値も稼ぎやすいはずです。

──好きなものと言えば、本書の最後に掲載された「ガンダム」に対する音部さんの熱量を思い出します。

 「ガンダムのように二次創作を含めた多様性を許容し、ユーザーの自分ごと化を促すことが強いブランドづくりの要諦である」と書きました。本を書くまでガンダムをマーケティングの観点で考察したことはありませんでしたが、書くことで気付きを得たトピックの一つです。

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バイアスを外したければ別のバイアスを入れるべし

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/06/21 09:30 https://markezine.jp/article/detail/42536

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