Z世代と団塊ジュニア世代、各世代の特徴にも対応
ここまで紹介してきた消費者セグメント分析と前半で解説した消費の好循環構造を重ね合わせると、消費の好循環に入りやすいセグメントと、なかなか入りにくいセグメントの2つに大別される様が垣間見えてきました。前者の代表は20代女性で、後者は40代男性というのは前述の通りですが、世代的には前者はZ世代に、後者は就職氷河期を経験した団塊ジュニア世代に、それぞれ対応しています。
紙幅が限られるため詳述は避けますが、サステナブル意識やウェルビーイング意識が強い20代女性は消費をすることで良い気分になる傾向が強く、一方で就職活動で苦労し、バブル経済の恩恵も受けなかった40代男性は、消費することにやや消極的な内面を持ち合わせているのかもしれません。このように観測されたデータから分析結果と各世代が固有に持つ特徴を掛け合わせることで、より消費者セグメントを立体的に見ることも可能になります。
性年代別に見る、消費の好循環を起こし得るキーファクター
最後に、これから消費の好循環に入る兆し、いわば消費の好循環ファクターを見ていきたいと思います。下の図表は、一年前と比べて増えたものを聴取したものです。

男性20~30代では、今後給与が上がる期待が最も高いセグメントです。コロナ禍明けで経済活動が活性化し企業収益が改善するかもしれないという予測と、昨今の物価高を反映した実質賃金上昇への期待の2つが入り交じっていると考えられます。男性20~30代は可処分所得が増えることが消費の好循環ファクターの一つになっていきそうです。
女性20代では、自己投資と幸福度が増していることがわかります。元々消費の好循環に入りやすいセグメントですから、自分に投資して自分をバージョンアップさせることで幸福感も増し、同時にワクワクも感じるという有望な消費者であることがわかります。自己投資、幸福度、ワクワクといった要素もこのセグメントにとっては消費の好循環ファクターとなり得るでしょう。
また、女性40代では、一人で過ごす時間を大切に思う気持ちが増えていきそうです。2022年にDDDが開発した消費者インサイト「居独(日常にひとりの時間や空間を作って、好きなことに没頭するなど、自分と向き合うことでリセットとリラックスを求める“デザイアブルライフ”)」という気持ちの表れではないかと想像されます。大人数でつるむのもいいが、実は一人でいることも心地よいという意識を持っており、新しいソロ消費とも言うべき市場を牽引していく存在になるかもしれません。このセグメントでは、一人で行う消費で良い気分になると、より消費の好循環に入りやすくなるというメカニズムが働くと言えるでしょう。
このように、消費が社会や経済に良い影響をもたらしてくれる視点に立ちながら、私たちDDDは今後も消費の好循環に着目して、研究開発を続けていきます。
調査概要
タイトル:第5回 電通「心が動く消費調査」
調査目的:変化し続ける社会環境により可視化されにくくなりつつある消費者意識を消費者の欲望視点から分析し、今後の日本の消費社会を読み解く
対象エリア:日本全国
対象者条件:20~74歳
サンプル数:3,000サンプル(20〜70代の6区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け。70代は70~74歳まで)
調査手法:インターネット調査
調査期間:パイロット調査 2021年5月18~21日
第1回調査 2021年9月3~6日
第2回調査 2021年12月16~19日
第3回調査 2022年5月12~15日
第4回調査 2022年11月2~7日
第5回調査 2023年5月10~15日
調査機関:株式会社電通マクロミルインサイト